31番目のお妃様第31位王妃殿下
作者:桃巴
31番目の妃*27第31位妃子*27
原文連結漫畫生肉 フェリアが邸に戻って最初に確認したのは、薬草畑である。あの稀少な種を蒔いた畑だ。まだ芽吹きはないが、荒らされてはいないようでホッと安心する。広がる畑は、侵入者との追いかけっこで、所々足跡で踏み荒らされている。 菲莉亞回到了宅院最初做確認的是藥草田。是播下了那個稀少種子的農田。雖還沒發芽但也沒有被糟蹋而放下心來。寬廣的農田因與侵入者的追逐而到處都被腳印所踩爛。
「根菜で良かったわ」「是塊根蔬菜真是太好了」
収穫までが短い野菜を育てていた甲斐があり、すでに踏み荒らされた畑は収穫時期であるため、さほど問題はなかった。ただ、一部葉もの野菜の畑は大損害だ。 培育到收穫為止都很短的蔬菜是有價值的,因為已經被踩爛的農田是收穫期,並沒多大問題。只是一部分葉菜類的農田損害很大。
「フェリア、もう一度服を作ってくれぬか?」「菲莉亞,不再做一次衣服嗎?」
マクロンはフェリアを仮設の邸に促す。入り口の扉が開くと、こじんまりとしたサロンがフェリアを迎えた。テーブルの上に生地がたくさん並んでいる。 馬庫隆催促菲莉亞進臨時設置的宅院裡。入口的門打開後,小巧玲瓏的沙龍迎接著菲莉亞。桌子上陳列著許多布料。
「お忍び用の服ですよね」「是微服私訪用的衣服呢」
フェリアは『ふふふ』と笑った。 菲莉亞『呵呵呵』地笑了。
「失礼します!! 王様、お戻りを」「失禮了!! 國王陛下,請回來」
そこにビンズが現れた。ビンズはぎろりとマクロンを睨んでいる。 賓茲出現在那裡。賓茲狠狠地瞪著馬庫隆。
「お妃様選びの規則はお守りください。31日以外は邸で会うことはなりません。他の令嬢にそこをつかれます。ただちにお戻りを」「請遵守選王妃殿下的規則。除了31號以外都不能在宅院裡見面。會被其他千金抓住那點。請立即回來」
しきたりがフェリアとマクロンを割く。 慣例分開了菲莉亞與馬庫隆。
「マクロン様、また文を出します。お会いできる二カ月半後を楽しみにしております」「馬庫隆大人,我還會再寫信。我會期待著能見面的兩個半月後」
フェリアは少し眉を下げて笑んだ。無理に笑んでいるわけではないが、ほんの少し切なさがこもっている。そんな笑みである。 菲莉亞微微低下眉毛笑著。雖不是強顏歡笑,但稍微充滿著苦悶。是那樣的笑容。
「すぐに戻るゆえ、しばし、後しばし、時をくれビンズ」 朕會馬上回來,暫時、再暫時一會,給朕時間賓茲」
フェリアと同じような顔のマクロンに、ビンズは黙礼し邸を出た。切なさを殺さずの笑みは、二人の信頼を表しているようで、ビンズはこの二人の幸せを願わずにはいられない。感情に無理をさせないが、わがままや横暴にならず、ただ信頼し、互いに会えぬ寂しささえも二人の糧とするのだろう。 賓茲對與菲莉亞同樣表情的馬庫隆默默敬禮離開宅院。扼殺不了苦悶的笑容就像是在表達兩人的信賴,賓茲不得不祈願兩人的幸福。雖然在感情上無法勉強,但不會變得任性或蠻橫,只是信賴,連見不到彼此的寂寞都會化為兩人的糧食吧。
「フェリア、キュリーから学べ。我のみならず、他の令嬢らにフェリア自身を認めさせろ。その力をつけてほしい。それでこそ、我の妃として立てるのだ。「菲莉亞,透過居禮學習。不只是朕,要連其他千金都承認菲莉亞自己。朕希望妳掌握那份力量。這樣才能成為朕的妃子。
愛を囁くだけの妃はいらん。朕不需要只會低語愛的妃子。
愛を求めるだけの妃もいらん。朕不需要只會要求愛的妃子。
権力しか持たぬ妃もいらん。朕不需要只擁有權力的妃子。
