31番目のお妃様第31位王妃殿下
作者:桃巴
31番目の妃⑩第31位妃子⑩
原文連結漫畫生肉「本日は31日にございます」「今天是31號」
早朝、訪れた女官長の言葉である。 是早上來訪的女官長的話語。
お妃様選びも二ヶ月半が経ち、やっとフェリア邸に王マクロンのお越しの日となったのだ。 選王妃殿下也已過了兩個半月,終於到了國王馬克隆蒞臨菲莉亞宅的日子。
「はあ」「是喔」
フェリアは素っ気ない。 菲莉亞很冷淡。
女官長は顔こそ動かさないものの、邸の様子を瞳が探っていた。侍女も居ず、食事も届けなかったこの邸の怪しさの答えを瞳に焼き付けている。侮蔑の眼差しで緑豊かな畑になった庭園を見つめ、フッと鼻で笑う。 女官長雖說不動聲色,但眼睛探詢著宅院的情況。將沒有侍女、也沒有餐點送達的這座宅院的怪異回應烙印在眼中。用侮蔑的視線凝視著化為綠油油的田地,哼地用鼻子嘲笑。
「華のないことですこと」「不是很華麗」
庭園を言っている風に見せかけて、フェリアに華がないと言っているのだ。フェリアもフッと鼻で笑う。 偽裝成是在說庭院,卻是說菲莉亞不夠華麗。菲莉亞也哼地用鼻子嘲笑。
「実のなる華がもう少しで咲きますわ。愛でるだけの華より、実の力を持つ華が私は好きですの」「能結果的花朵就快要開了喔。比起只能欣賞的花,我更喜歡擁有果實之力的花」
実の力、実力が私にはありますのよとフェリアは応戦している。女官長の目の色が変わる。 菲莉亞以果實之力、實力我也有喔來應戰了。女官長的眼睛顏色變了。
「では、華が咲くまで……実を成すまで、愛でる御方の来訪はなくても良いでしょうに」「那麼,就算直到花開……直到結成果實為止,欣賞的那位都不會來訪也可以吧」
王の来訪は必要ないだろうと女官長はニヤリと笑む。フェリアもニヤリと笑みを返した。 女官長冷笑著國王沒必要來訪吧。菲莉亞也冷笑回去。
「元よりそのつもりだと二ヶ月半も前にお伝えしましたが、お忘れに?」「兩個半月前傳達過本來就是那個打算的,忘記了嗎?」
確かにフェリアは二ヶ月半前に、女官長に言い放っていた。『ここに来たくて来たわけではありませんし』と。女官長の仕返しも、王のお越しもフェリアにとって、どうでもいいことなのだ。女官長は、いっさいへこたれないフェリアに地団駄を踏む思いである。体を強ばらせ瞬きせず、フェリアを凝視している。 菲莉亞的確在兩個半月前,對女官長斷言了。說『不是想來這裡才來的』。女官長的回擊與、國王的蒞臨對菲莉亞來說都是怎樣都好。女官長是想讓全完不氣餒的菲莉亞懊惱跺腳。身體僵硬無法眨眼、凝視著菲莉亞。
「王様のお越しを邪魔した方がいいわよ。だって、私はこう言えばいいのですもの。『侍女も居ず、食事も届かない、衣服もなく邸は埃まみれ、楽しい三ヶ月の王城生活でしたわ』とね」「最好是阻擾國王陛下的蒞臨喔。因為,我這樣就可以了。有說過『要過上也沒有侍女、也不會送入餐點、也沒有衣服宅院滿是灰塵,愉快的三個月王城生活』呢」
女官は大きく目を見開いた。自身の行った仕打ちが自分に返ってきたのだ。そんなことが王に知られてしまえば、女官長の立場はなくなるだろう。懲罰ものである。しかし、フェリアに屈することをよしとしない女官長は、ギリリと歯噛みしフェリアに対峙した。 女官大大睜開了眼睛。自己的所作所為返還到了自己身上。那種事被國王知道的話,女官長的立場就化為烏有了吧。會有懲罰。可是,沒有好好讓菲莉亞屈服的女官長,咬牙切齒地對峙著菲莉亞。
「これだから、田舎者は……女の宮の美徳も知らぬとは嘆かわしい。女の宮での処遇を口にするは恥ずべきこと。ご自身の誇りもないのですか」「正因如此,鄉下人……不知道女子宮的美德真令人悲嘆。將在女子宮的對待說出口會很丟臉。連自身的驕傲都沒有嗎」
後宮のことは後宮内でおさめるが美徳と言っている。それでも、フェリアはうふふと笑う。 有說過後宮的事要在後宮內解決才是美德。儘管如此,菲莉亞也呵呵地笑了。
「ええ、田舎娘ですから、このような立ちまわりしかできませんの。あら、ごめん遊ばせ。そろそろパンが焼き上がりますわ。失礼」「對,因為是鄉下女孩,只會像這樣轉來轉去的。哎呀,真是抱歉。麵包差不多要烤好了。失禮了」
