本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第二部神殿の巫女見習い 倒れた理由第二部神殿的實習巫女 倒下的理由
原文連結 カツカツと大股で足早にベンノが歩くと、お姫様抱っこをされて仰け反った状態のわたしの頭がガックンガックンと揺れる。脳味噌が掻き回される感じがするので、もうちょっと揺れないように歩いて欲しい。 班諾喀喀地用大步快步地走著,被公主抱而向後仰的我的頭震動地搖晃著。由於感覺到腦漿被來回攪動著,為了不再稍微搖晃而想要走路。
そんなことを考えていると、後ろの方から慌てた様子で駆けてくる足音が追いかけてきた。 在考慮著那種事情時,從後方以驚慌的樣子跑過來的腳步聲追了上來。
「ベンノ様、お待ちください!」「班諾大人,請等一下!」
フランの声だ。ガクンと仰け反った視界にフランの胸元から顎が映った。フランがベンノの半歩後ろについて歩きながらもう一度呼びかける。 是弗蘭的聲音。猛然地在向後仰的視野裡映照著弗蘭的胸口到下顎。弗蘭一邊跟在班諾的半步後走著一邊呼喚著。
「ベンノ様」「班諾大人」
「何だ? 見ての通り、俺は急いでいる」「怎樣? 如你所見,我正在趕路」
足を止めようともせずに、ベンノは丁寧さの欠片もない素の状態で言葉を返した。そのぶっきらぼうな態度に一瞬怯んだフランだったが、グッと息を吸い込んで食い下がる。 並沒有讓腳停下來,班諾用沒有一丁點禮貌的原本狀態回應話語。一瞬間畏懼那粗魯態度的弗蘭,使勁地吸進一口氣不肯罷休。
「マイン様を運ばせてください」「請讓我搬運瑪茵大人」
「急いでいる。却下だ」「正在趕路。駁回」
「お客様に運ばせるわけにはまいりません。私がマイン様の側仕えです」「沒有讓客人來搬運的理由。我是瑪茵大人的近侍」
ベンノ相手に引こうとしないフランの言葉に、わたしは内心ハラハラしていたが、ベンノは突然足を止めた。 對不打算拉住班諾對象的弗蘭的話語,我內心提心吊膽著,但班諾突然停下了腳。
「力が入っていないヤツは小さくても重いぞ。絶対に落とすな」「沒注入力量的傢伙就算小也很重喔。絕對別掉了」
「存じております」「我明白了」
その場にゆっくりと膝をついたベンノがわたしをフランに渡す。 那當下班諾慢慢地彎下膝蓋將我交給了弗蘭。
フランはわたしの頭の位置や腕の位置を微調整して、立ち上がった。頭の位置がフランの肩にもたれかかるようになったので、頭がガクンガクンと揺れることはなくなった。 弗蘭略為調整我的頭的位置與手臂的位置,站了起來。由於頭的位置變成依靠在弗蘭的肩上,頭變得不再猛然地搖晃了。
「フランは抱き上げるのが上手だね」「弗蘭抱起來很拿手呢」
わたしが感心してそう言うと、フランは少しだけ怒ったように声を尖らせる。 我欽佩那樣說後,弗蘭像是有點生氣般抬高了嗓門。
「マイン様、無理して喋る必要はございません」「瑪茵大人,沒有必要勉強說話」
「身体に力は入らないけど、頭は冷えてる感じだから、別に無理はしてないよ」「雖然身體無法注入力量,但因為腦袋是冰涼的感覺,別特別勉強唷」
「……お言葉遣いに気が回せていらっしゃらないようなので」「……是我對您的措辭顧慮不周」
フランの言葉に心配の色がにじんでいて、わたしは小さく笑う。フランの心遣いがわかって、ちょっと気恥ずかしいけれど、ちょっと嬉しい。 弗蘭的話語裡滲透著擔心的色澤,我小小的笑了。能明白弗蘭的關心,雖然有點難為情,但又有點高興。
「あのね、フラン。デリアやギルがいると、二人で話せる機会が次にいつあるかわからないから、言っておきたいの。いい?」「那個啊,弗蘭。蝶莉亞與基魯在的話,因為不知道何時會有依次跟兩人說話的機會,想要先說。可以嗎?」
廊下には他の神官がいるかもしれないので、フランの耳元で内緒話をするように囁きかけると、視線だけは真っ直ぐ前に向いたまま、フランは小さく頷いた。 由於在走廊說不定會有其他神官,就像在弗蘭的耳邊交頭接耳般低語時,只有視線仍舊筆直地朝向前方,弗蘭小小點了頭。
「お伺いします」「願聞其詳」
「わたし、まだ全然貴族のことわからなくて、フランをすごく困らせると思うけど、なるべく早く覚えるように努力するから、協力して欲しい。神官長の役に立てるように頑張るから、目的は同じってことで協力し合えないかな?」「我,還完全不了解貴族的事情,雖然認為讓弗蘭非常為難,但因為會為了盡可能早點記住而努力,希望能協助。因為為了對神官長有用而努力,目的是一樣的而是否能互相協助呢?」
グッとフランの腕に力が籠り、フランの喉仏が上下して、息を呑むのが見えた。 使勁地在弗蘭的手臂上充滿力量,弗蘭的喉結上下起伏,看到吞了一口氣。
