創作內容

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第一部士兵的女兒 與商人的會晤

作者:SPT草包│2017-01-02 07:09:57│贊助:2│人氣:108
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 商人との会合
第一部士兵的女兒 與商人的會晤
原文連結

 ルッツが嫌な顔をしても全身洗って、付け焼き刃にせよ、面接の心得を教えておいて正解だった。
 就算路茲擺著一副討厭的表情清洗著全身,也不過是臨時抱佛腳唷,事先傳授面試的心得是正解啊。
 オットーもその友人も、中央広場を行き交う人達の中で上等な部類に入るようなきちんとした身なりをしている。やはり、わたし達は晴れ着でも着てきた方がよかったようだ。
 不論歐拓或那個友人,在往來於中央廣場的人們之中也是能歸類於上等那類般乾淨俐落。果然,我們也穿盛裝過來就好了。

 デザインは変……いや、わたしにはちょっと見慣れないデザインの服だけれど、使う布が多くなるドレープが多くて、汚れや継ぎ接ぎが全く見当たらない服は、布も糸もできるだけ節約するのが当然だというわたしの生活圏内では滅多に見られないものだった。
 設計很奇……不,雖然在我看來是有點陌生的設計的衣服,但造成使用布料很多的摺邊很多,髒污或補丁完全找不到的衣服,在所謂布跟線都盡可能節省是當然的我們的生活圈內是很少見的東西啊。
 服装から察するに、オットーの友人はかなり儲けている人だと思う。服装、物腰、眼光、どれもが、わたしが見たことがある市場の商人とは全く違う。
 從服裝上推測,我想歐拓的友人是相當會賺錢的人。服裝、舉止、眼光、不論哪個,跟我見過的市場的商人完全不一樣。

 儲けている商人とは言っても、どっしり構えた老舗の社長ではなく、どんどん伸し上がっているベンチャー企業の社長に通じる迫力があった。一見、ミルクティーのような淡い色の癖毛に優しげな容貌をしているのに、赤褐色の瞳が自信に溢れていて、ギラギラしていて、肉食獣のような獰猛さを感じさせるのだ。
 就算說是很賺錢的商人,也不是架構沉穩的老店的社長,而是有著精通不斷往上爬著的冒險企業的社長的魄力。乍看,明明在奶茶般淡色的捲髮上有著溫和的容貌,但紅褐色的眼眸充滿著自信,閃閃發光著,讓人感受到像是肉食動物般的兇猛。

「やぁ、マイン。そっちがルッツで間違いないか?」
「呀,瑪茵。那邊是路茲沒錯吧?」
「おはようございます、オットーさん。わたしの友人のルッツです。今日はお時間頂いてありがとうございます」
「早安,歐拓先生。這是我的友人路茲。今天撥空前來真的非常感謝。」

 どう挨拶をするのが適当かわからなかったので、いつもどおり胸を二回叩いて敬礼しておく。オットーも同じように返してくれたので、大きく間違ってはいなかったと思う。
 由於不知道該怎麼打招呼才適當,就先跟平常一樣敲胸兩次敬禮。因為歐拓也一樣回應了,我認為沒有搞出大烏龍來。

「はじめまして、ルッツです。よろしくお願いします」
「初次見面,我是路茲。請多多指教」

 ルッツも緊張しているようだが、二人の眼光や見下ろしてくる威圧感に負けず、どもることもなく、声が震えることもなく、慣れない挨拶ができた。
 雖然路茲好像也很緊張,但不會輸給兩個人的目光或俯視的威壓感,沒有口吃,聲音也沒有顫抖,做到了不習慣的招呼。
 第一関門はクリアだ。
 第一關搞定了。

「ベンノ、俺の助手をしてくれているマイン、班長の娘さんだ。マイン、こちらはベンノ。俺が旅商人だった頃の知り合いだ」
「班諾,這是做著我的助手的瑪茵,是班長的女兒。瑪茵,這邊這位是班諾。我還是旅行商人時的熟人」
「はじめまして、マインです。どうぞよろしくお願いします」
「初次見面,我是瑪茵。還請多多指教」

 頭を下げる習慣のないここで、頭を下げないように気をつけて、とりあえず笑顔だけは忘れずに挨拶する。
 在沒有點頭習慣的這哩,要注意不要點頭了,總之只有笑容不可忘了打著招呼。

