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第一部士兵的女兒 閒話 磅蛋糕的試吃會

作者:SPT草包│2018-01-01 13:54:17│贊助:4│人氣:170
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 閑話 カトルカールの試食会
第一部士兵的女兒 閒話 磅蛋糕的試吃會
原文連結

 俺はベンノ。
 我是班諾。
 ギルベルタ商会のオーナーをしている。29歳、独身だ。
 正做著基魯貝路塔商會的所有者。29歲、單身。

 街に店を構えている者の中でも一定以上の税を納めることができる大店のオーナーばかりが集められた会議の最後に、ギルド長であるくそじじいが出席者全員の顔を見回して口を開いた。
 在被聚集了盡是即便是在城市裡建構了店鋪的人裡面也能繳納一定以上賦稅的大店鋪的所有者的會議的最後,身為公會長的臭老頭環視著出席者全員的臉開口了。

「議題は以上かな? では、大会議室で新しく売り出す予定のお菓子の試食会を開催している。時間があれば立ち寄ってくれ。連れている従者の分も用意してあると言っていたぞ」
「議題就這些了嗎? 那麼,在大會議室裡舉辦了新的預定出售的點心的試吃會。有時間的話就順便過去。有說跟隨來的隨從的份也有準備喔」

 くそじじいの言葉に俺は立ち上がって、大会議室を目指す。
 我因臭老頭的話語站了起來,目標大會議事。
 この会議に出席しているのは大店のオーナーばかりだ。高価なお菓子を購入するだけの金と商品を見る目を持った商人がきっちり揃っていると言える。
 出席了這個會議的盡是大店鋪的所有者。可以說屬於能購買昂貴點心的錢與帶著看商品眼神的商人準確地備齊了。
 ギルド長の家や店で試食会を開催されても、わざわざ足を運ぶかどうかわからないが、会議の後で部屋を移動する程度なら足を伸ばすだろう。日程と開催場所の設定は腹が立つほどうまい。注目されること間違いなしだ。
 就算在公會長的家或店鋪被舉辦了試吃會,也不明白是不是要特意移步,但如果是在會議之後移動房間的程度是會伸出腳的吧。日程與舉辦場所的設定是讓人生氣般的巧。被關注是毫無疑問的。

 マインが情報を流して作られたお菓子のカトルカール。
 瑪茵流出情報而被做成點心的磅蛋糕。
 そのうえ、マインがポロッと漏らした言葉で、くそじじいの孫娘がやる気になったという試食会。
 並且,名為以瑪茵說漏嘴的話語、成為臭老頭的孫女的幹勁的試吃會。

 本当に、あの阿呆は次から次へと! 市場を揺るがすような物を持ってきやがって! マインがあまり注目されないように骨を折っているこっちの苦労も知らずに、あの考え無しが!
 真是的,那個笨蛋一次又一次! 帶來了能動搖市場般的東西! 瑪茵絲毫不知道為了不太被關注而辛勞著的這邊的艱苦,沒那樣想過嗎!

 自分の店の目玉商品となるものは、普通独占したいので、今まではこんな風に売りだし前の商品を周知することなどなかった。
 成為自己店鋪的熱門商品的東西,普通都會想要獨佔,至今不會像這樣讓賣出之前的商品眾所周知之類。
 売りだし前の商品を周知することで、最初の考案者が誰なのか印象付けることができる。他の者にすぐには真似できないものならば効果的だ。
 由於讓賣出之前的商品眾所周知,就能做到加深最初的設計者是誰呢的印象。若是其他人無法馬上模仿的東西的話更有效果。

 腹の立つことに、砂糖はまだそれほどの量が流通しているわけではない。この街で中央から流れてくる砂糖を扱っているのはギルド長の店くらいだ。中央からの流行に乗って、甘味を探している貴族階級には強い訴えかけとなるだろう。
 真是一肚子火,砂糖還算不上那麼大量在流通著。在這座城市裡能處理從中央流過來的砂糖的是公會長的店舖那樣的。搭上來自中央的流行,對尋找著甜味的貴族階級是會變成強大的自訴吧。
 そして、この試食会を開くことで、ギルド長ばかりではなく、孫娘の手腕が注目されるに違いない。あの孫娘の金に関する嗅覚はじじい譲りだ。
 而且,召開這個試吃會,並不是只有公會長,孫女的手腕肯定會被關注。那個孫女的有關錢的嗅覺是老頭傳授的。

「カトルカールの試食会にようこそ。気に入ったカトルカールを選んで、箱の中にこの木札を入れてください」
「歡迎來到磅蛋糕的試吃會。請選擇中意的棒蛋糕,在箱子裡面放入這個木牌」

 大会議室に入ったところで、頭を同じ布で覆った少年少女が数人並んでいて、入って来た客に小さな木札を3つずつ渡していた。
 在進入大會議室的地方,用同樣的布覆蓋頭部的少年少女數個人排列著,對進來的客人交付著各三個小木牌。

「一番気に入った物に3つ入れても良いし、3種類選んでもらってもいいです」
「三個都放進最中意的東西裡也可以,選擇了3種也可以」

 俺は渡された木札を手の平に握りながら、ぐるりと部屋を見回す。会議室の中を歩き回る者が同じ布を頭に付けているので、開催側の人間をすぐに識別することができた。
 我一邊將被交付的木牌握在手掌中,環顧了房間一圈。由於來回走動於會議室中的人都將同樣的布戴在頭上,馬上就能識別是舉辦方的人。
 まだ客は少なく、お互いの様子を探り合っているようで、カトルカールに手を伸ばしている者はいない。
 客人還沒多少,似乎在互相試探彼此的情況,沒有向磅蛋糕伸手的人。

