９話

惨めに捨てられた伯爵夫人は第二王子と精霊神たちに想われ思い出す
慘被拋棄的惡之伯爵夫人回想起被第二王子與眾精靈神戀慕
作者：砂礫レキ
９話
９話
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　この国の主要貴族は家系ごとに得意とする魔法を持つ。
　這個國家的主要貴族每個家系都擁有擅長的魔法。

　寧ろ魔法が得意だからこそ貴族になれたともいう。
　倒不如也能說是正因為擅長魔法才能成為貴族。

　国創りにあたり、剣や槍、武器の扱いに長け優れた肉体を持ったものは騎士となった。
　創國前後，善於劍或槍、武器的操作擁有卓越肉體的人成了騎士。

　炎や雷、風や水のエレメントを巧みに操り豊富な魔力を持つものは貴族となった。
　靈巧地操作炎或雷、風或水的元素擁有豐富魔力的人成了貴族。

　けれど百数十年、国の内にも外にも大局的な平和が続いた。
　但是一百多年來，在國內或國外都持續著大局的和平。

　故に騎士は兎も角として貴族が戦いに赴くことなど滅多になくなった。
　因此騎士姑且不論貴族前往戰鬥之類變得幾乎沒有了。

　女であるならば猶更のことである。
　若是女子的話更是如此。

　初代からの血を繋いだ結果魔法が使える。使えるが使う機会もない。
　聯繫著來自初代的血因而能使用魔法。雖能使用卻沒有使用的機會。

　だからこそ、貴族の女は子を、特に男子を生すことに意味があると考えられている。
　正因為如此，貴族女子被想成是生孩子、特別是男孩子才有意義。

　平民でありながら貴族学校に特待生として入り込み、中心人物となったマリア。
　儘管是平民卻作為特待生進入貴族學校，成了中心人物的瑪麗亞。

　彼女は子産みのみを重視するという姿勢を馬鹿らしいと怒った。
　她生氣的說了唯獨重視生子這事的態度有夠愚蠢。

　人間が生きる価値はそれだけではないと。男女が求めあう理由はそれだけではないと。
　說是人類活著的價值不只如此。說是男女互相尋求的理由不只如此。

　けれど今王妃となった彼女は二人の息子を持っている。
　但是現在成了皇后的她有著兩位兒子。

　貴族の女として生まれた私には何もない。
　作為貴族女子而生的我什麼都沒有。

　子も産まれず、そして夫も失われた。年齢は重ね過ぎた。
　沒有生孩子，而且也失去了丈夫。年齡還過大。

　ならば残されたものを使って、愛する者を守るだけだ。
　那麼就只能用被剩下的東西、守護所愛的人了。

　残されたものは私自身、私の魔力。
　被剩下的東西是我自己、我的魔力。

　そして愛する者は。
　然後所愛的人是。


『ディアナおばさま！』
『狄亞娜阿姨！』


　愛らしい幻聴が聞こえる。
　聽到了可愛的幻聽。

　自分がまだ若さというものを完全に失っておらず、夫の愛も得られていた頃。
　自己還沒完全失去所謂的年輕，也還獲得著丈夫的愛的時候。

　姿を見せれば子犬のように駆け寄ってきて抱きしめれば甘いミルクの匂いがして。
　現身的話就像小狗狗般跑了過來、被緊緊抱住的話散發著甘甜的牛奶味。

　いつか私にも、このようにかわいらしい存在を我が子として抱ける日が訪れて欲しいと願った。
　祈願希望有一天，我也能把像這樣可愛的存在作為我小孩擁抱的日子會來臨。

　けれど我が子の身代わりとしてアレス王子を可愛がったつもりはない。ルーク王子のこともだ。
　但是不打算把亞雷斯王子作為我小孩的替身來疼愛。路克王子也一樣。

　この国に仕える貴族の一人として、何よりもマリアの親友として、彼女の宝を守る。
　作為侍奉這個國家的一位貴族，更重要的是作為瑪麗亞的親友，會保護她的寶物。


「ディアナ様！！」
「狄亞娜大人！！」


　すっかりと幼さの抜けた声が聞こえる。
　聽到了完全脫去稚嫩的聲音。

　けれど愛らしい声であることには変わらない。
　但可愛的聲音不曾改變。

　それが貴男の望む愛でなくても。
　就算那並非是你期望的愛。

　アレス、私は貴男を守るでしょう。
　亞雷斯，我會保護你的。

　女が振りかざしたナイフが私の頬を掠め耳を掻いた。
　女人揮舞的小刀掠過我的臉頰搔著耳朵。

　態勢を崩した体を抱きしめる。愚かなお嬢さんね、そう囁いてあげた。
　緊緊抱住姿態垮了的身體。愚蠢的姑娘呢，獻上如此低語。

　その頬に手を添えてにやりと笑う。
　把手添加到那臉頰上微微的笑著。

　血まみれの掌で触れられてさぞ気持ちが悪いだろう。
　被用滿是鮮血的手掌觸碰想必會很噁心的吧。

　けれど濡れた手というのは『雷』には都合がいい。
　但是這沾濕的手對『雷』來說很方便。

　先程穴を開けるのに結構な魔力を使ってしまった。
　為了打開剛才的洞使用了相當的魔力。

　だから効率よく電撃を流せるのはいい。
　所以可以很有效率的流通電擊。

　女の頬と剥き出しの手首にそれぞれの手を触れさせる。
　讓各別的手觸碰女人的臉頰與裸露的手腕。

　拘束が完全に解かれる前に、ナイフが私の背中に振り下ろされる前に。
　在拘束被完全解開之前，在小刀被往下揮到我的背上之前。


　「雷女神（ユピテル）の…細剣（レイピア）！！」
　「雷女神（朱庇特）的…細劍（西洋劍）！！」


　私は彼女を雷撃で刺し貫いた。
　我用雷擊刺穿了她。