惨めに捨てられた伯爵夫人は第二王子と精霊神たちに想われ思い出す慘被拋棄的惡之伯爵夫人回想起被第二王子與眾精靈神戀慕
作者:砂礫レキ
6話6話
原文連結 五歳 五歲
『ルークくんは何歳ですか?』『路克君是幾歲呢?』
『六才です』『我六歲』
『アレスくんはなんさいですか』『亞雷斯君是幾歲呢』
『ごさいですっ!』『我五歲!』
『二人の好きな子の名前を教えてください』『請告訴我兩個人喜歡的孩子的名字』
『ディーテです。将来ぜったい結こんします』『是黛蒂。將來絕對要結婚』
『ぼくディアナおばさま!ぼくもぜったいけっこんする!』『我是狄亞娜阿姨!我也絕對要結婚!』
『ブーッ残念でした、ディアナは人妻なのでアレスくんと結婚できません』『噗很可惜,狄亞娜是人妻而不能跟雅雷絲結婚』
『えっ、そんなのやだ、かあさまなんてきらい!!うわぁあああん!!』『咦,我討厭那樣,母親大人好討厭!!嗚哇啊啊啊嗯!!』
『ちょ、なんで私のこと嫌いになるのよ!』『等,怎麼會變成是討厭我呀!』
『母さまの発言にやさしさがないからだと思います』『我認為是因為母親大人的發言不夠體貼』
十歳 十歲
『兄さん、今いいかな』『哥哥,現在有時間嗎』
『どうしたんだいアレス、改まって』『怎麼了嗎亞雷斯,那麼鄭重』
『子供部屋から見える庭のバラを植え替えたいんだ』『我想要改種從兒童房間裡看得到的庭院玫瑰』
『ああ、そんなことか。いいよ、どんな薔薇にするんだい?』『哦,是那樣啊。可以喔,要種哪種玫瑰呢?』
『この図鑑の…ディアナ様の髪によく似た深い緋色の花を咲かすらしいんだ』『這本圖鑑的…似乎會開出非常相似狄亞娜大人頭髮的深紅色的花』
『アレスお前、まだディアナ様のことを……』『亞雷斯你,還在說狄亞娜大人的事……』
『せめて似た色だけでも、見つめていたいんだ……』『至少即便只是相似的顏色,我也想看看呀……』
十五歳 十五歲
『ちょっとアレス、あなた最近益々ディアナにそっけない態度取っているらしいじゃない』『等下亞雷斯,你最近是不是很像對狄亞娜越發冷淡了』
『ディアナ様はお前の無礼をお許しになっているが傷ついていないわけじゃないぞ…お前の苦しみもわかるが』『狄亞娜大人雖會原諒你的無禮但並不是不會受傷喔…雖也能理解你的痛苦』
『……申し訳ありません』『……非常抱歉』
『私に謝っても意味ないのよ。私が知りたいのは理由。あなた昔はあんなにディアナを慕っていたじゃない』『跟我道歉也沒有意義喔。我想知道的是理由。你以前不是那麼愛慕狄亞娜嗎』
『母上、それは』『娘親,那是』
『……だからです』『……就是如此』
『は?』『啥?』
『あの方に近づいたら俺はきっと困らせてしまう、許されないことを口走ってしまう。……愛していると、告げてしまう』『接近那一位的話我一定會讓她很困擾,順口說出無法被原諒的話。……告訴她說我愛妳』
『アレス、あんた……ルーク、その表情…知っていたわね!?』『亞雷斯、你……路克,那個表情…你是知道的吧!?』
『兄さんを責めないでくれ。兄さんに吐き出すことが出来たから耐えられたんだ』『請不要責備哥哥。因為能對哥哥傾吐出來我才能夠忍耐呀』
『いやでも待ってよ。待ちなさいアレス……!ディアナは結婚しているのよ?他の男の妻なのよ?』『不但是等等喔。請等一下亞雷斯……!狄亞娜結婚了喔?是別的男人的妻子喔?』
『分かっているよ…分かっているんだ。だからこれは……この場の三人だけの秘密にして欲しい』『我明白喔…我明白的呀。所以希望這個……是只屬於在場三個人的祕密』