「これは、ご丁寧に。ベンノといいます。どうぞよしなに。……小さいのにずいぶんしっかりと躾をされたお嬢さんだな」
「這還,真有禮貌。我叫班諾。請多指教。……明明很小卻被充分好好地教育的小姑娘呢」
「見た目ほど子供じゃない。6歳だ」
「並不是看起來般的小孩子。6歲了」

 おそらく3~4歳に見えているだろうわたしについて、オットーがベンノに言い添えた。
 恐怕是關於對看起來像3~4歲的我,歐拓對班諾補充著。
 ベンノは、少しばかり眉を寄せた後、面白がるようにオットーを見て、唇の端を上げる。
 班諾,微微皺眉後,看著似乎很有趣的歐拓,揚起了唇邊。

「……まだ洗礼前の子供が助手か?」
「……還未洗禮前的小孩子是助手?」
「あぁ、いや、そうだな。助手になれるように、俺が読み書きを教えているところだ」
「啊、不,也是呢。是為了能成為助手,而我正在教導著讀寫」
「お前の言い方なら、既に助手として活躍していそうだけどな?」
「如果照你的說法,甚至已經是作為助手而活躍著了呢」
「……余計なことは言うなよ」
「……不要多嘴喔」

 言葉の端々から情報を読みとる二人のやりとりに背筋が冷たくなる。わたしとルッツでこの人達を納得させるような面接ができるだろうか。
 對兩人從談話的細節中讀取情報的交換而變成背脊發涼。能做到像是讓這些人們理解到我跟路茲的面試嗎
 何だろう。洗礼前の子供だからといって、容赦なんて全くしてくれない気がひしひしとしている。
 是為什麼呢。能深刻感受到是說因為是洗禮前的小孩子,所以完全不可原諒什麼的。

 ベンノが怪訝そうに、わたしの視線の高さよりやや上をじっと見つめながら、口を開いた。
 班諾詫異似的,一邊目不轉睛地凝視著比我視線的高度還稍微上面,一邊開口了。

「ものすごく気になるから、先に聞きたいんだが、いいか?」
「因為真的非常在意,所以想先問一下,可以嗎?」
「はい、何でしょう?」
「可以,是什麼呢?」
「その頭に刺さってる棒は何だ?」
「被刺在那頭上的棒子是什麼?」

 なるほど。不合格出したり、出されたりした後で、他愛ない質問ってしにくいですよね?
 原來如此。在給出不合格、或被給出之後,要提瑣碎的提問是很困難的呢?
 もしかして、不合格にする気満々ですか?
 難道,是滿滿不合格的感覺嗎?

 愛想笑いを張り付けたまま、ベンノの一挙手一投足に注意して少しでも多くの情報を得ようと凝視しながら、わたしはするりと簪を外して、ベンノに差し出した。
 依然貼著假笑,一邊為了得到盡可能多的情報而注意著班諾的一舉手一投足並凝視著,我一邊滑順地抽出髮簪,遞出給班諾。

「これは『簪』です。髪をまとめるためのものなんです」
「這個是『髮簪』。就是為了打理頭髮的東西」

 オットーも気になっていたのか、ベンノと一緒にしげしげと簪を調べる。上下にしたり、裏返してみたり、じろじろを見ている。
 歐拓也很在意嗎,跟班諾一起不斷頻繁地調查著髮簪。又是上下看看,又是翻過來看,打量著。

 ただの棒だよ? 種も仕掛けもないよ?
 只不過是根棒子唷? 沒有任何機關唷?

「……ただの棒だな」
「……只不過根棒子呢」
「えぇ、父が作ってくれた、木を削っただけの棒です」
「是,父親給做的,只是削切木頭的棒子」
「これだけで、髪をまとめられるのか」
「就只是這樣,就能打理頭髮了嗎」
「はい」
「是的」

 返してもらった簪で、いつも通りの髪型にする。
 用還回來的髮簪,弄成平時那種髮型。
 ハーフアップにする分の髪をすくって、簪にねじって巻き付けて、ぐるりと回転させて、グイッと差し込んで固定する。毎日しているので、手慣れたものだ。
 梳著提起一半份量的頭髮,扭轉纏繞到髮簪上,轉圈似地轉動著,用力地插進去固定。因為每天都在做,所以是熟練的東西了。