「それが私の仕事ですから。……私の方こそ、神官長のお心を推し量れず、マイン様に不満をぶつけるような結果になったこと、お許し頂けたらと……」「因為那是我的工作。……我這邊才是,沒能推測到神官長的心思,造成了對瑪茵大人投以不滿般的結果,還請原諒……」
「え? 推し量れず、って何? 神官長はちゃんと説明しなかったの?」「咦? 沒能推測,是說什麼? 神官長沒有好好說明嗎?」
ポカーンとしてしまう。説明も無しに、わたしに付けられたら、それは不満だろう。神官長付きの側仕えから一介の青色巫女見習い――それも、貴族でもない平民の小娘――の側仕えに変えられるというのは、左遷だとしか思えなくても仕方ない。 愣了一下。對沒有說明,被配給了我,那會不滿吧。所謂從配給神官長的近侍被變成一介藍色實習巫女――而且是,不是貴族的平民小姑娘――的近侍,就算只能認為是降職也是沒有辦法的。
「周りに一体どれだけ敵に通じている者がいるかわかりませんから、言質を取られぬよう、神官長は普段から多くを語られません。人払いをしたとはいえ、今日のお言葉の多さには驚きました」「因為不知道在周遭到底有著多少通敵者,為了不被獲取諾言,神官長從平時就不多說話。就算說把人驅離,對今天的話語很多很吃驚」
「いやいや、部下に意図が通じてないのは、問題だよ。フランは意図がわからないまま、わたしに付けられて辛かったんでしょ?」「不不,沒有對部下通達意圖,是個問題唷。弗蘭依然不明白意圖,就被配給了我很痛苦對吧?」
神官長の立場が一体どういうものなのか、わたしには全くわからないが、こんな忠義者に悲しい思いをさせていたら、味方は減るばかりに違いない。 神官長的立場到底是怎麼回事呢,我完全不明白,但讓這樣的忠義者有了悲傷的情感的話,同伴肯定只會減少。
「そうですね。神官長には必要ないと、デリアやギルと同程度の者だと、言われた心地がいたしました」「說得也是呢。我對神官長來說沒必要,是跟蝶莉亞或基魯同程度的人,有著被告知的心情」
「それはないよ。神官長はね、フランをわたしに付けておきながら、フランを手放したつもりなんて欠片もない人なんだよ」「不是那樣唷。神官長呢,儘管把弗蘭配給了我,但卻是絲毫沒有打算放手弗蘭的人唷」
神官長への忠誠心を更に強くし、ついでに、わたしにも優しくしてくれるといいなぁ、という下心満載のフォローのために、わたしはこっそりと囁いた。 更加強化對神官長的忠誠心,順便說下,為了所謂對我也很溫柔就好了呢,的用心滿載的追隨,我悄悄地低語著。
「そうでございましょうか?」「是那樣的嗎?」
疑問の形をとっているけれど、フランの声音には明らかに否定の色が強い。 雖然採用的是疑問句,但弗蘭的聲音明顯地否定的色彩很強烈。
「わたしに貸してるだけの気分だから、ベンノさんって客人がいる前で、一応新しい主であるはずのわたしに何の断りもなく、フランに命令しちゃえるんだよ。秋までに体調管理できるようになれって、言ってたけど、普通の貴族に置き換えたら、かなり失礼じゃない?」「因為只是借給我的氣氛,在有著稱為班諾先生的客人之前,姑且對應該身為新主人的我什麼預告都沒有,是給弗蘭的命令唷。說要到秋季為止變得能做到身體狀況管理,雖然有說過,但調換為普通貴族的話,相當失禮不是嗎?」
「……マイン様のおっしゃるとおりですね」「……就如同瑪茵大人所說呢」
フランがくすりと小さな笑いを漏らした時、玄関の扉が開いた。 弗蘭噗哧地漏出小小笑聲的時候,玄關的門打開了。
ちょうど馬車が前に入ってくるところで、タイミングを合わせていたのだろう御者が、わたし達のあまりに早い登場に目を白黒させているのが見えた。 在馬車正好進入前面的地方,看到該是配合著時機的車夫,對我們相當早就登場而翻著白眼。
「フラン、マインを寄こせ」「弗蘭,把瑪茵給我」
先に馬車へと乗ったベンノが腕を広げる。フランが一瞬の躊躇いを見せた後、ベンノにわたしを渡しながら、すがるような声を出した。 先往馬車搭乘的班諾張開手臂。弗蘭表現出一瞬間的猶豫後,一邊將我交給了班諾,一邊發出依靠般的聲音。
「わたしもお伴することはできませんか?」「我也無法陪伴嗎?」
「駄目だ。その服で神殿から出ると、つまらん問題が起こる」「不行。以那身衣服從神殿出來後,會發生不妙的問題」
わたしを受け取ったベンノからピシャリと却下の言葉が吐かれた。服を理由に断られると思っていなかったのだろう、フランは戸惑ったように自分の服を見下ろす。 從接下了我的班諾那吐露了嚴厲的駁回話語。是沒想過會以衣服為理由拒絕的吧,弗蘭彷彿不知所措般俯視著自己的衣服。
「しかし、私達はこれ以外……」「可是,我們除了這以外……」
「中古で良ければ、次回までに服を準備してやる。今日は諦めろ」「中古也可以的話,下次之前會準備好衣服。今天就放棄吧」
「恐れ入ります」「著實抱歉」