フェリアは女官長の反撃も意に介さず、日常に戻っていった。女官長は怒れるこぶしをそのままに、ふんっとこれまたきびすを返す。その足は王を引き止めるべく、真っ直ぐに進んでいった。 菲莉亞毫不介意女官長的反擊,回到日常去了。女官長依然握著憤怒的拳頭,哼地轉身離去。那雙腳應該是去拖住國王的,筆直地前進著。
***
マクロンは女官長に捕まっている。さっさと31番目の妃の邸に行きたいのに、それを阻むように女官長は邸の管理についての諸問題をマクロンに訴えていた。やがて、王の元に仕事の催促の文官がやって来る。女官長の思惑どおり、マクロンとフェリアの最初で最後であろう朝の一時の交流は見送られた。 馬庫隆被女官長逮到了。明明想快點去第31位妃子的宅院,為了阻止那個的女官長向馬庫隆陳訴了關於宅院管理的諸多問題。不久,在國王的身邊催促工作的文官過來了。一如女官長的意圖,馬庫隆和菲莉亞最初且是最後的早上的短暫交流被送走了。
しかし、これが女官長の後悔となる。心を寄せ合う努力をしているマクロンは、31番目の妃邸へ……夕刻向かうことになったのだ。 可是,這成了女官長的後悔。做著互相抱有好感努力的馬庫隆,朝第31位妃子宅……是偏向黃昏的時候。
やっと、フェリアとマクロンが出会う。 終於,菲莉亞和馬庫隆相遇了。
***
チクチク、チクチク……フェリアは今お針子だ。訪れる騎士らの服を手直ししている。 縫縫補補、縫縫補補……菲莉亞現在是女裁縫。正在修改來訪騎士們的衣服。
「はい、できたわよ。右の肘をよく使うのね。共布で補強してわからないように糸でも頑丈に縫っておいたから」「好了,完成了喔。經常使用右邊的手肘呢。因為為了不被知道是用同樣的布料補強就連線也縫得很堅固」
ゾッドは目を丸めた。手直しの最後はゾッドの服であった。ゾッドはよく右肘を使い敵を倒す。だから、どうしても服の右肘部分がすぐの袖布が弱くなってしまうのだ。しかし、フェリアに渡した服にはそのようなヘタレはなかったはずである。単に騎士服の飾り刺繍がほつれていたので、わからないようにしてもらうため、御願いしたものだ。 佐多看傻了眼。修改的最後是佐多的衣服。佐多經常使用右肘打倒敵人。所以,不管怎樣衣服的右肘部分很快的袖子布就變薄了。可是,交給菲莉亞的衣服應該沒有那麼樣的鬆散。由於僅僅是騎士服的裝飾刺繡散開了,為了不被知道而拜託了。
「なぜ……?」「為何……?」
「え? 普通に毎日接していればわかるわよ」「咦? 普通地每天接觸就會明白喔」
事も無げに告げたフェリアは、鼻唄を歌いながら次の作業に取りかかった。自身の服の裁縫である。ここ二ヶ月半で、フェリアは服やら下着やらを五着ほど作っている。カロディアから持参した服と合わせて八着ほどになった。二日目の夕刻にビンズが届けた荷物を覚えているだろうか。フェリアは王都で流行の生地を頼んでいたのだ。ビンズは不思議に思いながらも配達をした。その後、発覚された女官長の仕打ちによってフェリアが服を作ろうとしていることを知ったビンズは、ドレスを準備すると言ったのだが、フェリアは断った。フェリアにとって服作りは趣味である。ご令嬢がハンカチに刺繍する感覚と一緒であった。 若無其事地告知的菲莉亞,一邊哼著歌一邊著手下個作業。是縫製自己的衣服。在這裡兩個半月,菲莉亞製作了五件左右的衣服及內衣。與從卡羅迪亞帶來的衣服配合成了八件左右。是記起在第二天的黃昏賓茲送達的行李嗎。菲莉亞拜託了在王都流行的布料。賓茲儘管覺得不可思議也派送了。那之後,經由被發現的女官長的行為知道了菲莉亞打算製作衣服的賓茲,雖然說了要準備禮服,但菲莉亞拒絕了。對菲莉亞來說做衣服是興趣。與千金小姐在手帕上刺繡的感覺一樣。
ゾッドは、ティーテーブルに生地を広げ楽しそうに裁縫に勤しむフェリアを見つめる。他の騎士も一緒である。 佐多凝視著在茶几上攤開布料愉快似地努力縫製的菲莉亞。其他的騎士也在一起。
「王様のお越しがないのに、何とも……」「明明國王陛下不會蒞臨,實在是……」
