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電擊徒然草 第64回 杉井光さん
作者:這組織│電擊文庫│2010-03-31 10:59:53│巴幣:0│人氣:472
電撃の作家さんたちが、日頃の想いのままを書きつづるこのコーナー。今回は『神様のメモ帳』シリーズ最新2巻が刊行される杉井光さんの登場だ!
第六十四回 杉井光さん
1978年、東京生まれ。そのくせ電車の混雑が苦手で埼玉にすら自転車で行くことがしばしば。電車通勤していた時期は自分でもどうやって我慢していたのやら。あ、夜勤だからラッシュなかったっけ。
杉井光さんの『神様のメモ帳』シリーズ最新2巻は6月10日発売!
【電撃文庫作品】
火目の巫女
火目の巫女 巻ノ二
火目の巫女 巻ノ三
神様のメモ帳
神様のメモ帳2
さよならピアノソナタ
さよならピアノソナタ2
『カレースープ進化論』
人間の身体は新陳代謝でつねに古い細胞が死んで新しい細胞が作られているため、およそ三ヶ月で全身がほとんど新しいものに置き換わるのだそうです。三ヶ月前の僕と今の僕は物質的に別物であり、そうだとすれば僕が僕であるということはいったいどういうことなのか。不思議に思えます。
さて、話は唐突に飛びますが、僕は金がない上に洗い物の手間が嫌いなので、よくカレーを作ります。鍋に大量に作り置きすれば二日は保つ上に、毎食皿一枚とスプーンを洗うだけで済むからです。無精な貧乏人の強い味方です。あるとき、無精も金欠も進行しすぎて、作って二日目のほとんど残っていないカレーを前にした僕は、牛乳と鶏ガラスープでのばして食いつなぐことを思いつきました。もちろん味は薄まりますが、てきとうに野菜を切って入れて煮ればそれなりに食べ物になります。
翌日、そののばしたカレーも食べ尽くそうとしていた僕は、再びトマトの缶詰とか余っていた赤ワインとかを入れて増量を図りました。カレーの味はますます薄まりますが気にしません。
一週間後。どのような奇妙な進化の過程をたどったのかもはや憶えていませんが、鍋の中身はけんちん汁になっていました。大根とかゴボウとかコンニャクが入っていて、醤油味なのです。なんでやねん。さすがに我に返った僕は自分で自分につっこみました。
自分で食べるのは怖かったので、ちょうど部屋に遊びに来た悪友に食べさせました。予想に反して美味いと言っておかわりまで要求されたので、良心が痛んだ僕は素直に告白することにしました。
「よく落ち着いて聞いてくれ、これはアイデンティティに関わる哲学的な問題なんだ」と前置きして、冒頭の新陳代謝の話をした後で、そんなわけでそのけんちん汁はもともとはカレーであったが、三ヶ月前の僕が物質的には別物だとしてもやはりおまえの友である僕だということには変わらないように、今おまえが飲んだけんちん汁も――そのへんで殴られました。美味いって言ったくせに!
友達は大切にしましょう。
さ~て次回はアニメ化決定で絶好調!! 『バッカーノ!』最新刊の刊行を控えた成田良悟さんが登場予定! お楽しみに~♪
引用網址:https://home.gamer.com.tw/TrackBack.php?sn=576601
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