「これがカトルカールか」
「這就是磅蛋糕嗎」

 机が5列も並んでいて、それぞれの列ごとに種類の違うカトルカールが並べられているのが見える。一口サイズに切り分けられたカトルカールだが、俺の予想と違って種類が多かった。
 桌子上排列著5列,看到各個行列上被排列著種類不同的磅蛋糕。雖然是被分切成一口尺寸的磅蛋糕,但跟我的預想不一樣種類很多。

「あ、ベンノさんだ!」
「啊,是班諾先生!」
「旦那様」
「老爺」

 大きく手を振ってやってくるのは元凶のマインとウチの見習いであるルッツだ。ルッツはウチの見習い服を着ているが、マインは試食会を開催している者と同じ格好をしている。
 大大地揮著手的是元凶的瑪茵與身為我家實習的路茲。雖然路茲正穿著我家的實習服,但瑪茵正做出跟舉辦著試吃會的人一樣的模樣。
 おう、と軽く手を上げて二人を手招きして、俺は寄ってきたマインの頭をガシッとつかんだ。
 輕輕地舉起手招來兩人,我用力抓住靠近過來的瑪茵的頭。

「マイン、お前はここで何をしているんだ?」
「瑪茵,妳在這裡做什麼呀?」
「いたたっ! お手伝いですよ?」
「好痛! 在幫忙唷?」

 この恰好を見てわかりません? と首を傾げたマインの頭を覆っている布をグイッと剥ぎ取る。
 用力摘下覆蓋在 看到這個模樣還不明白嗎?那樣歪著頭的瑪茵的頭上的布。

「今すぐ着替えろ。これから入ってくる商人達にお前の姿を印象付けるな。何のために俺が紙を作り、髪飾りを作ったお前の存在を隠していると思っているんだ? こっちの店でも矢面に立つか? 派手に宣伝してやろうか?」
「立刻換衣服。別對之後進來的商人們加深妳身姿的印象。有想過我是為了什麼將又是製作紙張、又是製作髮飾的妳隱藏起來嗎? 是要在這邊的店鋪樹立箭靶嗎? 是要華麗地宣傳嗎?」
「ぅあぅ……。すぐに着替えてきます。ルッツ、ここにいてね」
「哇……。馬上去換衣服。路茲,待在這裡唷」

 俺が剥ぎ取った布を返すと、マインは早足で大会議場を出ていく。それを見て、俺は軽く息を吐いた。
 我返還摘下的布後,瑪茵快步從大會議場出去了。看到那個,我輕輕地吐了一口氣。
 マインは洗礼式を終えたばかりの子供とは思えないくらい頭の回転が異様に速く、何に関しても呑みこみが良い。普通では知らないはずの知識がある。
 不認為瑪茵是剛結束洗禮式的小孩子般頭腦迴轉異常快速、有關什麼都能理解是很好。普通來說是有著應該不知道的知識。
 それなのに、周りが見えていなくて考えが浅い。子供ならば当たり前なのかもしれないが、他が突出している分、考えの浅さと危機感のなさが目立つ。
 儘管如此,看不到周圍思考很淺薄。雖然如果是小孩子的話是理所當然也說不定,但有著其他突出的部份,淺薄的思考與沒有危機感很顯眼。

 なるべくマインは目立たない方が良い。後ろ盾がない子供が目立っても、碌な結果にはならない。父親が死んで、成人したばかりの自分が店を継いだ時でさえ、若輩者と侮られ、数々の苦い思いをしたのだから、洗礼式を終えたばかりの子供なんて食い物にされるだけだ。
 瑪茵盡量不顯眼會比較好。沒有後盾的小孩子就算顯眼,也不會有像樣的結果。因為連在父親死了、剛成年的自己繼承了店鋪的時候,也被年輕人侮辱、有著許多痛苦的想法,剛結束洗禮式的小孩子什麼的只是被當作食物。

「旦那様は……マインには厳しいんですね」
「老爺……對瑪茵很嚴厲呢」
「ルッツ、マインを守る気があるなら覚えておけ。商人としての後ろ盾もなければ、神殿で後見してくれる貴族も決まっていないマインは宙ぶらりんで非常に危うい存在なんだ」
「路茲,如果有想要保護瑪茵就要先記住。沒有作為商人的後盾的話,在神殿給予輔佐的貴族也沒有決定的瑪茵是懸空著的非常危險的存在呀」

 延命のことを考えても、これから先の貴族との繋がりを考えても、現時点では神殿に入った方がマインのためではある。だが、これから先、数年後も同じ状況が続くとは思えないのが頭の痛いところだ。
 就算考慮延命的事情,就算考慮予今後的貴族的聯繫,在此刻進入神殿是為了瑪茵。但是,不認為今後、數年後也是同樣的狀況持續著的是頭痛的地方。

「え? でも、旦那様が後見なんじゃ……?」
「咦? 但是,老爺不是輔佐嗎……?」
「一応表面的にはマイン工房の責任者をしている関係で、俺が保護者扱いになるが、その関係は薄い。せめて、お前と同じ見習いにできれば、もっとやりようがあったが、すでに神殿入りを決めてしまった以上、俺の手が届く範囲はそう広くない。今までと違って、お前の目も届きにくくなるんだ。変な目立ち方はしない方が良い」
「姑且表面上是作為瑪茵工坊的負責人的關係,我成了承擔起的保護者,但那個關係很淡薄。至少,能是跟你一樣的實習的話,有能做得更多,但既然已經決定進入神殿後,我的手能到達的範圍沒那麼廣。跟至今不一樣,你的視線也會變得難以到達。不要做出奇怪的顯眼會比較好」
「そっか。そうですね」
「對喔。沒錯呢」
「それでなくても、アレは何を考えているのかわからなくて、ちょっと目を離すといきなり妙な事をしでかすんだ。厳しく管理するくらいでちょうどいい」
「就算不是那樣,那個是不知道在考慮著什麼,稍微離開目光後就突然幹出了怪異的事情呀。嚴加管理才剛剛好」
「あ~、それは確かに」
「啊~,那個確實是」