ベンノに礼を述べた後、馬車の前でフランが両手を交差させて、少しかがんだ。 對班諾致謝之後,弗蘭在馬車之前讓雙手交叉,稍微彎下腰。
「マイン様、ご無事のお帰りを心よりお待ちしております」「瑪茵大人,衷心等待著平安歸來」
出かける主に向けられる挨拶だったが、予想外の言葉に狼狽した。どう答えて良いかわからない。 是面向外出的主人的問候吧,對出乎預料的話語很狼狽。不知道該怎麼回答才好。
わたしはフランの主は神官長だと思っていたし、フランにとって良い主ではない。待たれるような存在ではなかったはずだ。 我認為弗蘭的主人是神官長,對弗蘭來說不是很好的主人。應該不是被等待般的存在。
言葉を返すことができないわたしにベンノが耳元で低く囁く。 班諾對做不到回覆話語的我在耳邊低聲私語著。
「留守を任せる。そう答えてやればいい」「拜託顧家。那樣回答就好」
留守って言われても、神殿はわたしの家じゃないし、部屋もないし、まだ居場所と言えるほど思い入れのある場所でもない。 就算被說要顧家,神殿並非我的家,也不是房間,並且也不是能說是住所般值得深思的地方。
そう反論するのは簡単なのに、フランに待っていると言われてしまえば、わたしはフランの主として、ここに戻って来なければならない気がして、むず痒いような気分になった。 明明那樣反駁是很簡單,對弗蘭說等待著的話,我作為弗蘭的主人,感覺就必須要回到這裡來,變成搔癢難耐般的心情了。
軽く息を吸って、精一杯主らしく答える。 輕輕吸了一口氣,竭盡全力像主人般回答。
「フラン、留守を任せます」「弗蘭,拜託顧家了」
馬車の中ではベンノの膝に頭を置いた状態で、座席にゴロンと横にされた。金のブローチを外したベンノのマントで包み込まれると、冷たくなっている身体が少し温まった気がする。 在馬車之中是以將頭放在班諾的膝蓋上的狀態,被側身橫在座位上。被用拿掉金色胸針的班諾的披風包裹進去後,感覺變冷了的身體稍微暖和了。
ホッと安堵の息を吐くと同時に、自分の状況に気がついて、思わず叫び出したくなった。 在放心地吐了一口安心的氣的同時,注意到自己的狀況,不假思索變得想叫了出來。
何これ!? 膝枕ってやつじゃないですか! 這是什麼!? 這不就是稱作膝枕的傢伙嗎!
秘密の手紙交換に加えて、身内以外の異性との膝枕初体験までベンノとこなしてしまうことになるとは、想像もしていなかった。恋心の伴わないイベントはノーカウントでいいだろうか。 加上秘密的信件交換,就連與自家人以外的異性的膝枕初體驗都變成是跟班諾完成的這事,想都沒想過。沒有伴隨戀慕心的活動不列入計算也是可以的吧。
ベンノの膝に全体重を預けた状態を自力で回避できるわけがないので、店に着くまで、この照れくさくて恥ずかしい体勢でいるしかない。 因為並不是能以自力避免將全身體重計放在班諾的膝上的狀態,直到到達店裡,就只能用這個難為情又羞恥的姿勢待著。
逃げ出したい気分を少しでも霧散するため、わたしは少しばかり早口になりながらベンノに質問する。 為了讓想逃走的心情稍微煙消雲散,我一邊微微變得快嘴一邊提問班諾。
「ベ、ベンノさん、神官って、普段着は持ってないんですか?」「班、班諾先生,是說神官,沒擁有便服嗎?」
「必要ないからな。持っていなくても不思議はない」「因為沒必要呢。就算沒擁有也不會不可思議」
ベンノの説明によると神官が神殿から出て、下町の方に現れるのは、儀式の時だけらしい。青色神官ほどは目立たないが、基本的に神殿から出ることがない灰色神官が街の中をフラフラすると悪目立ちする。それも、わたしにつき従うように灰色神官が動けば、嫌でも注目されるに違いないと言う。 根據班諾的說明神官從神殿出來,出現在下城區的地方,似乎只有儀式的時候。藍色神官的程度不會引人注目,基本上不會從神殿出來的灰色神官遊蕩在城市裡面很醒目。而且,就是說像是跟從我的灰色神官行動的話,即便討厭也肯定會被關注。
「あの、じゃあ、えーと……」「那個,那麼,呃……」
「マイン、もう黙ってろ」「瑪茵,夠了別說了」
静かに宥めるような口調でそう言ったベンノがゆるりと額を撫でた後、冷たい手に熱を与えるように軽くわたしの手を握る。それは、まるで大事な恋人が倒れたような仕草だった。 靜靜地以勸慰般的口氣那樣說的班諾緩緩地撫摸額頭之後,像是要將熱給予冰冷的手般輕輕地握著我的手。那個,簡直是重要的戀人倒下般的動作。
前世においてさえ、こういう経験値は積んでないわたしとしては、気恥しいを通り越して困惑した。どう反応すればいいのか、わからない。 作為就連在前世,都沒累積過這種經驗值的我,超越羞澀困惑了起來。要怎麼反應才好呢,我不知道。
口調がぶっきらぼうなくせに、ベンノさんは無意識でこういうことをやっちゃうから、周囲から妙な誤解を受けるんだよ! 因為語調粗魯的習慣,班諾先生無意識地做著這種事情,受到了來自周圍微妙的誤解了唷!
