集 はり侍べる 親王 、 諸王 、 諸臣 、 百官人 等 諸 聞き 食 へよと
のたま
. 宣 ふ――
すめら みかど つか まつ ひれか とものを たすきか とものを ゆきお とものを たちは とものを
天皇が朝廷に 仕 へ 奉 る比礼挂くる 伴男 、手襁挂くる 伴男 、靫負ふ 伴男 、剣佩く 伴男
とものを やそ とものを はぢ つかさづかさ つか まつ ひとども あやま をか くさぐさ
、 伴男 の八十 伴男 を 始 めて、 官官 に 仕 へ 奉 る 人等 の、 過 ち 犯 しけむ 雑雑 の
つみ ことし みなづき つごもり おほはらへ はら たま きよ たま こと もろもろ き たま
.罪 を、今年の 六月 の 晦 の 大祓 に 祓 へ 給 ひ 清 め 給 ふ 事 を、 諸 聞き 食 へせと
のたま
. 宣 ふ。
たかまのはら かむづま ま すめむつかむろぎ かむろみ みこともち やほよろづ かみたち かむつど
高天原 に 神留 り坐す、 皇親 神漏岐、 神漏美の 命 以 て 八百万 の 神等 を 神集
つど たま かむはか はか たま あ すめみまのみこと とよあしはらのみづほのくに
へに 集 へ 賜 ひ、 神議 りに 議 り 賜 ひて、我が 皇御孫之尊 は、 豊葦原乃水穂之国 を、
やすくに たひら しろしめ ことよ まつ
. 安国 と 平 けく 知食 と事依し 奉 き。
かく よ まつ くぬち あらぶるかみ たち かむと と たま かむはら はら たま
如此依さし 奉 し国中に 荒振神 達 をば、神問はしに問はし 賜 ひ、 神掃 に 掃 ひ 賜 ひ
ことと いはねこ たちくさ かきは ことや あまのいはくらはな あまのやへぐも いつ ちわ
て、語問し磐根樹の 立草 の 垣葉 をも語止て、 天之磐座 放 ち、 天之八重雲 を伊頭の千別き
ちわ あまくだ よ まつ
に千別きて、 天降 し依さし 奉 りき。
かく よ まつ よも くになか おほやまとひだかみのくに やすくに さだ まつ
如此依さし 奉 りし四方の 国中 と、 大倭日高見之国 を 安国 と 定 め 奉 りて、
したついはね みやばしらふと し た たかまのはら ちぎたかし すめみまのみこと みづ
.下津磐根 に 宮柱太 敷き立て、 高天原 に千木高知りて、 皇御孫之命 の美頭の
みあらかつか まつ あまのみかげ ひのみかげ かく ま やすくに たひら しろしめ くぬち
御舎仕 へ 奉 りて、 天之御蔭 、日之御蔭と 隠 り坐まして、 安国 と 平 けく所知食む国中
な い あまのますひとら あやま をか くさぐさ つみごと
に、成り出む 天之益人 等が、 過 ち 犯 しけむ 雑雑 の 罪事 は。
あまつつみ あはなち みぞうめ ひはなち しきまき くしさし いきはぎ さかはぎ くそと
天津罪 と、 畔放 、 溝埋 、 樋放 、 頻蒔 、 串刺 、 生剥 、 逆剥 、屎戸、
. ここだく つみ あまつつみ の わ
許許太久の 罪 を、 天津罪 と法り別けて。
くにつつみ いきはだたち しにはだたち しろひと こくみ おの はは をか おの こ をか
国津罪 と、 生膚断 、 死膚断 、 白人 、胡久美、 己 が 母 犯 せる罪、 己 が子 犯
つみ はは こ をか つみ こ はは をか つみ けものをか つみ はふむし わざはひ
せる 罪 、 母 と子と 犯 せる 罪 、子と 母 と 犯 せる 罪 、 畜 犯 せる 罪 、 昆虫 の 災 、
たかつかみ わざはひ たかつとり わざはひ けものたふし まじものせ つみ ここだく つみい
. 高津神 の 災 、 高津鳥 の 災 、 畜仆し 、 蠱物為 る 罪 、許許太久の罪出でむ。
かくい あまつみやごともち おほなかとみ あまつかなぎ もとうちき すゑうちた ちくら