「ほほぉ……。すごいな」
「嚄嚄……。很厲害呢」

 髪を結うところは初めて見せたので、ルッツもオットーも目を丸くして、わたしの髪を見ている。
 因為是第一次展示綁頭髮的方式,路茲跟歐拓都嚇到目瞪口呆,看著我的頭髮。
 ベンノがわたしの髪を触って、眉を寄せた。
 班諾觸碰我的頭髮,皺著眉頭。

「なぁ、嬢ちゃん。この髪もすごいな。一体何をつけているんだ?」
「吶,小姑娘。這個頭髮也很厲害呢。到底是用了些什麼啊?」

 わたしの髪を品定めするように触る指の丁寧さと違って、向けられる眼光は息を呑むほど鋭い。
 跟像是評價著我的頭髮而觸碰的手指的謹慎不一樣,被朝向的目光如同喘不過氣般的銳利。
 価値を見出してギラつくベンノの目と、洗礼式のおばさま方の食いつき具合からも、簡易ちゃんリンシャンには結構商品価値があると見た。
 發現價值而閃著光的班諾的眼睛與,洗禮式的大嬸咬住的狀況也是,看來簡易潤洗劑相當有商品價值。

「わりとありふれた物の組み合わせですが、詳しくは秘密です」
「是意外常見的東西所組合的,但詳細是秘密」
「坊主も同じ物つけているのか?」
「小夥子也用了同樣的東西嗎?」
「昨日マインが綺麗にしろって、付けてくれたから……」
「昨天瑪茵用乾淨的,因為是被用的……」

 あ、ベンノさん。今、軽く舌打ちしましたね?
 啊,班諾先生。現在,輕輕咋舌了呢?
 子供だから簡単に教えてもらえるかもしれない、と甘く見てましたね?
 因為是小孩子搞不好會簡單地教授,而被小看了呢?
 残念でした。
 非常可惜。
 まだルッツとの面談が始まっていないのに、こんな前哨戦で利用価値のありそうな手札は切れません。
 明明跟路茲的面試還沒開始,在這樣的前哨戰才不會打出有利用價值那般的手牌。

 ニッコリと引きつった笑顔の応酬をわたしがベンノと繰り広げていると、オットーが軽く溜息を吐いて、髪をぐしゃっと掻き上げた。
 我跟班諾展開了微笑地痙攣笑容的回敬時,歐拓輕輕地嘆了一口氣,用力地把頭髮抓搔上去。

「それで、ルッツが旅商人になりたいということだったか?」
「那麼,是說路茲想成為旅行商人嗎?」

 本題が来た。
 正題來了。
 ルッツが隣でゴクリと息を呑んだのが聞こえた。
 聽得見路茲在旁邊咕嚕地嚥下呼吸。
 応援する気持ちが伝わればいい、とわたしはルッツの手をこっそり握って力を入れる。
 可以傳達加油的心情就好了那樣,我偷偷地握著路茲的手用力。

 昨日から頑張って考えたんだよね?
 從昨天開始就努力思考著的吧?
 さぁ、今こそ踏ん張りどころだ。志望動機を並べて、合格を勝ち取れ!
 來吧,現在就是要堅持下去的關頭。羅列志願動機,贏得合格!

「あ、はい。オレ……」
「啊,是。我……」
「止めとけ」
「放棄吧」
「え?」
「咦?」

 志望動機を口に出す前に止められた。
 在志願動機說出口前就被制止了。
 せっかく考えてきたんだから聞いてあげて、と心の中で叫んでいると、オットーは苦虫を噛み潰したような顔で、ルッツを見下ろした。
 因為是好不容易考慮出來的好歹聽一下那樣,在心中叫喊著時,歐拓用著一副苦瓜臉,俯視著路茲。

「市民権を手放すのは馬鹿のすることだ」
「放手市民權是笨蛋才會做的事情啊」
「……オットーさん、市民権って、何ですか?」
「……歐拓先生,那個市民權,是什麼啊?」