わたしの思考を読んだように、正面に座るマルクが悲しげに目を伏せる。 像是讀取了我的思考,在正面坐著的馬爾克悲傷地低下目光。
「旦那様、マインはリーゼ様ではありません。大丈夫ですよ」「老爺,瑪茵不是莉潔大人。不要緊的喔」
「……わかっている。わかっているから、大丈夫だと、簡単に言うな」「……我知道。因為我知道,不要緊的話,別輕易說出來啊」
ベンノは窓の外を眺めながらそう言ったけれど、わたしの手を離そうとしない。こちらを見ようとしないベンノの表情は全く見えない。 班諾雖然是一邊眺望窗外一邊那樣說,但沒打算要放開我的手。沒有看著這邊的班諾的表情完全看不見。
けれど、何でもできて、完璧に見えるベンノの触れてはいけない場所に触れてしまった気がした。多分、ベンノを安心させようと「大丈夫だよ」と笑いながら、恋人は逝ったに違いない。 但是,感覺觸碰到了什麼都做得到、看起來很完美的班諾的不能觸及的地方。大概,儘管為了讓般諾安心而笑著說「不要緊喔」,戀人肯定也逝世了。
声をかけることもできず、熱を与えてくれる大きな手を握り返すこともできないまま、馬車はギルベルタ商会に着いた。 依然無法發出聲音、做不到回握給予了熱的大大的首,馬車到達了基魯貝路塔商會。
御者が外の鍵を開けて扉を開くのと、マルクが馬車を飛び出すのはほぼ同時だった。店の扉を開けて、従業員に指示を出す。慌てているように見えても、素敵執事なマルクは有能なようだ。ベンノのマントに包まれたまま、ベンノに抱きかかえられたわたしが奥の部屋に運び込まれた時には、マルクと従業員によって長椅子が運び込まれていた。 馬夫打開外面的鑰匙開門後,馬爾克跳出馬車幾乎是同時。打開店門,對工作人員做出指示。就算看起來好像很驚慌,帥氣執事般的馬爾克似乎也很有能力。依然被包在班諾的披風裡,被班諾懷抱起來的我被搬進深處的房間的時候,長椅子由馬爾克與工作人員搬了進來。
「ルッツ、奥の部屋へ来なさい」「路茲,請來深處的房間」
店でわたしの帰りを待ちながら、仕事をしていたらしいルッツが、珍しいマルクの大声にバタバタと足音を立てて、駆けよってくるのが聞こえる。 一邊在店裡等待我的歸來,一邊似乎在做著工作的路茲,對馬爾克稀罕的大聲發出啪噠啪噠的腳步聲,聽起來是跑了過來。
奥の部屋へ運び込まれた長椅子に、ベンノが一度マントを剥ぎ取って、わたしを横たえる。だらんと落ちた腕をお腹の上に置かれて、自分の腕が意外に重たいと感じた。上からふわりと布団代わりにマントがかけられる。 在被搬進深處房間的長椅子上,班諾一度脫下披風,將我橫放。軟趴趴地掉落的手臂被放在肚子上,感到自己的手臂意外地沉重。從上方被輕柔地代替棉被的披風蓋上。
「ルッツ、マインが神殿で倒れた」「路茲,瑪茵在神殿倒下了」
長椅子に転がされたわたしの顔をルッツが心配そうに覗きこむ。額や首筋、手を触りながら、不思議そうに首を傾げた。 路茲擔心似地窺探起被滾落長椅子上的我的臉。一邊觸摸額頭或脖子、手,一邊不可思議似地歪起了頭。
「疲れてるみたいで顔色が悪いけど、熱は出てないし、むしろ、手足が冷たいくらいだよな? 力が入らないだけって……今まで見たことがない。なぁ、マイン。今日は一日、何してた?」「雖然好像很疲倦且臉色不好,但沒有發燒,不如說,手腳好像很冰冷呢? 要說只是沒注入力量……至今不曾見過的事情。吶,瑪茵。今天一天,做了什麼?」
ルッツの質問に、わたしは長かった今日一日を思い返した。 對路茲的提問,我回憶著漫長的今天一天。
「えーと、神殿に行って、誓いの儀式をして、お祈りと奉納をして、側仕えを紹介されて、神官長からちょっとした説明を受けて、ルッツが迎えに来るまで図書室で聖典を読んでた。その後はルッツとベンノさんが知ってる通りだよ?」「呃,去了神殿,做了誓約儀式,做了祈禱與奉獻,被介紹了近侍,接受來自神官長稍微的說明,直到路茲來迎接為止都在圖書室裡閱讀聖典。那之後就如同路茲跟班諾先生知道的唷?」
「奉納って何だ?」「奉獻是什麼啊?」
「えーと、神具に魔力を込めること。余分な熱が減って、すっきりするんだよ」「呃,對神具灌注魔力。減少多餘的熱,很舒暢的唷」
きゅるるるるる~……。 咕嚕嚕嚕嚕嚕~……。
説明途中でお腹が鳴った。全員の視線がわたしのお腹に集中する。 在說明途中肚子叫了。全員的視線都集中在我的肚子上。
そういえば、わたし、お昼食べてなかったっけ。今頃思い出したよ。緊張が続いてすっかり忘れてたや。思い出すと急激に空いてくるよね。 這麼說來,我,沒有吃午餐啊。此刻回想起來了唷。緊張持續著完全忘記了呀。回想起來後就急遽地空了起來呢。
「……なんか、お腹空いたみたい」「……總覺得,好像肚子餓了」