「って、滅茶苦茶私にばらしているじゃないのっ!」「哎,這不都胡亂的暴露給我了嗎!」
手渡された魔法石から流れている過去の光景の数々を見終えた私はまずそう突っ込んだ。 看完從被轉交的魔法石裡流動著的過去種種光景,我首先如此吐槽。
けれどルーク王子も、あのお調子者のマリアも私の砕けた台詞に対し沈痛な表情を見せるだけだ。 但是路克王子與、那個輕率者瑪麗亞都只是對我那破碎的台詞展露出沉痛的表情。
逃げ出そうとしたマリアを軽く処罰した後、私はアレス王子の変貌の理由を母親であるマリアと兄であるルーク王子に問い質した。 輕輕處罰過算逃出去的瑪麗亞之後,我詢問了身為母親的瑪麗亞與身為哥哥的路克王子亞雷斯變樣的理由。
するとマリアは表情を真剣なものにすると「アレスは何一つ変わっていない」と私に告げたのだった。 於是瑪麗亞讓表情認真起來後,告訴我「亞雷斯沒有任何一點改變」。
それに戸惑っているとルーク王子がどこからか宝石箱を抱えて私の前に立った。 正對那困惑時路克王子抱著不知哪來的寶石箱站在我的面前。
開けてみてください、そう言われて混乱しながら蓋を開けるとそこには複数の宝石が入っていた。いや違う、これは『記憶石』だ。 請試著打開看看,被如此說而一邊混亂一邊打開蓋子後,在那裡放進了複數的寶石。不不對,這是『記憶石』。
その石を握りしめ思い出すことで記憶を石の中に転写し永く保存することができる。 緊握那顆石頭就能以回想出之事將記憶轉寫進石頭裡面永久保存起來。
その記憶が強く脳内に残っている程、石で再生された時の光景は鮮やかになる。 那份記憶越是強烈殘留在腦中,用石頭再生時的光景就變得越鮮活。
そして私が今見せられた母子の、そして兄弟のやりとり。 然後現在讓我看到的是母子的、然後是兄弟的交流互動。
映る人物が成長するにつれ声も色も鮮明になるのは封じた時期の問題か、それともそれ程記憶の持ち主が衝撃を受けたのか。 隨著映照人物的成長聲音與顏色也變得鮮明,是封鎖時期的問題嗎,還是說記憶的擁有者瘦到了那個程度的衝擊呢。
マリアとルーク王子は私に対しそれぞれとアレス王子の会話を見せてきたのだ。 瑪麗亞與路克王子對我展示起了各自與亞雷斯王子的對話。
幼い子供が男性へと成長していく姿を、そして変わらない私への想いを。 年幼孩童朝像男性成長著的姿態,然後不曾改變對我的思念。
もういいだろうとばかりに本人である私へ突き付けてきたのだ。 朝幾乎要說出已經可以了吧的我本人擺了出來。
何も知らなかった私へと。 朝什麼都不知道的我。
私は水晶に映し出されているアレス王子を見つめた。 我注視著被映照出在水晶上的亞雷斯王子。
見ようとしている対象と水晶の設置場所が近いほど映る光景の解像度は高くなる。 打算要觀看的對象與水晶的設置場所越是接近映照的光景解析度就變得越高。
この部屋は先ほどまで私たちがいた部屋の真上に当たる。 這間房間就在直到剛才我們都還在的房間的正上方。
だからこそマリアの行動を読んで真っ先にこの場所に私は辿り着けたのだ。 正因如此讀取了瑪麗亞的行動的我最先到達了這個地方。
ソファーで眠っている顔を見つめる。幼い子供時代の面影は確かにある。 注視著在沙發上睡著的臉。年幼孩提時代的面容確實存在著。
子供のころから、私のことを、十年以上、想っていたの? 從小孩子時、就思念著、我的事情、十年以上嗎?