 ついつい、疑問が声になって口から飛び出した。
 不由自主,疑問化作了聲音從口中飛了出去。
 そんな言葉、初めて聞いた。市民権というくらいだから、この街に住む人の権利だということはわかる。
 那樣的話是,第一次聽到。因為說是市民權之類的,所以知道是所謂在這座城市裡居住的人的權利那種事。
 けれど、日本国憲法で保障された権利を勉強するまで知らずに享受していたように、わたしはここの街に住む住人が当たり前に持っているらしい権利というものが、一体どんなものか知らない。
 但是,就像直到學到了被日本憲法保障的權利之前毫無知覺地享受著,我似乎是居住在這座城市的居民而理所當然地持有著所謂權利的東西嗎,不明白到底是怎樣的東西。

「この街に住むことができる権利だ。同時に身元を証明するものでもある。7歳の洗礼式で神殿に街の人間として登録され、仕事につくにも、結婚するにも、家を借りるにも市民権のある者とない者では対応が変わってくる。余所者が神殿に登録してもらって、市民権を得て、街に定住しようと思ったら、とんでもない金がかかるんだ」
「是能居住在這座城市的權利。同時也是有能證明身分的東西。在7歲的洗禮式上作為城市的人被登錄到神殿哩,從事工作也好、結婚也好、租任房屋也好對有市民權者跟沒有者的應對也有所改變。想想外地人要登錄到神殿、獲得市民權、定居在城市的話,要花費多麼不合裡的金錢啊」
「オットーさんも、お金、払ったんですか?」
「歐拓先生也,付了,那筆錢嗎?」
「あぁ、そうだ」
「啊,是呢」

 当時を思い出したのか、苦い顔でオットーさんが頷いた。
 是回想起了當時嗎,歐拓用苦澀的表情點頭。
 ベンノが隣で苦笑しながら、オットーを指差した。
 班諾在旁邊一邊苦笑,一邊用手指著歐拓。

「こいつはコリンナと結婚するために、全財産をはたいたんだ」
「這傢伙為了跟柯琳娜結婚,散盡了所有財產」
「できれば、店を持ってここで商売したかったが、俺の金じゃあ市民権を得るだけで精一杯だったんだよ」
「可以的話,想要在這裡擁有店鋪做買賣,但我的錢只是獲得市民權就耗竭了喔」

 旅商人が貯めたお金が一体どれだけあったのか知らないが、市民権に、結婚資金に、開店資金では、いくらあっても足りない気がする。
 旅行商人所存的錢到底是有多少我不知道,但在市民權、結婚資金、開店資金上,感覺就算有多少都不夠。

「それに、街の暮らしと旅の暮らしは全く違う。なぁ、ルッツ。生活のほとんどを馬車の上で過ごすっていうのが、いったいどんなものかわかるか?」
「而且,城市的生活跟旅行的生活是完全不一樣的。吶、路茲。所謂在馬車上度過生活的大部分,到底是怎樣的東西你知道嗎?」
「……いえ」
「……不知道」

 ふるりとルッツが首を振った。
 路茲左右搖地搖著頭。
 街を端から端まで歩いても二時間ほどなのだから、街の子供の移動方法は基本的に全て徒歩だ。荷車ならともかく、馬車に乗ったことさえないだろうルッツに馬車での旅なんてわかるはずがない。
 因為就算把城市從一端走到另一端也不過兩個小時左右,城市的小孩子的移動方法基本上全部是徒步的。如果是板車姑且不論,連馬車都沒搭乘過的路茲要用馬車旅行什麼的應該是不會知道的。

「例えば、水。お前は必要になったらどうする?」
「譬如說,水。你變得需要的話要怎麼辦?」
「井戸から汲む」
「從水井打水」
「そうだよな? でも、旅の間は決まった井戸なんかない。まず水場を探すところから始まるんだ」
「是那樣呢? 但是,旅行期間經常沒有什麼水井。首先要從尋找水源地開始呀」
「川なら……」
「如果是河川……」

 森に行った時に利用している川が水場としてルッツの頭にはすぐに浮かんだようだ。
 對去森林時利用過河川作為水源地好像馬上浮現於路茲的腦中。
 しかし、旅をするうえで常に川の側を移動するわけがない。そして、紙が高価で手に入らないのに、地図を持っている旅商人が一体どれくらいいるだろうか。
 但是,不可能在旅行上經常移動在河川的一邊。然後,紙張因昂貴而得不到的說,擁有地圖的旅行商人到底會有多少呢。