わたしがそう言うと、張りつめていた空気が少し緩んだ。マルクが小さな笑みを浮かべて、上の階へと繋がる奥の扉を開ける。 我那樣說後,緊繃的空氣稍微減緩了。馬爾克浮現小小的笑容,打開連接往上面的樓梯的深處的門。
「熱がなくて、お腹が空くくらいなら、体調が急変することもないでしょう。着替えるついでに何か食べられそうな物を持って来ましょう、旦那様」「沒有發燒,如果是肚子餓了之類,身體狀況也不會驟變吧。換件衣服順便帶些能吃的什麼東西過來吧,老爺」
「あぁ」「啊」
二人が奥の扉に姿を消すと、ルッツが長椅子の側に椅子を持って移動してきた。椅子に座って、眉を寄せながら、ルッツは聞き足りない様子で口を開く。 兩人身影消失在深處的門後,路茲帶著椅子移動到長椅子的旁邊過來。坐在椅子上,一邊皺起眉頭,路茲一邊用聽不夠的樣子開口了。
「この時間に腹が空くって、昼は何食べたんだよ?」「在這個時間肚子餓了,中午吃了什麼唷?」
「食べてない」「沒吃」
わたしの答えを聞いたルッツが不思議そうに首を傾げる。 聽到我的答案的路茲不可思議似地歪著頭。
「食べてない? なんで?」「沒吃? 為什麼?」
「本を読む時間がもったいないから。本を読んでる間は二日くらい食べなくても平気だし」「因為會浪費讀書的時間。讀書的期間就算兩天左右沒吃也沒事」
その瞬間、ルッツの目が据わった。翡翠のような目が怒りに冷たく光り、声が尖る。 那個瞬間,路茲的目光如炬。翡翠般的眼神憤怒地冰冷發亮,提高嗓音。
「なぁ、マイン。それって、いつの話だ?」「吶,瑪茵。是說那個,是何時的事?」
「え? いつって……」「咦? 何時是……」
「マインになってから、本がないから作ろうとしたんだよな? 本を読んでいたら二日食べなくても平気だったのはいつの話だ? マインになる前の話じゃないだろうな?」「因為變成了瑪茵,因為沒有書本而打算製作對吧? 讀書的話就算兩天沒吃也沒事是何時的事? 不會是成為瑪茵之前的話吧?」
「あ……」「啊……」
わたしが本当のマインではなく、麗乃の記憶を持っていることを知っているルッツの言葉に、冷や汗が出てきた。 對知道我不是真正的瑪茵、擁有著麗乃的記憶這件事的路茲的話語,冷汗冒了出來。
ルッツの指摘通り、二日食べなくても平気だったのは、麗乃時代の話だ。病弱虚弱なマインになってから、体調不良で食べられないことはあっても、自分から抜いたことはなかった。 如同路茲的指責,就算兩天不吃也沒事,是麗乃時代的事。因為變成了體弱多病虛弱的瑪茵,就算因身體狀況不好而有過沒吃的事情,也不是自己省去的事情。
「それにさ、魔力を使うって、身食いの熱を自分の意思で動かすってことだろ? 身食いに食われそうになった時、体温が急上昇して急下降して辛いって言ってたじゃないか。魔力を使うって同じようなものだろ?」「而且啊,要說使用了魔力,是依自己的意思動用身噬的熱對吧? 變得快要要被身噬吃掉的時候,不是有說過體溫急速上升又急速下降很痛苦嗎。使用魔力是相同的事情吧?」
「一箇所に向かって、一方的に魔力を吸い取られる奉納と、身体中に行き場のない熱がうごめいて暴走する身食いは違うんだよ」「朝向一個地方、被單方面地吸走魔力的奉獻與,在身體裡面無處可去的熱蠕動失控的身噬是不一樣的唷」
「魔力を動かすってところは一緒じゃないか。そんな大変なことをした後で、虚弱な体力ない身体で、昼飯食べずにこんな時間までうろうろしていたら倒れるに決まってるだろ! マインのバカ!」「動用魔力的地方不是一起的嗎。在做了那樣不得了的事情之後,以虛弱般沒有體力的身體,不吃午飯直到這種時間還轉來轉去的話肯定會倒下的吧! 笨蛋瑪茵!」
叫んだ後、ルッツが力の抜けたような遣る瀬無い溜息を吐いた。そして、ルッツがわたしの手を握り、自分の額にコツンと当てる。「夏なのに冷てぇ」と呟いて、泣きそうな目でわたしを見つめた。 大叫之後,路茲脫力般悶悶不樂嘆了一口氣。然後,路茲握著我的手,叩地貼在自己的額頭上。嘟噥著「明明是夏季卻很冰」,用快哭了的眼神凝視著我。
「また死ぬかもしれないんだぞ。勘弁してくれよ。オレがちょっと目を離しただけで、こんなことになるんなら、心臓いくつあっても足りない」「並且說不定會死喔。饒了我吧。我就只是稍微移開目光,就造成這種事情的話,心臟就算有幾個都不夠」
ルッツを慰めたくても、瞬きと口を動かせるくらいで、わたしの手足は動かし方を忘れてしまったように全く動かない。 就算想安慰路茲,也運用著開開合合的嘴巴,我的手腳卻彷彿忘記了移動的方法完全動不了。
「図書室に浮かれて、すっかり忘れてたんだよ。ごめんね、ルッツ」「陶醉於書室裡,忘得一乾二淨了唷。抱歉呢,路茲」
