天声人語
2013年12月13日(金
数ある「訳語」の中でも簡潔にして秀逸、国民的財産のような一語であろう。オリンピックに「五輪」をあてたのは、読売新聞記者の故・川本信正さんだったという。1936年のベルリン大会の時だから、もう80年に近い歴史がある▼五つの輪が五つの大陸を表すのはよく知られる。欧州で始まり、3回目には北米へ。アジア初は49年前の東京だった。次回の南米ブラジルは、「五輪の歴史に新しい大陸を仲間入りさせてほしい」と当時のルラ大統領が訴えて金星を射止めた▼そして7年後には再び東京に戻ってくる。日本漢字能力検定協会は「今年の漢字」を「輪」と発表した。毎年、公募をして一番多く寄せられた字が選ばれる。「おかえり、五輪」「ようこそ、五輪」の思いを込めた人が多かったのだろう▼人のつながりを「輪」に例えることもある。苦難があれば善意と支援の輪が広がる。一方で、憎しみの連鎖というのも一種の輪だろう。この輪のために止(や)まぬ戦火がある▼悪(あ)しき連鎖を断って、許しの輪を広げたのが元南アフリカ大統領のマンデラ氏だった。「憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ。……ならば愛することも学べるだろう。愛は憎しみよりも自然に人の心に根付くはずだ」▼思えば漢字は濃密な文字で、ひと塊(かたまり)の直線と曲線から、想像は色んな事物や場面へと広がっていく。アフリカ大陸はまだ五輪の開催と縁がない。清水寺での恒例の墨書に、五つの輪の完成を願掛けした。
即使是眾多的「譯語」,也是一個簡潔又傑出好像國民財產的一句話。用五輪表示奧林匹克的是已故讀賣新聞記者川本信正先生。從1963年的柏林大會,至今已將近80年的歴史了。
五個圓環就代表五個大陸廣為人知,從歐洲開始,第三屆於北美舉行,亞洲的第一次在49年前的東京,下屆落在南美洲的巴西,當時的盧拉總統說:「希望能讓我們在五輪的歴史增添一個新大陸」,此話一出爭取了金牌
7年之後再度回到了東京手上。日本漢字能力檢定協會發表「今年漢字」為「輪」字。每一年都會公開募集,選出數量最多最貼近的字。一定很多人都抱著「歡迎回來,五輪」「歡迎你!五輪」的心情。
比喻為「輪」的還有人與人之間的關係,若身陷苦難,滿懷善意的支援會拓展開來,另一方面,仇恨也有某種程度上的枷鎖,為了這個環造成無法停止的戰火。
斬斷仇恨的枷鎖,用包容的心看待一切,是已故南非總統 曼德拉提倡的理念。「沒有天生就懷著仇恨的人,人學習憎恨,同時也可以學到愛,但是愛是比憎恨更自然地紮根在人的心中」
怎麼一樣,豐富的漢字上,從一撇一豎想像出各種事物還有情景,逐漸地蔓延。非洲大陸還沒有舉辦奧運的緣分,在清水寺每年的墨筆中,實現了完成「五輪」的心願。