「旅商人として初めて外に出た時は、多分、その川もどこにあるかわからないんだよ、ルッツ。ずっと川に沿って移動するわけじゃないだろうし……」
「作為旅行商人初次外出的時候,大概,連那條河川會在哪裡也不知道的喔,路茲。是不可能一直沿著河川移動的……」
「マインちゃんの言う通りだ。だから、大体同じルートをたどって商売をする。年を重ねるごとに知人が増え、情報をやり取りして、使える水場や安全な道がわかってくる。それを子供に教えて、子供はそのルートを継いでいく。狭い馬車の中での生活に他人が入れる余地はないんだ。……そして、一番重要なのが、旅商人の行く末だ。旅商人が望む物が何か、お前はわかるか?」
「就像小瑪茵說的。所以,大致上是行經同樣的路線做著買賣。經年累月地增加熟人、交換著情報、明白了能用的水源地或安全的道路。將那些告訴給小孩子,小孩子繼續繼承那條路線。在狹窄的馬車中的生活,沒有他人加入的餘地啊。……然後,最重要的是,旅行商人的將來。旅行商人所期望的東西是什麼呢,你知道嗎?」
「……」
「……」
「市民権だよ」
「是市民權喔」
「え!?」
「哎!?」
「厳しい旅の生活を止めて、いつかは街で暮らしたい。街で店を持って安全に商売がしたい。そのために金を貯めたい。それが旅商人の夢だ。すでに市民権を持っているお前が旅商人に受け入れられることはない。どうしてもやりたいなら自分で始めるしかない。旅商人には見習いなんて制度はないんだ」
「想著中止嚴苛的旅行生活,總有一天能在城市裡生活。想在城市擁有店鋪安全地做著買賣。想要為了那個而存錢。那個是旅行商人的夢想啊。已經擁有著市民權的你是不可能被旅行商人所接受的。如果無論如何都想做就只能靠自己開始了。旅行商人是沒有實習之類的制度的」

 市民権が旅商人の夢なら、オットーはすでに夢を叶えたことになる。
 如果市民權是旅行商人的夢想,歐拓已經實現夢想了。
 本当はこの街で店を持ちたかったらしいけれど、商人が兵士になった理由がわからない。
 雖然似乎真的想在這座城市裡擁有店鋪,但不知道商人成為士兵的理由。

「どうして、オットーさんは兵士になろうと思ったんですか?」
「歐拓先生怎麼會,想到要成為士兵呢?」
「待て、聞……んぐっ!」
「等下,會聽……嗯咕!」

 何か言いかけたベンノの口を押さえて、オットーさんが堂々ときっぱりと言い切った。
 壓住了才要開口的班諾的嘴巴,歐拓先生堂堂斷然地說著。

「コリンナと結婚するためだ」
「是為了跟柯琳娜結婚」
「く、詳しく聞きたいですっ!」
「想、想聽詳細情況!」
「俺は聞きたくないぞ、嬢ちゃん」
「我可不想聽喔,小姑娘」

 ベンノが慌てたように止めたが、オットーは目を輝かせて語り始めた。
 班諾慌張似地制止,但歐拓眼神閃閃發光開始說了。

「そう、あれは、俺が成人して間もない頃だった。この街に来た時に、コリンナに一目惚れしたんだ。心臓を貫かれたというか、天啓がひらめいたというか、とにかく、コリンナしか見えなかった。結婚するなら彼女しかいない、そう思って、即座に口説いた」
「沒錯,那個是,我還沒成人期間的時候。在來到這座城市的時候,對柯琳娜一見鍾情了。該說心臟被貫穿了嗎,還是該說天啟閃現了呢,總而言之,只能看見柯琳娜。如果要結婚就只有她了,那麼想著,立刻追求了。」
「……オットーさんって、意外と情熱的だったんですね」
「……是說歐拓先生,意外地熱情著的呢」

 爽やか柔和笑顔の裏で黒いことを考える計算高い元商人は、恋に突っ走る情熱家でもあったらしい。
 在清爽柔和的笑容背後思考著黑暗事情會算計的原商人,似乎是會對戀愛狂奔的熱情家。
 焦げ茶の髪に茶色の瞳というとても落ち着いた色彩で、誠実そうに見える外見からは、恋に情熱を注ぐ姿が想像できなかった。
 因為對深褐色頭髮來說的茶色瞳孔是非常鎮靜的色彩,從外觀看來似乎很誠實,無法想像對戀情傾注熱情的身影。