涙がうっすら滲んだ目で、ルッツがわたしの手を握ったまま、激昂する。 用淚水薄薄滲出的眼神,路茲依然握著我的手,激動起來。
「忘れるなよ! 自分の身体だろ!?」「別忘了唷! 是自己的身體吧!?」
「何を騒いでいるんだ? 一応相手は病人だぞ。もうちょっと声を抑えろ」「在吵些什麼? 姑且對方是病人喔。再稍微抑制下聲音」
急いで着替えたらしいベンノは奥の扉から出てくると、こちらに向かって歩いて来ながら、顔をしかめてルッツを注意した。 似乎急忙更換衣服的班諾從深處的門出來後,一邊朝向這裡走過來,一邊愁眉苦臉注意著路茲。
ルッツはベンノのために、椅子から下りて、わたしの手を離す。場所を空けながら、持っていき場のない感情を吐きだした。 路茲為了班諾,從椅子上下來,放開了我的手。一邊空出地方,一邊吐露無處宣洩的感情。
「だって、旦那様。マインが本に夢中になって、昼飯を抜いたせいで倒れたって言うんだ。オレ……」「因為,老爺。瑪茵變得對書本著迷,說了因省去了午飯的緣故而倒下了。我……」
「こんの大馬鹿者!!」「這個大笨蛋!!」
「ひゃんっ!?」「嚇!?」
病人相手に騒ぐなと言った本人に心臓が止まるかと思うほどの雷を落とされた。 被說了別吵病人的本人大發認為心臟會停止般的雷霆。
くわっと目を見開いて、ベンノが怒鳴っても、逃げることも耳を塞ぐこともできず、ビックリ涙の浮かんだ目で仁王立ちのベンノを見ているしかない。 猛然地睜大了眼睛,就算班諾怒吼,不論是逃跑還是塞住耳朵都半不到,只能用嚇到浮出眼淚的眼睛看著仁王立的班諾。
「身食いの成長が遅いのは、魔力に栄養を取られるせいだと言われている。それなのに、魔力を使って、飯を抜くとは何事だ!?」「身噬的成長很緩慢,被說了是營養被魔力拿走的緣故。儘管如此,使用了魔力,省去了飯是怎麼回事!?」
「そ、そんなこと知らなかったし……」「那、那種事情不知道……」
「自分の身体の事だろう! ちょっと気にかけて情報を集めろ、阿呆!」「是自己的身體的事情吧! 稍微顧慮點收集情報吧,阿呆!」
「ふぁいっ!」「是!」
言っていることが正しいのはわかるけれど、身食いの情報なんて集め方がわからない。余計な事を口にすれば、ベンノの怒りに油を注ぐ結果になりそうで、口を噤んだ。 雖然明白所說的事情是正確的,但卻不知道身噬的情報之類的收集方法。將多餘的事情說出口的話,似乎會變成在班諾的怒火上加油的結果,而噤口不談。
「マインが不注意なのは今に始まったことではありませんが、自分の体調をもう少し気にかけてくださいね。旦那様も起き上がれない病人相手に怒鳴るのは、そろそろお止めください」「瑪茵疏忽大意並不是現在才開始的事情,但請多少顧慮點自己的身體狀況呢。老爺也是對爬不起來的病人怒吼,差不多請停止了」
優しいけど、甘やかすことはないマルクがカチャリと食器をテーブルに置き、わたしの身体を起こして支える。 雖然很溫柔,但不是驕縱的馬爾克鏗鏘地將餐具放在桌子上,挺起我的身體支撐住。
「マイン、これくらいなら食べられるのではありませんか?」「瑪茵,若是這點能否吃得下去呢?」
カチカチの固いパンを削って、ミルクに浸した病人食であるパン粥に蜂蜜がかかっているのが見えた。甘みがあっておいしいだろう。 在削下硬梆梆的硬麵包、泡在鮮奶裡作為病人餐的麵包粥裡看得見用上了蜂蜜。有著甜味會很好吃吧。
「私が支えているので、ルッツ、食べさせてやれますか?」「由於我在支撐著,路茲,能餵食嗎?」
「オレ、下手だから、多分、その服を汚すと思います」「我,因為很笨拙,大概,我認為會弄髒那衣服」
わたしが着ている青の衣を指差して、ルッツが困ったように言った。 用手指著我穿著的藍色衣服,路茲好像傷腦筋地說著。
青い衣は貴族が着るものなので、高品質で高価だ。ミルクを零して臭くなったら困る。そして、脱がそうにも、ずっぽりと被るタイプの服なので、全く力が入らないわたしを支えながら脱がせるのは大変だ。 由於藍衣是貴族穿的東西,因高品質而昂貴。滴落牛奶而變臭的話很困擾。而且,脫掉也是,由於是合身地覆蓋類型的衣服,一邊支撐著完全沒注入力量的我一邊脫掉是很辛苦的。
「なるほど、これは困りましたね」「原來如此,這樣很傷腦筋呢」
「マルク、蜂蜜の固まった部分を持ってこい。少しくらいは自分で動けるになってもらわなきゃ、脱がすのも大変だ」「馬爾克,將蜂蜜的凝固部分帶過來。多少必須要變得能自己動做,脫掉也會很辛苦啊」
ベンノの言葉に即座に動いたマルクが、蜜が結晶化した小さな固まりを取って来てくれた。 對班諾的話語立即動作的馬爾克,將蜜結晶化的小固體給拿了過來。