 ルッツは神妙な顔で頷いた。その仕草がマルクに似ていて、フッと小さな笑いが漏れる。
 路茲用欽佩的表情點點頭。那個動作與馬爾克相似,洩露出呼地小小笑聲。
 洗礼式を終えたルッツは、見習い仕事につき始めてから、言葉遣いが急速に改められ始め、姿勢や仕草がマルクに似てきた。マインがマルクをお手本にしろと言ったことが理由らしい。
 結束洗禮式的路茲,因為開始關於實習的工作,遣詞用字開始急速地被改變,姿勢或動作跟馬爾克相似起來。瑪茵說過以馬爾克為範本似乎就是理由。
 商人の子供と違って、生活の全てに違いがあるルッツは商人としては足りないところが多い。他の見習いとの差を何とか埋めようとルッツはいつも必死だ。じっとマルクや俺を見ては、少しでも多くのものを盗もうとしているのがよくわかる。
 與商人的小孩不同,對生活的一切有著不同的路茲作為商人不足的地方很多。想辦法填補與其他實習的差距的路茲總是很拚命。盯著馬爾克或我看,打算偷學多少東西是很能明白的。
 ルッツの向上心の強さを俺は結構気に入っている。
 我相當中意路茲向上心的強大。

「ルッツ、お前はこのカトルカールをどう思う? 商品としてだ」
「路茲,你對這個磅蛋糕是怎麼想的? 作為商品」
「……貴族にも間違いなく売れると思います。多分すごく歓迎される」
「……我認為對貴族毫無疑問能暢銷。大概會被非常歡迎」
「根拠は? お前は貴族が何を好むか、普段どういうものを食べているか知らないだろう?」
「根據是? 你是不知道貴族喜歡什麼呢、平時吃著怎樣的東西呢對吧?」

 俺が突っ込んで質問したけれど、ルッツは特に悩んだ様子もなく、答えを出した。
 雖然我深入提問,但路茲也沒特別煩惱的樣子,給出了答案。

「えーと、ギルド長は貴族街に入ることになるフリーダのために、生活の全てにできるだけ貴族のものを取り入れているって、マインから聞きました。料理人も貴族の家で働いていた人を引きぬいてきたらしいです。だから、フリーダやその料理人が自信を持って売ろうとするなら、売れると思います」
「呃,公會長為了變得要進入貴族街的芙莉妲,在生活的一切上盡可能採用了貴族的東西,從瑪茵那聽到過。廚師也似乎是將在貴族家工作的人拉攏過來。所以,如果芙莉妲或那個廚師擁有自信打算賣,我認為會暢銷」
「ふぅん、そうか」
「哼,是嗎」

 ギルド長の家のことについて、俺はあまり知らなかった。ギルド長が家に金をかけているのは知っていたが、生活にできるだけ貴族のものを取り入れているとは知らなかった。思わぬ情報に軽く目を見張る。子供同士の繋がりから来る情報も侮れないようだ。
 關於公會長家的事情,我不太清楚。雖然知道公會長在家裡花了錢,但不知道在生活上盡可能採用了貴族的東西。對意外的情報輕輕瞪大了眼睛。從小孩同夥的聯繫而來的情報似乎也不能輕視。

「ただいま、ルッツ」
「我回來了,路茲」
「あ、マイン」
「啊,瑪茵」

 ウチの見習い服に着替えたマインが戻ってくる。これで、俺がマインとルッツを連れていてもそれほど不思議ではないだろう。
 替換上我家的實習服的瑪茵回來了。就這樣,我就算帶著瑪茵與路茲也不會那麼不可思議了吧。

「旦那様、これが何も入っていないカトルカールなんです。オレが初めて食べたのはこれでした」
「老爺,這個是什麼都沒加進去的磅蛋糕。我第一次吃的就是這個」

 ルッツが一番右端のカトルカールを指差してそう言った。以前に食べた味を思い出しているのか、今にもよだれを垂らさんばかりの顔をして、ルッツは期待に満ちた目で切り分けられたカトルカールを見ている。
 路茲用手指著最右邊的磅蛋糕那樣說。是回想起以前吃過的味道嗎,現在也做出幾乎要滴下口水的表情,路茲用滿是期待的眼神看著被分切的磅蛋糕。

「イルゼさんは研究熱心だからね、あの時よりすごくおいしくなってるよ。このテーブルはフェリジーネ入り。そこのテーブルは蜂蜜が混ざってるやつで、あっちは胡桃入り。向こうは最新作のお茶の葉入りなんです。さぁ、食べてみてください」
「因為依露潔女士很熱心研究呢,變得比那個時候還要美味了唷。這個桌子加入了翡里吉涅。那裡的桌子混合了蜂蜜,那邊是加入了胡桃。面對的是加入了茶葉的最新作。好了,請試吃看看」

 まるで自分の手柄のように胸を張って説明するマインが何となく面白くなくて、フンと軽く鼻を鳴らしながら見下ろした。
 簡直像是自己的功勞般挺起胸膛做說明的瑪茵總覺得很無趣,一邊哼地輕輕鳴響鼻子依菸俯視起來。

「この種類の多さはお前がボロボロ情報を零した結果じゃないのか?」
「這個種類的繁多不就是你撲簌撲簌地洩露了情報的結果嗎?」
「うっ……。さ、砂糖と引き換えだから、無駄に零したわけじゃないもん」
「嗚……。因、因為有跟砂糖交換,才沒有白白地洩露」

 こいつはどうやら情報と引き換えにちゃっかりと自分用の砂糖を手に入れていたらしい。商人らしくなったと褒めてやるべきか、あっちに有利な情報を回すなと拳骨をくれてやるべきか悩むところだ。
 這傢伙看來似乎跟情報交換而得到了不吃虧地自己用的砂糖。是該誇獎變得像商人了嗎,還是該對別對那邊轉送有利情報並給予拳頭嗎而煩惱的事情。