「それだけコリンナが魅力的だっただけだ。まぁ、果敢にアタックしたが、最初は断られたな。彼女は腕の良い有名な針子で、仕事をするうえで地縁は大事にしたい。旅を続ける生活なんてできない、と言ったんだ」
「只不過就那樣的柯琳娜是富有魅力的。反正,就果斷地進攻了,最初是被拒絕的呢。因為她是本領優秀的有名女裁縫,想說在從事工作上地緣是很重要的。不可能過著繼續旅行的生活什麼的,那樣說著」

 あぁ、確かにお得意さんって大事だし、腕が良いってことはある程度満足するくらいは稼げていたのだろうし、安定した生活捨てて、不安定な旅生活はできないよね。
 啊,確實常客是很重要的,要說本領優秀是能滿足某種程度左右來賺取金錢的吧,是不可能捨棄穩定的生活,去過不穩定的旅行生活的呢。
 それに、コリンナさんからすれば、いきなり口説きに来た旅商人って、結構胡散臭い相手じゃない? 騙されてるかもしれないって思ったんじゃないかな?
 而且,從柯琳娜小姐來說的話,是突然來追求的旅行商人,不是相當可疑的對象嗎? 會想說是不是被騙了也說不定呢?

 ほぅほぅと頷きながら聞いているうちに、オットーの恋物語はどんどん加速し、加熱していく。声に力が入り始めて、手振り身振りが大きくなり始めた。
 在嚄嚄地一邊點頭一邊聽著的時候,歐拓的戀愛物語不斷加速、加熱的起來。開始在聲音裡加入力量,比手畫腳開始變大。

「コリンナに結婚はこの街の男とするつもりだ、と言われた時は雷が落ちたと思ったほどに衝撃を受けた。俺はコリンナが他の男と結婚するなんて考えられなくて、どうすればいいか必死で考えた結果、その足で神殿に行って、市民権を得た」
「打算跟柯琳娜結婚作為這座城市的男人,那樣說的時候受到了我認為是落雷般的衝擊。我不敢去思考柯琳娜跟其他的男人結婚什麼的,死命地考慮該怎麼做才好呢的結果,就順勢去了神殿,得到了是民權」
「え? ちょっと待ってください。恋心が暴走しすぎてませんか?」
「哎? 請稍微等一下。愛慕之心不會太過暴走了嗎?」

 この世界ではオットーの行動が普通なのか、わからなくてベンノを見上げると、疲れきったような表情でこめかみを押さえていた。
 在這個世界歐拓的行動是普通的嗎,不明白地仰望班諾時,用疲憊不堪的表情按壓著太陽穴。

「……子供の嬢ちゃんでもそう思うよな? しかも、オットーがこの街の市民権につぎ込んだ金ってさ、親が市民権を得た街まで行って、開店資金にする予定だった金なんだぜ?」
「……就連小孩子的小姑娘也那麼想嗎? 而且,歐拓在這座城市的市民權上注入的錢是,去到父母得到市民權的城市,預定作為開店資金的錢啊?」
「えぇ!?」
「咦!?」

 親が市民権を得ている街なら、半額ほどで市民権を得られるから、残りを開店資金にするはずだったとベンノが言う。
 因為如果是父母得到市民權的城市,就能用半價得到市民權了,應該將剩下的做為開店資金的班諾那樣說著。
 厳しい旅商人の生活で溜めてきた大事な開店資金を、一目惚れにつぎ込んでしまうなんて、計算高い商人じゃなくて、恋する相手しか見えていないただの暴れ馬だ。
 將在嚴苛的旅行商人的生活上積存起來的重要的開店資金,注入到一見鍾情裡什麼的,才不是會算計的商人,而只不過是只能看見戀愛對象的野馬。

「この街に店を持ちたいが、店を持つには金がかかるし、融通してくれるだけの縁もその頃はまだなかった。商人を辞めて、この街に居続ける覚悟をコリンナに見せられる仕事が兵士だったから、この街に来るたびに仲良くしていた班長に頼みこんで、書類仕事を主にする兵士として雇ってもらったんだ。……そういえば、市民権を買って、兵士になって、プロポーズしたら、コリンナは驚いていたな」
「想在這座城市擁有店鋪,但擁有店鋪要花錢,只是給予通融的關係在那個時候也還沒有。因為對柯琳娜展現辭了商人、持續居住在這座城市的覺悟的工作就是士兵,所以就懇求每次來這座城市關係都很好的班長,作為主要從事文書工作的士兵來接受雇用。……這麼說來,購買市民權、成為士兵、再去求婚的話,柯琳娜會很吃驚的吧」