「馬鹿な子ね」「笨小孩呢」
思わず呟いた。本当にそうよ、マリアが力なく同意する。ルーク王子は何も言わなかった。 不由得嘀咕著。真的是如此呀,瑪麗亞有氣無力的同意了。路克王子什麼都沒有說。
「アンタがロバートしか見ないなんてわかり切っていたから何度も言ったのよ、諦めなさいって」「因為妳明擺著只看得見羅伯特所以我說了好幾次了喔,說了請放棄」
この恋愛脳の私がよ? 對這位戀愛腦的我嗎?
そうぼやくマリアの自虐に笑おうとしたが表情が上手く作れない。 雖打算像如此發牢騷的瑪麗亞自虐地笑著,但無法順利做出表情。
「ディアナ様、これだけはご理解ください。弟は貴方の幸福を壊す気など全くなかった、だから伯爵の件は……」「狄亞娜大人,只有這點還請理解。弟弟完全沒有要破壞妳的幸福的意思,所以伯爵的事……」
「わかっているわ。ロバートの心変わりに貴方たちは無関係だなんて…でも」「我知道喔。你們對羅伯特的變心是沒有關係的…但是」
「そうね。でも私たちにはチャンスだった。ディアナ、あなたの痛みは私の痛みだけれど…それでも私はアレスに攻めろと言ったわ」「也是呢。但是對我們來說是個機會。狄亞娜,雖然妳的痛苦就是我的痛苦……但儘管如此我還是對亞雷斯說了去進攻喔」
「毒薔薇みたいな女でも夫に捨てられたばかりなら流石に弱っていると思った?実際そうだったわね。でも足りないわ」「妳以為即便是像毒薔薇的女人如果才剛被丈夫拋棄畢竟也會是軟弱的嗎?事實上就是如此呢。但是那不夠喔」
私に怒りの感情はなかった。別に騙し討ちにされたとは思わない。裏切られたと憎んだりもしない。 我沒有憤怒的感情。並不認為是被陷害了。不會去憎恨被背叛了。
これはただの戦争だ。私の心をアレス王子が奪うための。二人は協力者ということか。 這僅僅是場戰爭。為了讓亞雷斯王子奪走我的心。兩人是所謂的合作者嗎。
まあわかる。我が子が、或いは弟が十年も一人の女を想い続けてきたのだ。 我能明白。我孩子、或者說是弟弟十年來都持續思念著一個女人。
心ある家族なら、今こそ好機だと背中を押すだろう。恋を叶えてやりたいと、思いもするだろう。 如果是有心的家人,會在背後推一把說現在正是好機會吧。也想過想要讓戀情實現吧。
「足りない?」「不夠?」
聞き返したルーク王子の声にこそ僅かな怒気が含まれていた。弟想いの彼らしいと思った。 儘管反問過來的路克王子的聲音裡包含著些許的怒氣。我認為很像為弟弟著想的他。
でも私だってアレス王子の十年を軽んじているつもりはない。つもりはないが、ただ。 但是我也沒打算要輕視亞雷斯王子的十年。雖然沒有打算,只是。
「私は三十年ロバートを愛し続けてきた!」「我持續愛著羅伯特三十年了!」
この気持ちは怒りなんかじゃない。暴力的なまでの悲しみだ。そうだ、悲しかった。 這種心情並不是憤怒。是甚至到了暴力性的悲傷。沒錯,我很悲哀。
私は夫を愛していた。夫との長い結婚生活を愛していた。 我愛著丈夫。愛著與丈夫的漫長婚姻生活。
「子供の頃に初めて会って、親が決めた相手だったけれどずっと好きだった!一つ年下で弱虫で流されやすくて頼りなくて!でも優しかった!」「在小時候第一次見面,雖然是父母決定的對象但我一直很喜歡!比我小一歲且是膽小鬼且很容易隨波逐流很不可靠!但是很溫柔!」