「それに、わたしが教えたのは、このフェリジーネとお茶の葉だけですよ。それだって、配分は全部イルゼさんが研究した成果だから、わたしだけが原因ってわけでもないんです」
「而且,我教過的,只有這個翡里吉涅與茶葉唷。即便如此,因為配方全部是依露潔女士研究的成果,也並非都是我的原因」

 ぷーんとマインが俺から視線を逸らす。そして、テーブルの上に並べられたカトルカールに手を伸ばした。
 瑪茵鼓著臉別開了來自我的視線。然後對被排列在桌子上的磅蛋糕伸出了手。

「ベンノさんも食べてみてください。おいしいですよ」
「班諾先生也請試吃看看。很好吃唷」

 ひょいっと口に入れて味わうマインを見て、ルッツもテーブルの上に手を伸ばす。周囲で驚きの声が上がっているので、おいしいことは間違いないだろう。俺もカトルカールを口に入れた。
 看到輕輕放入口中品嚐的瑪茵,路茲也伸手向桌子上面。由於在周圍發出了驚訝的聲音,很好吃是毫無疑問的對吧。我也將磅蛋糕放入口中。

 何だ、これは!?
 什麼呀,這個!?

 指で摘まんだ時から分かっていたが、ふわりとしていて、口の中でほろほろと溶けていくような柔らかさだ。見た目はパンのように見えたが、パンはこんなに柔らかくない。スープにつけて食べるのが基本だ。
 雖然從用手指抓著的時候就明白了,但卻是作為鬆軟、在口中逐漸崩若瓦解般的柔軟。外觀看起來就像麵包,但麵包卻沒有這般柔軟。搭配湯來吃是基本。
 そして、今までに食べたことがない甘みに、驚愕する。甘くて味がしっかりしているが、蜂蜜漬けを食べた時のような凝縮された甘みでもなく、果物を食べる時の甘みとも全く違う優しい甘さが口全体に広がっていく。甘さとバターの混ざった匂いも食欲を刺激してもっと食べたいと思わせるものだった。
 而且,對至今沒吃過的甜,驚愕著。甜味很緊實,並非是吃了醃製蜂蜜時那樣的被凝縮的甜,跟吃水果的時候的甜也完全不一樣的溫柔的甜逐漸擴散於全口中。我認為是甜與奶油混合的味道刺激了食慾而更想要吃的東西。

「おいしいですか?」
「好吃嗎?」

 褒め言葉を期待しているのか、金色の目を輝かせてマインが見上げてくる。素直に褒めるのは何だか癪で、マインを無視して俺はフェリジーネ入りのカトルカールに手を伸ばした。
 是期待著稱讚的話語嗎,閃耀著金色眼神的瑪茵仰望著。坦率地稱讚總覺得令人生氣,我無視了瑪茵將手伸向加入翡里吉涅的磅蛋糕。
 ふんわりとした柔らかさはそのままにフェリジーネの香りが口の中に広がった。爽やかな甘みで、食べやすい。ちょっと香りと味が付いただけでずいぶんと印象が変わる。すいっと視線を上げて、他の机に並んだカトルカールを見た。
 作為輕柔的柔軟就那樣菲裡吉涅的香味在口中擴散。因清爽的甜,而很容易吃。只是稍微加上香味與味道印象就相當變化了。無聲抬起視線,看了排在其他桌上的磅蛋糕。

「イルゼさん、すごいでしょ?」
「依露潔女士,很厲害對吧?」

 余所の料理人を絶賛するマインを避けて、テーブルを移動すると、蜂蜜が混ざっているカトルカールを口に入れた。
 避開稱讚別處的廚師的瑪茵,移動到桌子邊後,將混合了蜂蜜的磅蛋糕放入口中。
 今までのカトルカールとは違って、少し生地が重い感じで、べったりとした甘みが増した。慣れた甘みだし、今まで食べた中では一番甘さが強く感じられるので、子供や甘いことに重点を置くものには一番受けが良いだろう。
 跟至今的磅蛋糕不一樣,麵團稍微沉重的感覺,作為黏糊的甜增加了。是習慣的甜,由於能強烈感覺到是至今吃到的裡面最甜的,小孩子或將重點擺放在甜的東西上的人是最可以能接受的吧。

「甘いけど、それほどくどくないでしょ?」
「雖然很甜,但沒那麼油膩對吧?」

 次は胡桃入りだ。胡桃入りのパンに似ていて、一番見慣れている見た目だった。しかし、食感は普段食べているパンとは全く違う。生地が柔らかすぎて、胡桃の固さが浮いて感じられた。柔らかい生地がすぐに口の中から消えていき、胡桃だけが口に残る。慣れれば、この歯ごたえが良いのかもしれないが、俺はあまり好きではない。
 下個是加了胡桃的。很像是加入胡桃的麵包,是最看得上眼的外觀。但是,口感跟平時吃著的麵包完全不一樣。麵團太過柔軟,能感覺胡桃的硬浮現了。柔軟的麵團馬上從口中消失了。只有胡桃殘留在口中。習慣的話,這個咬勁很好也說不定,但我不太喜歡。