 いや、そりゃ、驚くでしょ。旅の生活はできないって断ったら、全財産はたいて市民権買って、兵士になったなんて聞いて、驚かない年頃のお嬢さんはいないと思う。
 不、那樣、是驚嚇吧。聽到說是不能過旅行生活而拒絕的話,就散盡全部財產購買市民權,成為士兵什麼的,我認為不會是不驚訝的年紀的大小姐。
 ちゃんと手綱握っておかなきゃ、って思ったのか、こんなにも私のことを想ってくれているなんて、ってキュンとしちゃったのか、コリンナさん視点の話が聞いてみたい。オットーさんとは全然違う話が聞けそうだ。
 必須要好好握住韁繩啊,是那樣想的嗎,還是這麼樣地想著我的事情什麼的,而心頭一緊嗎,想聽看看柯琳娜小姐視點的故事。似乎能聽到跟歐拓先生完全不同的故事。

「何日も口説き続けて、コリンナのところに婿入りって感じで結婚したんだ。もうしょうがない人って笑ったコリンナの可愛さと言ったら! それで、今は……」
「好幾天持續追求著,以入贅到柯琳娜那的感覺結婚。要說笑著說著夠了真拿你沒辦法的柯琳娜的可愛的話! 那是,現在……」

 そこからは自分の嫁がどれだけ可愛いか、延々と語り始めた。オットーの口は止まらない。商人として培った一流の営業力とプレゼン力を嫁自慢に使わないでほしい。
 從那開始是自己的新娘子有多麼可愛,沒完沒了地開始說著。歐拓的嘴巴停不下來。希望不要將作為商人所培養的一流的營業能力與演示能力使用在新娘子的自誇上。
 ルッツも立て板に水の嫁自慢に圧倒されて、ポカンとしている。
 路茲也被暢流無阻的新娘子自誇給壓倒,愣在原地。
 妻しか目に入らない愛妻家だとは聞いていたが、父が誇張しているのだと思っていた。けれど、誇張でも何でもなかったらしい。
 只有妻子能進入眼中的愛妻家是聽過的,但總認為是父親誇大了。但是,似乎誇張也算不上什麼了。

 どうしよう、オットーさんがこんな人だったなんて知らなかった。
 該怎麼辦,歐拓先生是這種人什麼的從不知道。

 助けを求めてベンノを見ると、目が合った瞬間、慣れているのか、軽く肩を竦めて、溜息を吐いた。
 看著班諾尋求班諾時,四目相交的瞬間,是習慣了嗎,輕輕地聳聳肩,嘆了一口氣。

「オットー、もう旅商人の話じゃねぇよ。嫁の話はそれくらいにして、本題に戻れ」
「歐拓,已經不是旅行商人的話題了喔。新娘子的話題就到那了,回歸正題」
「コホン! 悪い。そういうわけで、旅商人は諦めろ」
「咳喝! 不好意思。就是如此,旅行商人放棄吧」

 どういうわけだよ、とツッコミを入れたかったが、そこはグッと我慢する。
 就是怎樣啦,好想那樣吐槽,那裡還是使勁忍耐吧。
 かなり脱線したが、旅商人には見習い制度がないことと、旅商人になった時の苦労と、わたし達が持っている市民権の大事さと、恋に溺れる怖さはよくわかった。
 相當地出軌,但旅行商人沒有實習制度這事跟,成為旅行商人的時候的辛勞以及,我們所擁有的市民權的重要還有,沉溺於戀愛的恐怖都很明白了。

 諦めろ、とはっきり言われてしまったルッツは項垂れて、可哀想なほど落ち込んでいる。
 放棄吧,被那樣清楚說白的路茲垂下頭,可憐兮兮地低落著。
 せっかく志望動機も考えてきたのに、発言する前に無理だと言われて、旅商人の厳しさと嫁自慢を叩きこまれては、落ち込むのも仕方ない。
 明明好不容易思考出了志願動機,卻在發言之前就被說了不可能,被灌輸了旅行商人的嚴峻跟新娘子自誇,低落也是沒按法的。