ぽつりと呟いた騎士は、眉が下がり肩が落ちている。朝の一時の交流は、女官長の妨害によって流れた。三ヶ月に一度しかない唯一の交流が流れた妃の様には見えないフェリアに、騎士らは乾いた笑いを出すしかない。 嘟噥了一聲的騎士,低下眉毛垂著肩膀。早上的短暫交流,經由女官長的妨礙流會了。對看不出是只有三個月一次的唯一交流流會了的妃子的樣子的菲莉亞,騎士們只能發出乾笑。
「ああ、でもさ。フェリア様が良いなら良いんじゃねえか。俺ら本当にいいお妃様に着いたよな」「啊啊,不過呢。菲莉亞大人好的話不就好了嗎。我們真的是跟到了很好的王妃殿下呢」
「そう……だな。うん、そうだよな。最後までフェリア様と楽しく過ごそう。こんな風に飯を共にして、服も繕ってくれて、一緒に畑仕事するようなお妃様だもんな」「也是……呢。嗯,沒有錯呢。直到最後都會與菲莉亞大人快樂的度過吧。是像這樣一起吃飯、會修補衣服、一起從事農活般的王妃殿下呢」
ゾッドらは笑いあう。手に剣でなく鍬を持っている自分たちを互いに笑いあった。 佐多他們互相笑了。彼此互相笑著拿在手上的不是劍而是鋤頭的他們自己。
そんな昼間であった。 是那樣的白天。
夕刻はやってくる。王のお越しの日だということを、フェリアも騎士らも失念していた。もう来ないだろうと思っていたのだ…… 來到了黃昏。菲莉亞和騎士們都把名為國王蒞臨的日子給遺忘了。是認為已經不會來了吧……
***
ビンズは急ぎ足でフェリア邸に向かっている。王の来訪の先触れを告げるために。侍女もいないフェリア邸にそれを告げる者はいない。今朝は女官長が行ったようだが、その女官長の妨害でフェリア邸へマクロンは行けなかったらしい。女官長との女の戦いとやらは、ゾッドからは聞いている。三ヶ月前のマクロンであるなら、縁がなかったと邸には行かない判断を下したはずだ。しかし、マクロンは努力している。生涯の伴侶を選ぶために。王城に色んな理由で召し上げられた妃らに向き合うために。 賓茲快步朝向了菲莉亞宅。為了告知國王來訪的預先通知。在侍女也沒有的菲莉亞宅裡不存在告知那個的人。雖然今早女官長來了,但因那位女官長的妨礙馬庫隆似乎無法來菲莉亞宅。與女官長的女人戰爭似乎,從佐多那聽到了。若是三個月前的馬庫隆,應該會下達無緣了就不去宅院的判斷。可是,馬庫隆努力著。為了選擇生涯的伴侶。為了面對因各種理由被召集到王城的妃子們。
「フェリア様、急ぎお着替えください」「菲莉亞大人,請盡速更衣」
ビンズは夕食を作っているフェリアに駆け寄る。窯の前だ。フェリアは煤けていた。 賓茲朝正在做著晚飯的菲莉亞跑過去。是窯的前面。菲莉亞燻黑了。
「ふへ?」「呼嘿?」
「王様がお越しになります。急ぎ……湯殿とお着替えを」「國王陛下大駕光臨了。請盡速……沐浴更衣」
フェリアは思いっきり眉を寄せた。 菲莉亞竭力地皺起眉頭。
「嫌よ」「才不要」
そう答え、作業を続けている。 如此回答,繼續著作業。
「フェリア様」「菲莉亞大人」
「このままでいいわ。これが私だもの」「這樣就可以了喔。這才是我」
ビンズはフェリアを嗜めようとしたが、フェリアはそれを許さない。ふんわり焼けたパンを窯から取り出したフェリアは、煤けた顔で最高の笑顔をビンズに向けた。 賓茲雖打算讓菲莉亞理解,但菲莉亞不允許那個。將鬆軟烤麵包從窯裡拿出來的菲莉亞,用燻黑的臉將最棒的笑臉朝向賓茲。
「綺麗なお姫様や、ご令嬢様は見飽きているでしょ。飾るのは、髪につけたリボンだけ。ドレスも着ず貧乏くじのお妃様の方が王様には楽しくってよ」「漂亮的名媛或、千金小姐是會看膩的對吧。裝飾只有帶在頭髮上的緞帶。禮服也不穿的下下籤王妃殿下在國王陛下看來會很有趣吧」
ビンズも担当騎士らは固まった。やはり、規格外のお妃様だと。加えて思う。やっぱり、侍女が必要であったのだと。自分たちでは、このお妃様を強引に着替えさせられないのだからと。 賓茲和擔當騎士們都僵住了。果然,是規格外的王妃殿下。超出所想。果然,侍女是有其必要的。因為他們自己,是無法強迫讓這位王妃殿下換衣服的。