「ねぇ、ベンノさん。答えてくださいよ」
「喂,班諾先生。請回答唷」
「黙れ。うるさい」
「閉嘴。吵死了」

 俺の側をぐるぐる回りながら、ぴーぴーうるさいマインを黙らせると最後の机に向かう。
 讓一邊在我旁邊轉來轉去、一邊喧嘩吵鬧的瑪茵閉嘴後朝向最後的桌子。
 お茶の葉入りというところで一瞬躊躇したが、口に入れてみると非常に香りが高かった。胡桃と違って中に入っている葉が完全にすり潰されていて、口当たりも全く気にならない。確かにお茶の味がするけれど、甘いお菓子で、不思議な感じだ。甘みが強いわけでもないのにおいしい。この中で一番男性受けはすると思った。少なくとも、俺は一番気に入った。
 雖然在所謂加入了茶葉的點上一瞬間躊躇了。但試著放入口中後香味非常的高。加入裡面的葉子跟胡桃不一樣是被完全磨碎了,入口也完全沒感覺。雖然的確有茶的味道,但以甜的點心來說,是不可思議的感覺。明明並沒那麼強烈的甜卻很好吃。我認為在這裡面會最受男性接受。至少,我最中意。

「ベンノさんはどれに木札入れますか?」
「班諾先生要在哪個放入木牌呢?」

 ここに並べられたカトルカールは、どれもこれもぎょっとするほど美味だった。これは間違いなく貴族階級に広がるだろう。誰もが欲しがる味だ。追従を許さないほど、今までのお菓子とは差がある。
 被排列在這裡的磅蛋糕,無論哪一個都是大吃一驚般的美味。這個毫無疑問會擴散於貴族階級的吧。是誰都想要的味道。無法允許模仿般,跟至今的點心有著差距。

「おい、マイン」
「喂,瑪茵」
「何ですか?」
「怎麼了嗎?」
「どうしてこんなレシピをギルド長に渡した?」
「為什麼將這種食譜交給了公會長?」

 貴族社会に切り込むためには、大きな武器になるだろうレシピだ。俺が欲しかった。
 為了切進貴族社會,是能成為大武器的食譜。我很想要。
 マインを睨むと、マインは目を瞬きながらこてんと首を傾げる。
 瞪著瑪茵後,瑪茵一邊眨了眨眼一邊歪頭不解。

「渡したのはイルゼさんですけど……」
「雖然交給的是依露潔女士……」
「あのくそじじいの店で売られるなら、一緒だ」
「如果被在那個臭老頭的店裡賣,我也一起」

 カトルカールであのくそ爺はまた貴族への影響力を強めるに違いない。俺の苛立ちに気付いたらしいマインが困ったように眉を寄せた。
 那個臭老頭肯定會因為磅蛋糕再次加強對貴族的影響力。似乎發現了我的焦躁的瑪茵困擾似地皺起眉頭。

「ベンノさんって、ギルド長に対してすごく態度良くないですよね? どうしてですか?」
「是說班諾先生,對待公會長非常態度不好呢? 是怎麼了嗎?」

 そういえば、マインには話したことがなかったな、と思いつつ、思い返すのも不愉快な過去のあれこれが頭をよぎる。
 這麼說來,沒對瑪茵說過呢,一面那樣想,一面回想起不愉快的過去種種掠過腦袋。

「成長中のウチの店はずっと目の敵にされていたんだが、あのくそじじい、父が死んだ直後に母を後添えにして店を吸収しようとしやがった」
「雖然成長中的我家店鋪一直被當作眼中釘,但那個臭老頭,父親死了不久後打算將母親當作續絃吸收店鋪」

 商売のために叔父の店へと向かった父は、金目当ての盗賊に襲われて死んだ。街の近くでの犯行だったため、遺体だけは帰ってきたが、傷だらけの惨い状態で、母はしばらく寝込んだ。
 為了生意而朝向叔父的店的父親,被看上錢的盜賊襲擊而死了。是在城市附近的罪行的緣故,雖然只有遺體回來了,因盡是傷痕的淒慘狀態,母親暫時臥床了。
 そんな傷心の母に嬉々として話を持ってきたのが、あのくそじじいだ。
 對那樣傷心的母親帶來了戲謔話題的,是那個臭老頭。

「へ? そ、それはギルド長の後添えってことですか?」
「哎? 是、是那個公會長的續弦的事嗎?」
「あぁ。母が断ったら、一つ一つは小さい嫌がらせをこれでもかとしてきて……これは今でも続いているな。ギルドで申請してもなかなか通らなかったり、難癖をつけられたりするだろう?」
「啊。母親拒絕的話,即便如此也會做出一個一個小小的刁難……這個至今也在持續呢。又是就算在公會申請也相當不容易通過,又是被加上缺點對吧?」
「あぁ~……」
「啊~……」

 何度か巻き添えを食らっているマインとルッツは顔をしかめた。俺だけではなく、俺の周りにも迷惑を撒き散らすくそじじいなのだ。
 吃下了好幾次被牽連的瑪茵與路茲皺起了臉。是個並非只有我,也對我周遭散佈了麻煩的臭老頭。

「恋人が死んだ直後に満面の笑顔で自分の娘を斡旋してきたり、成人前の妹達に俺より年上の息子を宛がおうとしたりするような相手に、お前は態度良くできるのか?」
「戀人死了不久後就用滿臉的笑容介紹起了自己的女兒,對於打算將比我年紀大的兒子分配給成人前的妹妹們的對象,妳態度能好嗎?」

 商売に関して言えば、とんでもない無理難題も色々あったが、マインを相手にそんな苦労自慢をしても意味がない。あのくそじじいが人としておかしいということだけ伝わればいい。
 若說有關生意的話,雖然不合常理的無理要求也有各式各樣,但以瑪茵為對象做出那種辛勞自誇也沒有意義。只要將所謂那個臭老頭作為人很奇怪的事情傳出去就好。

「……えーと、見ようによっては、ギルベルタ商会がすごく評価されてるってことですよね? ギルド長が強引で粘着質で面倒なのは否定しませんけど」
「……呃,根據看到的,是基魯貝路塔商會被非常嚴厲地評價了這件事呢? 公會長又強硬又纏人的厭煩無法否定就是了」