欲しいのはフェリアだ。守られるだけの存在にはなってくれぬなよ。我が守れるのは先にあったような外的な危険から身を守ってやるのみ。後宮の洗礼などからは守ってやらぬぞ。その程度のこと、ミミズ箱同様実力であしらえ。さらなる力を、キュリーから学び身に付けろ」朕想要的是菲莉亞。不要成為只是被保護的存在唷。會要朕保護的唯有像之前發生過來自外部的危險才會去保護妳。來自後宮的洗禮之類才不會去保護的喔。那種程度的事就用蚯蚓箱同樣的實力去應付。要透過居禮學習掌握」
「はい、マクロン様。必ずあなたの横に立てるような妃になってみせますわ。天空の孤島カロディア領の田舎者ですので、ひとりで生き抜く力は持っておりますの。ひとりで戦う力を身に付けるのは苦ではありませんわ。「是的,馬庫隆大人。我必定會成為站在您身邊的妃子給您看。因為是天空孤島卡羅迪亞領的鄉下人,擁有一個人活下來的力量。要掌握一個人戰鬥的力量並不辛苦喔。
愛は互いの心で繋がっているモノ。愛是以彼此的心連繫的東西。
実体がないのに、惹きつけられるモノ。沒有實體卻會被吸引的東西。
この胸のモノはマクロン様にいただきました。這胸中之物是馬庫隆大人所給的。
私の心を満たすのはマクロン様だけです。私を弱い者にはしないでくださいませね。女官長が言っておりましたの、女の園でのことは口外しないのが掟であり、美徳であると。今ならわかりますわ。洗礼など、あしらってこそこの後宮の主になれるのだと。学びますわ、マクロン様の横に立てるように」能填滿我心的只有馬庫隆大人。請不要把我當成弱者了呢。女官長曾說過的,在女子園的事不對外說才是規矩、美德。我現在明白了喔。洗禮之類的要能應付才能成為這座後宮的主人。我會學習的,為了站在馬庫隆大人的身旁」
「抱きしめても良いか?」「朕可以緊抱妳嗎?」
「温もりを私に刻んでくださいませ」「請把這溫暖刻在我身上」
マクロンは強くフェリアを抱きしめた。フェリアもマクロンの身に寸分の隙間もなきようにすがる。想いは溢れ、形ないモノであるのにそこに確かに存在した。 馬庫隆用力緊抱菲莉亞。菲莉亞也不留與馬庫隆身體絲毫的縫隙。思緒滿溢,無形的東西才確實地存在於那裡。
その抱き合う二人の影を、外のビンズやケイト、警護騎士らは、胸が詰まる思いで見つめる。二人の幸せを強く願った。 那兩人互相抱住的身影,外頭的賓茲及凱特、警護騎士們都以填滿胸中的思緒看著。強烈的祈願兩人的幸福。
***
その頃、女官長はある邸の前で呼吸を整えていた。意を決して邸の扉を叩く。 那個時候女官長在某宅院前調整呼吸。下定決心敲了宅院的門。
コンコン 叩叩
扉が開き侍女が女官長を確認する。 打開門的侍女確認是女官長。
「何かご用ですか?」「有什麼事嗎?」
侍女の問いに、女官長は深々と頭を下げて願い出た。 女官長對侍女的提問深深低下頭提出希望。
「キュリー様のお耳に入れたき事がございます」「有事要跟居禮大人稟報」
と。 之後。
「……以上にございます」「……如上所述」
女官長がさらなる力の元につこうと選んだのはキュリーである。サブリナのことを洗いざらいぶちまけていた。もちろん、フェリアへの恨み節も、王への不忠も。 女官長選為更該跟隨的力量身邊是居禮。將薩布莉娜的事和盤托出。當然,對菲莉亞的憎恨枝節與對國王的不忠也是。
キュリーは扇子を開き、口元にあてがう。力強い目だけを女官長に向けていた。 居禮打開扇子,緊貼嘴角。只將強力的目光朝向女官長。