我儘で傲慢な私の婚約者という立場。私に振り回され、私と敵対する人間に小突かれて、それでも彼は私のことを好きだと言い続けてくれた。 名為任性且傲慢的我的婚約者的立場。被我耍弄,被與我敵對的人欺負,儘管如此他也會繼續說很喜歡我。
私もロバートが好きだった。優しくしてくれるからでも、嫌われ者の私の傍にいてくれるからでもない。 我也很喜歡羅伯特。既不是因為會對我溫柔,也不是因為會待在討厭者的我旁邊。
好きだから、好きだった。 是因為喜歡,才喜歡的。
校内の男の誰もが愛されたいと願うマリア、わけがわからない程魅力的な彼女がロバートに興味を持った時は殺してやろうかと思った。 希望想要被校內所有男生愛的瑪麗亞,莫名其妙般魅力十足的她對羅伯特感興趣時我有想過要殺掉她嗎。
必死で戦って、戦って戦って。そうしたらなぜかマリアとわかりあって。その後は呆気ない程順調に恋人から夫婦になって。 拚命的戰鬥、戰鬥戰鬥。然後不知為何與瑪麗亞互相了解。那之後輕而易舉般順利地從戀人成了夫婦。
夫婦になってからだって私たちは愛し合っていた。筈なのだ。 成了夫婦之後我們也是互相愛著的。應該是的。
「知っていたわ。彼が子供を欲しがっていたって!私も努力した!医者にも頼って、小遣いで胡散臭いまじないにも手を出して!」「我知道的喔。他很想要小孩!我也很努力!也拜託了醫生,也用零用錢染指了可疑的巫術!」
でもできなかった。 但是做不出來。
私だって欲しかったのにできなかったのだ。 明明我也是想要的卻做不出來。
彼との赤ちゃんが、私だって欲しかった。 與他的小寶寶我也是很想要的。
「だからロバートが女を孕ませたと聞いた時だって、私は、私は耐えられたの」「所以當聽到羅伯特讓女人懷孕時,我、我也忍了下來」
そうだ、そんな私が耐えられなかったのは。 沒錯,那樣的我所無法忍耐的。
知らず流れていた涙で視界がぼやける。 不知不覺流下的眼類模糊了視野。
きっと鼻水も出ているに違いない。三十七歳の女がさぞやみっともない有様だろう。 鼻水肯定也一定流出來了。三十歲的女人想必是難看的樣子吧。
自分の夫に告げるべき言葉を全く無関係の人間に八つ当たりして。 把應該告訴自己丈夫話語遷怒到完全沒有關係的人身上。
ロバート、貴男本当に見る目がないわ。 羅伯特,你真的很沒有眼光喔。
私は伯爵夫人としても全く完璧じゃない。 我作為伯爵夫人也並不是完美無瑕的。
ハンカチで目元を強く拭った。ようやく視界が幾分かクリアになる。 用手帕用力擦拭眼角。視野終於變得清晰了一些。
喉が渇いたと思った。 想著喉嚨很渴。
無意識に茶器が置かれたままのテーブルを見る。 無意識地看著依然放著茶具的桌子。
ティーポットと入れ替えられた水晶玉が鎮座していた。 被與茶壺替換的水晶球正端坐著。
そこには眠っているアレス王子が映っている。 在那裡映照著睡著的亞雷斯王子。
いや、それだけではない。 不,不僅如此。
「何を、しているの……?」「是在、做什麼呢……?」
彼の上には、使用人の服を着た女が覆いかぶさっていた。 在他上面,穿著傭人衣服的女人正壓在上面。
その右手に、光る刃物を持って。 在那右手上,拿著發光的刀具。