 苦しい逃げ方だが、マインも多少はギルド長の面倒さがわかっているらしい。
 雖然是痛苦的逃法,但瑪茵似乎也多少明白了公會長的厭煩。

「それで、何故そんな厄介なギルド長にレシピを渡した?」
「因此,為何將食譜交給了那樣棘手的公會長?」
「何故って言われても……前にも言った通り、フリーダとお菓子作りをする約束をしていたから一緒に作っただけなんですよ」
「就算被說了為何……就像之前說的,因為有跟芙莉妲做一起做點心的約定而只是一起做了唷」
「だが、契約したんだろう?」
「但是,契約了對吧?」
「一年だけの独占契約ですよ? そんなに目くじら立てるほどのものですか?」
「是只有一年的獨佔契約唷? 是要那麼樣吹毛求疵般的東西嗎?」

 期間を定めたというのはマインにしてはなかなかよく考えたと思うが、それが本当に守られるのかが不安だ。あの孫娘に丸めこまれてずるずると独占状態が続くのではないだろうか。
 雖然我認為所謂定了期間是作為瑪茵來說相當好好考慮了,但那個真的能被遵守嗎而不安。不會被那個孫女攏絡而拖拖拉拉地延續獨佔狀態嗎。

「……本当に一年後に公開するのか?」
「……真的一年後會公開嗎?」
「はい。お菓子なんて独占するものじゃないし、色んな人に作ってほしいですから」
「是的。點心之類的並不是能獨佔的東西,因為各種人都想要製作」

 マインは一年間の独占権でレシピを売ったと言っているが、砂糖が手に入らない以上、しばらくはギルド長の店での独占状態になるだろう。
 雖然瑪茵說了以一年間的獨佔權將食譜賣了,但砂糖無法獲得之下,暫時會變成在公會長的店舖的獨佔狀態吧。
 これ以上、差を付けられたくはないのに、また差が広がっていく気がする。
 明明沒有、被加上這以上的差距,但感覺到差距再次逐漸擴大。

「なぁ、マイン。お前、他にもレシピを知っていると言ったな? 他の物はウチに売る気はないか?」
「吶,瑪茵。妳,說過知道其他的食譜吧? 其他東西沒想在我家賣嗎?」
「……今のベンノさんには売っても意味がないですよ? ベンノさんには砂糖と料理人が足りないんです」
「……對現在的班諾先生來說就算賣了也沒意義唷? 以班諾先生來說砂糖跟廚師都不夠」

 マインがきょとんとした顔で首を傾げた。
 瑪茵用發楞的臉感到疑惑不解。

「どういう意味だ?」
「是什麼意思?」
「わたしが知っているお菓子のレシピはだいたい砂糖を使うんです。それに、一番大事なのは腕の良い料理人です。貴族の家で働いたことがあるくらいの腕の持ち主じゃなきゃ、わたしがレシピを教えたところですぐさま再現できないんですよ」
「我所知道的點心的食譜大致都要使用砂糖。而且,最重要的是手腕良好的廚師。若不是有在貴族的家裡工作般的手腕的擁有者,我就算告知了食譜也無法馬上再現唷」
「貴族の館……?」
「貴族的公館……?」
「オーブンが自在に使えることが必須条件なんです。パン工房以外にオーブンってないみたいだし、あまり普及してないんですよね?」
「烤箱能使用自如是必要條件。是說烤箱在麵包工坊以外好像沒有,不太能普及呢?」

 個人的にオーブンを持っているような家はほとんどない。よほどの金持ちで、食道楽でもなければ、そんなものは必要ないからだ。つまり、ギルド長の家にはオーブンがあり、それを自在に使える料理人がいるということだ。
 幾乎沒有擁有著個人烤箱般的家。因為以相當的有錢人來說,若不講究吃的話,那種東西是不必要的。也就是說,是所謂在公會長的家有烤箱,存在著能將那個使用自如的廚師。

「あら、ベンノさんが全てを揃える前に、わたくしがマインのレシピを全部買い取りますわ。ウチの料理人は新しいレシピに目がないんですもの」
「啊啦,在班諾先生備齊一切之前,我會將瑪茵的食譜全部買下喔。我家的廚師還沒把目光放在新的食譜上」

 クスクスと笑う幼い声に思わず振り返ると、春の花のような髪を両耳の上で結ったギルド長の孫娘がそこにいた。
 不假思索地對止不住地笑著的稚嫩聲音轉過頭去後,將春花般的頭髮綁在雙耳上的公會長的孫女就在那裡。

「ごきげんよう、ベンノさん。ごきげんよう、ルッツ」
「您好,班諾先生。您好,路茲」

 俺を見上げてくる挑戦的な目があのくそじじいとそっくりだ。くそじじいが消えたら、少しは勝算が出てくるかと思っていたが、この孫娘は侮れない。マインにあの手この手で近付く辺り、金に関する嗅覚はじじい並みだ。
 抬頭看向我過來的挑戰般的眼神跟那個臭老頭一模一樣。雖然認為臭老頭消失的話,稍微出現了勝算嗎,但這個孫女無法輕視。對瑪茵用那售法這手法地靠到附近,有關錢的嗅覺與老頭並列。
 こっちが警戒している対象だというのに、マインはへらっとした笑顔で軽く手を振って親しげに話しかける。仲が良さそうな様子に少なくない焦りを感じてしまう。
 明明是所謂這邊要警戒的對象,瑪茵卻用鬆懈的笑容輕輕揮著手親暱地搭話。對關係很好的那樣子感覺到了不少的焦慮。

「フリーダ。どう、試食会は?」
「芙莉妲。如何,試吃會?」
「マインのお陰で盛況ですわ。みんなカトルカールを褒めてくださるの。一年後にはレシピを公開すると言っているので、レシピの公開を心待ちにしている方も少なくないですわね」
「托瑪茵的福喔。大家稱讚著磅蛋糕。由於說過在一年後會公開食譜,盼望著食譜的公開者不少呢」

 警戒心が足りないと何度言えばわかるんだ、この馬鹿者!
 警戒心不足要說幾次才明白呀,這個笨蛋!