金平糖のようにガタガタボコボコの形の甘い物が、口の中に転がり込んでくる。じわりと解けて、とろりとした甘みが身体中にじんわりと広がって行くのがわかる。 好像金平糖般鬆鬆垮垮凹凸不平的形狀的甜的東西,滾入進了口中。徐徐地溶解,能明白作為濃稠的甜味在身體裡面徐徐地擴散開來。
お昼ご飯をたった一食抜いただけで、本当に栄養が足りていなかったようだ。蜜の固まりが口の中で溶けてなくなる頃には、ほんのり身体に温もりが戻ってきたような気がした。 就只是僅僅省去了一頓中飯,營養似乎真的不夠。蜜的固體在口中變得融化不見的時候,微微的感覺身體裡好像回來了些溫暖。
さらに数個、蜜の固まりを口の中に放り込まれ、もごもごと舐めていると、ベンノがガシガシと頭を掻いた。 更加將數個、蜜的固體放進了口中,嚼來嚼去地舔舐著時,班諾激烈地搔抓著頭。
「マイン、神官長は魔力を使うことについて何か言っていなかったか? 気分が悪くなるとか、後でこういうことになるかもしれないとか……」「瑪茵,神官長關於使用魔力有沒有說過什麼嗎? 會變得不舒服之類,在之後說不定會變成這樣之類……」
わたしは午前中の神官長の言葉を思い出す。 我回想起上午的神官長的話語。
「えーと、負担にならない程度で奉納するように、とは言われました。身体が軽くなってすっきりしたので、全く負担じゃなかったんです」「呃,像是以不造成負擔的程度做奉獻,被那樣說過。由於身體變輕而很舒暢,完全沒有負擔」
「なるほど。だが、お前はずっと身食いで、魔力が身体に満ちているのが常だったわけだろう? 常にあるものが無くなったせいで、変調を来したという可能性は?」「原來如此。但是,妳一直因身噬,魔力充滿著身體裡是很平常的對吧? 由於經常有的東西變不見了,名為引起不正常的可能性是?」
「……あるかもしれません」「……說不定有」
わたしは意識を集中して、魔力を押し込んでいる蓋を開けてみる。ほんの少し、じわじわと広がるくらいの熱をゆっくりと身体中に循環させていく。冷たい指先が温まって行くのがわかった。足りないところへ熱を流し込んだ後、また蓋を閉める。 我集中起意識,試著打開將魔力壓進去的蓋子。稍微一點點,一點一低地將擴散般的熱緩緩地在身體裡面循環起來。能明白冰冷的指尖暖和了起來。讓熱往不夠的地方流進去之後,再次蓋上蓋子。
「ベンノさんが正解みたいです。身体が温もってきたみたい」「班諾先生好像是正確答案。身體好像溫暖了起來」
「体温を上げすぎて倒れるのは止めてくれよ」「提高太多體溫會倒下的停下來吧」
即座にルッツの注意が飛んでくる。わたしがやりそうなことを完全に把握されているようだ。 路茲的注意立刻飛了過來。似乎完全把握住我快要去做的事情。
「……多分大丈夫と思う」「……我認為大概不要緊」
温かくなってきた手をゆっくりと握って開いてしてみる。まだ強張った感じはするが、自分の意思でちゃんと動くようになった。 緩緩地試著握起打開便溫暖起來的手。還有著僵硬的感覺,但變得好像能以自己的意思好好行動。
それを見ていたベンノが胸を撫で下ろして、息を吐く。 看到那個的班諾向下撫著胸口,鬆了一口氣。
「……マイン、俺も身食いに関しては又聞きの情報が多い。魔力に関することは神官長にしっかりと確認しろ。まだ若いが、青色神官の割にはマシな目をしている」「……瑪茵,我也間接聽到很多有關身噬的情報。有關魔力的事情要好好跟神官長做確認。雖然還很年輕,但對比藍色神官有著更好的眼神」
「……え? 神官長って若いんですか?」「……咦? 是說神官長很年輕嗎?」
思わぬ言葉に瞬きの回数を増やすと、ベンノは「ガキのお前にとって若いがどれくらいを指すのか知らんが」と前置きしつつ、答えてくれた。 對意想不到的話語增加了眨眼的次數後,班諾一面以「對小鬼的妳來說年輕指的是多大不知道」為開場,一面給予了答案。
「見たところ22~23だろう? あんまり世間に揉まれてない不慣れな感じだから、もうちょっと若い可能性もあるが……」「看起來22~23吧? 因為不太被被社會歷練過不習慣的感覺,也有更年輕的可能性……」
「うそ!? 30歳くらいじゃないんですか? ベンノさんとあまり変わらないと思ってました」「騙人! 不是30歲左右嗎? 我認為跟班諾先生變化不大」
「マイン。お前、それ、絶対に本人には言うなよ?」「瑪茵。妳,那個,絕對別對本人說喔?」
怖い顔で釘を刺された。 備用可怕的臉叮囑了。
でも、落ち着きがあるし、何となく貫禄と言うか、人を使い慣れているところもあるし、「長」なんて位についているんだから、そこそこのお年だと思うんだけど? 但是,有著沉著,總覺得該說是威嚴嗎,也有習慣使換人的地方,因為是關於著「長」之類的位子,認為有著相當的年紀就是了?