その強さに女官長は惹かれたのだ。サブリナよりも権力を持ち、王と渡り合える妃としてキュリーを選んだのである。夜会での、他の妃に釘をさしつつのフェリアを蔑む行いや、隣国王子と対等に話す様、フェリアに次ぐ長き時間の王との接見、それら全てが女官長のお眼鏡にかなっていた。次なる主はキュリーしかいないと。 女官長被那份強大所吸引。選擇了擁有比薩布莉娜還大的權力,作為與國王交手妃子的居禮。在晚宴上,一面叮囑其他妃子一面藐視菲莉亞的行為,以及與鄰國王子對等地談話,與國王接見的時間長度僅次於菲莉亞,那些全都被女官長所認同。下個主人只有居禮。
キュリーは、その女官長の思考を読み取っている。口元は笑っていた。女官長には見えるまい。 居禮看出那位女官長的思考。嘴角笑了。女官長看不見。
「私の駒になりたいと言うことかしら?」「是在說想成為我的棋子嗎?」
キュリーは無感情に声を紡いだ。 居禮無感情地紡織聲音。
「はい、いかようにも」「是的,無論如何」
女官長はいかにもの歪んだ笑みを、隠すことなく晒しだしていた。 女官長曝曬著毫不隱藏確實扭曲的笑容。
キュリーは扇子をパチンと閉じ、侍女らに視線を送る。瞬きで会話を行った。キュリーは女官長を残し、別室に向かう。女官長は焦った顔でそれを目で追った。その間に侍女のひとりが入り込む。 居禮啪地闔起扇子,向侍女們送出視線。用眨眼進行對話。居禮留下女官長,朝向別的房間。女官長以焦躁的表情用眼睛追逐那個。一位侍女進入了那之間。
「キュリー様が欲しいのは最高の誉れです。女官長のご尽力に期待します。先ずは、サブリナ様と主だった方々をお茶会に招待いたします。お茶会の開催日は二十日ですわ。招待状を女官長つてで送ってくださいませ」「居禮大人想要的是最高的榮譽。期待女官長盡心盡力。首先,在茶會上招待連同薩布莉娜與主人的各位人士。茶會召開日是二十號。請女官長轉送邀請函」
侍女が優しく女官長に語りかける。一緒に頑張りましょうとの笑み付きで。女官長は息吹を取り戻したかのように、血色が良くなった。あの詰問府からずっと青白かった顔色が。 侍女溫柔的對女官長說話。帶著我們一起加油吧的笑容。女官長好像取回了氣息,氣色變好了。從那質問府以來一直是鐵青的臉色。
女官長が思う最高の誉れとは、王妃のことだろう。しかし、キュリーの思う最高の誉れとは、ダナン国の次期王妃の教育係ということ。秘密裏にその役割を全うすることだ。侍女の言いようも、女官長が勘違いするようなもの言いである。これこそ、一国の姫の侍女であり、サブリナの侍女との違いでもある。 女官長所認為的最高榮譽是皇后。可是,居禮認為的最高榮譽是達南國下期皇后的教育者。秘密地盡到那份職責。侍女的措辭,是女官長會誤解的說法。這才是一國佳麗的侍女,也是與薩布莉娜侍的不同。
女官長を見送る侍女らは最後まで、優しい笑みを崩しはしなかった。 送行女官長的侍女們,直到最後都沒有讓溫柔的笑容亂掉。
「キュリー様、女官長は下がりました」「居禮大人,女官長退下了」
「王様に報告するわ。あの女官長にして、この王城の不出来な侍女たちというわけね。妃のいなかった今までなら良くても、これでは後宮が荒れてしまうわ。王様は、女の園に関心が無さすぎだわ」「跟國王陛下報告吧。就是有那個女官長,這座王城才會有不稱職的侍女們呢。沒有了妃子就算至今為止都還好,這樣下去後宮也是會混亂的喔。國王陛下對女人園太不關心了喔」
王の無関心が女官長や侍女らを放任させてきたのだ。ダナンの身分制度の砦たる後宮。身分とは身の役目を分けることにより、滞りなく社会や生活が回っていくためにあるものだ。 國王的不關心就是讓女官長及侍女們放任起來。身為達南身份制度磐石的後宮。所謂的身份就是為了經由區分自身的職務,運轉著不會停滯的社會及生活。