 マインは何度となく俺にも騙されているが、不満そうに頬を膨らませる程度で済ませてしまう。どんな反応をするのか、きちんと気付けるのか、試しているこちらが心配になるくらい、警戒心がない。マインはきっと警戒心というものをどこかに落としてきたに違いない。
 雖然瑪茵有幾次被我騙過,但用不滿般的鼓起臉頰的程度就結束了。會做出怎樣的反應呢,會確實地注意到嗎,測試著的這邊變得擔心般,沒有警戒心。瑪茵肯定是將所謂警戒心的東西掉在哪裡了。
 それでも、傍から見て、同じ年くらいの少女が友達同士で楽しげに語らっているのを邪魔するような大人げない対応は取れない。言質を取られたり、変に絡まれたりしないように会話が聞こえる範囲でルッツと二人で睨みを効かせておくしかない。
 儘管如此,無法採取打擾從旁邊看、同年般的少女因朋友夥伴快樂地談著話般沒大人樣的應對。為了不做出取得諾言,或奇怪地糾纏而只能在聽得到對話的範圍內跟路茲兩個人事先盯場。

「なぁ、ルッツ。アイツはなんで命のかかった状況で騙されて、まだ笑顔で付き合いできるんだ?」
「吶,路茲。那家伙為什麼被以花上生命的狀態被騙了,還能用笑容應付呢?」
「……マインの考えることがオレにわかるはずがない。それに、オレはフリーダがあまり好きじゃないから」
「……瑪茵的思考我應該不知道。而且,因為我不太喜歡芙莉妲」

 マインに近付くな、とルッツの顔にはわかりやすく書いてある。緑の目に宿る独占欲は一番大事な友達に対するものなのか、すでに恋愛感情まで達しているのか、微妙なところだ。
 別靠近瑪茵,在路茲的臉上簡單易懂地寫著。在綠色的眼神裡寄宿著獨佔欲是對最重要的朋友的東西嗎,馬上就到達戀愛感情了嗎,微妙的地方呀。
 それでも、マインに対して過保護なルッツを見ていると、もう何年も前に恋人の死と共に置いてきた甘酸っぱい感情を思い出して、何ともくすぐったいようなむず痒いような気分になる。
 儘管如此,看著對瑪茵過份保護的路茲後,回想起了已經在幾年前與戀人的死一起放置的酸甜感情,實在是變成了難為情般搔癢般的心情。

「これから先も苦労しそうだな、ルッツ」
「今後似乎也會很操勞呢,路茲」
「へ?」
「哎?」
「マインを捕まえておくのは簡単じゃないってことだ」
「事先捕獲瑪茵不是件簡單的事情」

 ぐしゃぐしゃと頭を撫で回しながら、ルッツをそんな言葉で激励すると、ルッツは緑の目に強い光をきらめかせて、ゆっくりと頷いた。
 一邊來回撫摸腦袋,一邊以那樣的話語激勵路茲後,路茲讓強光在綠色的眼神裡閃耀,慢慢地點著頭。

「マイン、味はどうだい?」
「瑪茵,味道如何?」

 そう言いながら、ずいぶんと親しげな様子で恰幅の良い女性がマインと孫娘に近付いてきた。全身から甘い香りを放っていて、頭には試食会関係者が付けている布を付けている。
 體格很好的女性一邊那樣說,一邊以相當親暱的樣子向瑪茵與孫女靠了過去。從全身上釋放甘甜香喂,在頭上戴著賦予了試吃會關係者的布。
 誰だ? と俺とルッツが警戒するのにも構わず、マインはパァッと表情を綻ばせて、駆け寄っていった。
 明明是誰? 般我跟路茲警戒著也不在意,瑪茵迅速綻放了表情,跑了過去。

「もちろん、すごくおいしいですよ。さっき食べたけど、お茶のカトルカールもすごくおいしくなってました。さすがイルゼさん」
「當然,非常好吃唷。雖然剛才吃了,但茶的磅蛋糕也變得非常好吃。不愧是依露潔女士」
「そうかい」
「是嗎」

 マインに褒められて、相好を崩しているこの女性が、どうやらギルド長の家で働く料理人で、このカトルカールを作った人物らしい。
 被瑪茵稱讚,笑顏逐開著的這個女性,看來是在公會長家工作的廚師,似乎是製做這個磅蛋糕的人物。
 商人としての性で、莫大な金を生み出すことになるだろう料理人のイルゼを観察していると、イルゼの方も俺に視線を向けてきた。
 因做為商人的特性,觀察著變得能產生出莫大金錢吧的廚師依露潔後,依露潔那邊也將視線轉向了我。

「そっちがベンノさんかい?」
「那邊是班諾先生嗎?」
「あぁ、そうだが?」
「啊,是沒錯?」

 ギルド長の料理人に名指しで声をかけられる意味がわからない。マインがまた何かしでかしたのだろうか。眉を寄せる俺を、イルゼが上から下まで見る。
 不明白被公會長的廚師指名道姓地打招呼的意義。是瑪茵又做了什麼了嗎。依露潔從上到下看著,皺起眉頭的我。

「……ふぅん」
「……哼」

 その相手を見定めるような目はギルド長と似ているようで、俺は思わず目を細めた。孫娘を相手に本気を出すのは大人げないと思って、無意識にセーブしていたが、相手が大人ならば、遠慮はいらないだろう。
 看準那的對象般的眼神似乎跟公會長很像,我不假思索地瞇起眼睛。我認為以孫女為對象認真起來是很沒大人樣的,就無意識地保留著,但對象如果是大人的話,就不用客氣了吧。