むーん、と考えながら、わたしは身体のあちこちを動かし、起き上がるために寝返りを打ってみる。まだ完全には動けるようになっていなかったわたしは、寝返りどころか、ボテッと長椅子から落ちた。 嗯、地一邊思考,我一邊動著身體的各處,為了爬起來試著翻過身來。還完全無法變得能行動的我,翻身的地點,碰地從長椅子上掉下去。
「マイン!?」「瑪茵!?」
「何をやってるんだ、この阿呆!」「在做什麼啊,這個阿呆!」
「そろそろ起き上がれるかな、と思ったんだけど……」「想著是否差不多能起來了呢,就是了……」
わたしの言い訳に三人が揃って目を釣り上げた。 三人對我的辯解揚起了聚攏的目光。
「全く動けなかったヤツが何を言っている?」「完全無法動的傢伙在說什麼?」
「あぁ、本当に目を離せない方ですね」「啊,真的是無法移開目光的人呢」
「頼むから、おとなしくしててくれよ」「拜託了,給我老實點唷」
わたしがちょっと回復したことで安心したらしい三人は、感情が心配から怒りに変わり始めたようだ。落ちたわたしを取り囲む三人の背後に怒りのオーラが見えた。 因我稍微恢復了而似乎安心的三人,感情似乎開始從擔心變成憤怒了。在包圍掉下的我的三人背後看得見憤怒的靈氣。
「ルッツ、マインの側仕えのフランにこれから毎回、その日の行動、魔力行使の有無、昼食の内容、全て細かく報告させろ」「路茲,今後每次對瑪茵的近侍弗蘭,那一天的行動,有無行使魔力,午餐的內容,全部讓他細緻報告」
「マインはきっちり管理しなければ、何が起こるのかわからないので、当然のことですね。見ていたつもりで、この有様ですから」「由於瑪茵不精確管理的話,會發生什麼都不知道,是當然的事情呢。是有打算看著,因為是這種狀態」
ベンノがテーブルをトントンと指先で叩きながら、苛立たしげにわたしを睨み、マルクは一見ニコニコしているのに目が全く笑ってない怖い笑顔になっている。 班諾一邊咚咚地用指尖敲打桌子,一邊著急地瞪著我,馬爾克乍看明明是笑嘻嘻的眼神卻完全沒在笑變成了恐怖的笑容。
反論もできずに、ベンノとマルクの言葉をしょぼんとしながら神妙に聞いていると、ルッツがぼそりと言った。 反駁也做不到,儘管無精打采還是老老實實地聽著班諾跟馬爾克的話語時,路茲輕聲地說了。
「そんな顔してもオレは誤魔化されないからな」「就算做出那種表情也無法欺騙我呢」
「ルッツ?」「路茲?」
「本を前にしたマインが、側仕えなんて自分より下の立場のヤツの言うことを聞くはずがない」「把書放在之前的瑪茵,應該不會聽近侍之類比自己還低下立場的傢伙所說的話」
わたしのことを一番よく理解しているルッツはビシッとわたしを指差して宣言した。 最能好好理解我的事情的路茲強烈地用手指著我宣言著。
「もし、側仕えからの報告に、本を読む邪魔されたって怒ったとか、ちゃんと昼飯食わなかったなんて報告があったら……神殿の偉い人に頼んで、マインを図書室禁止にしてもらうからな!」「如果,來自近侍的報告,有著被打擾看書而生氣之類、沒有好好吃午飯之類的報告的話……會拜託神殿偉大的人,請求讓瑪茵禁止圖書室的!」
そんな殺生なっ! 居然那麼狠毒!
どうやら、わたし、皆様のお陰で、神殿でもきっちり管理された健康ライフが送れそうです。 看來,我,托大家的福,在神殿也快要過上被精確管理的健康生活了。
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これで長い初日が終了です。 就這樣漫長的第一天結束了。
次回は、側仕えの仕事についてです。 下回是,關於近侍的工作。