如此出でば、 天津宮事 以 て、 大中臣 、 天津金木 を 本打切 り 末打断 ちて、千座の
おきくら お た あまつすがそ もとか た すゑか き やはり とりさ あまつのりと
.置座 に置き足らはして、 天津菅曾 を本刈り斷ち 末刈 り切りて、 八針 に取辟きて、 天津祝詞 の
ふとのりとごと の
. 太祝詞事 を宣れ。
かく あまつかみ あまのいはと お ひら あまのやへぐも いつ ちわ ちわ
如此のらば、 天津神 は 天磐門 を押し 披 きて、 天之八重雲 を伊頭の千別きに千別てき
きこしめ くにつかみ たかやま すゑひきやま すゑ のぼ ま たかやま いほり ひきやま
. 聞食 さむ、 国津神 は 高山 の 末短山 の 末 に 上 り坐して、 高山 の伊惠理、 短山 の
.いほり か わ きこしめ
伊惠理を撥き別けて 聞食 さむ。
かくきこしめ すめみまのみこと みかど はぢ あめのしたよものくに つみ い つみ
如此所聞食してば、 皇御孫之命 の 朝廷 を 始 めて、 天下四方国 には、 罪 と云ふ 罪
あらじ しなとのかぜ あまのやへぐも ふ はな こと ごと あしたのみぎり ゆふべのみぎり
は不在と、 科戸之風 の 天之八重雲 を吹き 放 つ 事 の 如 く、 朝之御霧 、 夕之御霧 を、
あさかぜゆふかぜ ふ はら こと ごと おほつべ ゐ おほふね へと はな ともと はな
朝風夕風 の吹き 掃 ふ 事 の 如 く、 大津辺 に居る 大船 を、舳解き 放 ち艫解き 放 ちて、
おほみのはら お はな こと ごと をちかた しげき もと やきがま とがまもち うちはら こと
大海原 に押し 放 つ 事 の 如 く、 彼方 の繁木が 本 を、 焼鎌 の 敏鎌 以 て、 打掃 ふ 事
ごと のこ つみ あらじ はら たま きよ たま こと たかやまのすゑ ひきやまのすゑ
の 如 く、 遺 る 罪 は不在と、 祓 へ 賜 ひ 清 め 賜 ふ 事 を、 高山之末 、 短山之末 よ
さくなだり お はやかわ せ ま せおりつひめ い かみ おほみのはら も い
り、佐久那太理に落おちたぎつ 速川 の瀬に坐す瀬織津比咩と云ふ 神 、 大海原 に持ち出でなむ。
かくも い い あらしほのしほ やほぢ やしほぢのしほ やほあひ ま はやあきつひめ い
如此持ち出で往なば、 荒塩之塩 の八百道の 八塩道之塩 の 八百曾 に坐す 速開都比咩 と云
かみ も かかの
ふ 神 、持ち可可呑みてむ。
かくかかの いぶきど ま いぶきどぬし い かみ ねのくにそこのくに いぶ はな
如此可可呑みてば、気吹戸に坐す 気吹戸主 と云ふ 神 、 根国 底之国 に気吹き 放 ちてむ。
かくいぶ はな ねのくにそこのくに ま はやさすらひめ い かみ も さすらひうしな
如此気吹き 放 ちてば、 根国 底之国 に坐す速佐須良比咩と云ふ 神 、持ち佐須良比失ひてむ。
かくうしな すめら みかど つか まつ つかさづかさ ひとども はぢ あめのしたよも
如此失 ひてば、天皇が 朝廷 に 仕 へ 奉 る 官 官 の 人等 を 始 めて、 天下四方 に
けふ はぢ つみ い つみ あらじ たかまのはら みみふ た き もの うまひ た
は、今日より 始 めて 罪 と云ふ 罪 は不在と、 高天原 に 耳振 り立てて聞く 物 と、 馬牽 き立
ことし みなづき つごもり ゆふひのくだち おほはらへ はら たま きよ たま こと
てて、今年の 六月 の 晦日 の、 夕日之降 の 大祓 に、 祓 ひ 給 ひ 清 め 給 ふ 事 を、
もろもろ き たま のたま
諸 聞き 食 へよと 宣 ふ。
よくに うらべども おほかはぢ も まか い はら や のたま
四国の 卜部 等 、 大川道 に持ち 退 り出でて 祓 へ却れと 宣 る。
創作內容
六月晦大祓(みなづきのつごもりのおほはらへ)
道教 (2)