「マインの知識を縛り付けて独占しているのはアンタなんだろ?」
「綁住瑪茵的知識獨佔著的是你對吧?」
「はぁ? 別に独占などしていないが? 現にカトルカールのレシピがそちらに流れているだろう?」
「啥? 沒特別獨佔之類的吧? 實際上磅蛋糕的食譜流到了那邊了吧?」

 できる物なら独占しておきたいが、マインはおとなしく独占させてくれない。縛り付けてと言うが、ポロッと零した程度の情報で市場がひっくり返るのだから、マインの知識は小出しにするくらいでちょうどいい。
 如果是能做到的東西想要先獨佔,但瑪茵不會老實地讓我獨佔。雖然說綁住,但因為用灑落般程度的情報推翻了市場,瑪茵的知識一點一點拿出來剛剛好。

「だいたい、マインに関する面倒事は全部こっちが引き受けているのに、おいしいところだけを掻っ攫っていくのはそっちだろう?」
「大致上,明明有關瑪茵的麻煩事全部是這邊在承擔,只有將好吃的地方橫刀奪愛的是那邊吧?」

 マイン自身を守るために色々なところから情報を集めたり、ルッツとの繋がりを強固にするために契約魔術を使ったり、マインの存在を隠すために植物紙協会を設立したり、他にも色々と裏で暗躍している。考え無しのマインに苦労させられているのは、ギルド長ではなく、俺だ。
 為了保護瑪茵自身而從各種地方收集情報,為了堅固與路茲的聯繫而使用了契約魔術,為了隱藏瑪茵的存在而設立植物紙協會,其他也有各種在背地裡暗中活動著。為毫無考慮的瑪茵操勞著的,不是公會長,而是我。

「ベンノさんには結構ぼったくられていると思いますけど?」
「雖然我認為相當被班諾先生敲詐了?」

 むぅと唇を尖らせているマインの額を、俺はピシッと指で弾いた。
 對著唔地嘟起嘴唇的瑪茵的額頭,我噼地用手指彈了。

「俺がマインからリンシャンでぼったくった金なんて、2回の契約魔術で飛んでいったぞ?」
「我從瑪茵那用凜香敲詐來的錢,以2回的契約魔術飛掉了喔?」
「え?」
「咦?」
「……契約魔術を2回ですって?」
「……是2回契約魔術嗎?」

 マインと孫娘がぽかーんと口を開けて、同じ表情で俺を見上げてくる。間抜け面を見下ろして肩を竦めた。
 瑪茵與孫女呆呆地張開了口,用同樣的表情抬頭看著我。俯視著笨蛋臉聳了聳肩。

「ったく、人の苦労も知らず……」
「真是,不知人的辛勞……」
「アンタの苦労はどうでもいい。マインは再現できそうだと認めた相手にしかレシピを渡さないって言ってたからね。他の物はともかく、料理のレシピはアタシがもらうよ」
「你的辛勞怎樣都好。因為瑪茵說了不會將食譜交給不認為能再現的對象呢。其他東西姑且不提,料理的食譜是我獲得的唷」

 料理人にまで宣戦布告された。どうやらあのくそじじいの関係者と俺はことごとく対立関係になるらしい。
 就連廚師都被宣戰布告了。看來那個臭老頭的關係者跟我似乎全都變成了對立關係。

「誰が渡すか」
「交給誰嗎」

 いつまでもカトルカールをギルド長に独占させてたまるか。独占契約が切れる一年以内に砂糖を手に入れて、腕の良い料理人を探してやる。砂糖に関しては少し疎遠になっている親戚筋をたどっていけば、多少の無茶で何とかなるはずだ。
 我會讓磅蛋糕永遠地被公會長獨佔住嗎。在獨佔契約截斷的一年以內將砂糖到手,去尋找手腕不錯的廚師。有關砂糖沿著變得有點疏遠的親戚方面的話,多少換來應該也能想辦法做到。
 頭の中で目まぐるしく計算しながらイルゼと睨みあっていると、マインが不安そうな顔でちょいちょいと俺の袖を引っ張った。
 在腦袋裡面一邊目不暇給地計算著一邊瞪著依露潔後,瑪茵用不安般的表情不時地拉了拉我的袖子。

「ベンノさん、ベンノさん。料理人を探すのって、すごく大変なんですよ? 貴族に頼める伝手がなかったら無理ですよ」
「班諾先生,班諾先生。要說尋找廚師,是非常困難的唷? 沒有請求貴族的門路的話就不行唷」
「伝手なんか必要じゃない。必要なのは向上心とオーブンの扱いなんだろ?」
「門路之類的不需要。需要的是上進心與烤箱的操作吧?」

 貴族の館で働けるくらいの腕が必要で、オーブンの扱いに慣れればいい。絶対に貴族の館で働いたことがなければならないわけではない。
 由於需要在貴族的公館工作般的手腕,習慣烤箱的操作就好。並非絕對必須要在貴族的公工作。

「マイン、本がなければ自分で作ればいいとお前は言ったな? だったら、料理人がいなかったら?」
「瑪茵,妳說過沒有書的話自己做就好? 這樣的話,沒有廚師的話?」
「……自分で育てればいいんじゃない?」
「……不是自己培育就好嗎?」
「そういうことだ」
「就是這麼回事」

 設備を整え、この街で腕の良い料理人を探して、お菓子だけに特化させた料理人を育てればいい。
 整理設備,在這座城市尋找手腕良好的廚師,培育只有對點心專門的廚師就好。

「……やってやろうじゃねぇか」
「……這不就是說做就做嗎」

======================================================================
 ベンノさんの新たな挑戦が今始まる……そんな感じ。
 班諾先生的新挑戰現在開始……那種感覺。
 マインが知らないところでベンノさんは頑張ってくれてます。
 在瑪茵不知道的地方班諾先生努力著。

 次回は張り切るベンノさんを補助するマルクさんです。
 下回是輔助幹勁十足的班諾先生的瑪爾克先生。
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