女官長や侍女らの役目は妃選びに首を突っ込むことではない。妃選び中も王城での仕事をまっとうしながら、妃の世話も行うことである。常の仕事より役目が増えたとて、滞ることなくお世話と仕事が両立できてこそ、その技量に誉れが与えられる。評価されるのだ。 女官長及侍女們的職務不是攙和進選妃裡。是選妃中也要一邊盡到在王城的工作,一邊進行妃子的照料。即便職務比通常的工作增加了,照料與工作也要能毫不停滯的兩立,那份能耐才會被給予稱讚。被評價。
「何を勘違いしているのかしらね。妃選びは王の役目。王の役目に口を出すなど、それこそ身分にふさわしくないわ。そんな勘違い者がフェリア様の身分を蔑むなんて、おこがましいわね」「是搞錯了什麼呢。選妃是國王的職務。過問國王的職務,那才是跟身份不相稱喔。那種搞錯的人居然藐視菲莉亞大人的身分,真不自量力呢」
***
「サブリナ様、あのような田舎者が王様の妃になるなんて、あってはならないことですわ」「薩布莉娜大人,那樣的鄉下人會成為國王陛下的妃子,是不應當存在的喔」
ミミリーの配下であった令嬢らがサブリナ邸に集結していた。 身為米蜜莉部下的千金們集結到了薩布莉娜宅。
「王様はお疲れで、毛並みの違う者が良く見えているのですわ。そのうち飽きて見向きもしなくなりましょう」「國王陛下是因疲勞,才會屢次看著與眾不同的人喔。不久厭倦了就不理不睬了吧」
「私たちはサブリナ様を応援いたします。皆でそう決めましたの。後宮を出るにしても、あの田舎者の陥落を見ずには出られませんから」「我們會聲援薩布莉娜大人。大家都如此決定了。就算離開後宮,不看到那個鄉下人覆沒是不會離開的」
令嬢らは自国の妃候補筆頭のサブリナにつくようだ。皆、口々にフェリアの悪口を発した。 千金們似乎要跟隨本國妃子候補首席的薩布莉娜。大家異口同聲說出菲莉亞的壞話。
サブリナはその清楚な顔を、少し悲しげに眉を下げて令嬢らに微笑みを向ける。健気に見える表情だ。 薩布莉娜那清秀的臉上微微悲傷地低垂眉毛,朝著千金們微笑。是看起來堅強的表情。
「私、……王様のためにできることは何でもしたいの。王様のお力になりたくて。あの方を悪くは言わないで。きっと後宮の美徳など知らない方よ。私たちが王様を思って、あの方に何か言えば言うほど、いじめているように見えるのですわ」「我、……為了國王陛下能做的事什麼都想做。我想成為國王陛下的力量。不會說那位不好。一定是不知道後宮美德的人唷。我們為國王陛下著想,越是對那位說什麼,看起來就越是像在欺負喔」
サブリナは悲しげに、それはもう悲しげに発する。その健気さに令嬢らはサブリナ様こそ妃にふさわしい方だと口にした。 薩布莉娜悲傷地,那已經悲傷地表述了。千金們對那份堅強說出了薩布莉娜大人才是配得上妃子的人。
「サブリナ様、そのお心の美しさのままに。後は私たちが……ですから、どうかお心を穏やかに」「薩布莉娜大人,還請保持那心靈的美麗。之後我們會……所以,還請平復心情」
私たちが……何をすると言うのか? サブリナとてわかっているが、そこは知らぬふりをして、『皆さん、励ましてくれてありがとう』と令嬢らを優しく見渡した。 我們會……是要說做些什麼嗎? 薩布莉娜雖然明白,但這裡就裝作不知道,溫柔環視千金們說『各位,謝謝妳們的鼓勵』」
令嬢らは頷き合う。次なる洗礼がフェリアを待ち受けていた。 千金們互相點頭。下個洗禮正在等候著菲莉亞。