「……ルッツ、これはマインからの提案だが、旅商人ではなく、商人見習いになればどうだ? 買い付けで街を出るくらいなら、できるようになる」
「……路茲,這是來自瑪茵的提案,不是旅行商人,而是成為實習商人的話如何? 如果是為了採購而離開城市,變得能做到喔」
「マイン!?」
「瑪茵!?」

 バッと顔を上げて、ルッツがわたしを見た。
 猛然抬起頭,路茲看著我。
 怒りに燃える緑の目が「旅商人になれないって、知っていたのか?」と雄弁に語っている。
 燃燒著憤怒的綠色眼神雄辯地說著「不能成為旅行商人,妳是知道的嗎?」。

「ちゃんと旅商人の話を聞いた方がルッツのためだと思ったの。同じ街で過ごしてきたわたしの言葉より、素直に聞けるでしょ?」
「我認為好好聽聽旅行商人的話是為了路茲好。比起在同座城市度過的我的話,更能坦率地聽著對吧?」
「……あ」
「……啊」

 ルッツは図星だというような表情で、バツが悪そうに視線を逸らす。
 路茲用正中靶心似的表情,尷尬地錯開了視線。

「オットーさんに話を聞いた時、旅商人は難しそうだと思ったから、できれば、親に反対されず、お仕事で街の外に出られる機会がないかな、って考えたんだよ。それに、わたしも今まで知らなかったけど、市民権を手放してまで旅商人になるのは止めた方がいいと思う」
「因為跟歐拓先生打聽談話的時候,認為旅行商人好像很困難,所以可以的話,有沒有能不被父母反對,又有因工作而出去到城市的外面的機會呢,這樣考慮著的唷。而且,雖然我至今都不知道,但只有放手市民權去成為旅行商人我想最好還是放棄」
「……そうだな」
「……也是呢」

 オットーの話を聞いて、やはり、考えることはあったのだろう。外からやって来た人たちの土産話を聞くのと、現実の生活を聞くのでは全く違ったはずだ。
 聽著歐拓的話,果然,是有在考慮的吧。聽著從外面過來的人們的旅行見聞與,聽著現實的生活應該是完全不一樣的。

「オットーさんはこの街の商人さんとも繋がりがあるって、父さんから聞いたから、ルッツにやる気があるなら紹介してもらえないかなって、相談しただけ。断るのはルッツの自由だよ?」
「因為歐拓先生也是跟這座城市的商人先生有所聯繫的,從爸爸那聽到了,如果路茲有幹勁要不要請他介紹呢,只是商量一下。拒絕是路茲的自由唷」
「……そっか。色々考えてくれたんだな」
「……是嗎。幫我做了各種考慮呢」

 ハァ、と息を吐いたルッツが顔を上げて、ベンノを見上げた。
 哈、地呼了一口氣的路茲抬起頭,仰望著班諾。
 わたしも顔を上げて、ベンノを見つめる。商人見習いになりたいなら、乗り越えなければならない相手はオットーではなく、ベンノだ。
 我也抬起頭,凝視著班諾。如果想成為實習商人,必須要越過的對手不是歐拓,而是班諾。

「で、俺が紹介されたわけだけど……お前、商人になりたいのか?」
「是說,雖然是被介紹給我……你,想成為商人嗎?」
「はい」
「是的」

 ルッツが頷くと、ベンノがすぅっと赤褐色の目を細めた。
 路茲點頭時,班諾迅速地瞇起了紅褐色的眼睛。
 オットーの嫁自慢を聞いていた時のような緩い雰囲気はもう微塵もない。屈服させる相手を見つけた肉食獣のような酷薄な目でルッツを見下ろす。
 在聽著歐拓的新娘子自誇時那樣緩和的氛圍已經一點不剩了。用發現能屈服的對象的肉食動物般的苛薄眼神俯視著路茲。

「ふぅん。それで、何が売れる? 商人になって何を売りたいんだ?」
「嚄。那麼,你能賣什麼? 成為商人你想賣什麼?」
「え?」
「咦?」

 就職の面接に志望動機を聞くのは当たり前だが、ルッツが昨日考えてきたのは旅商人の志望理由だ。いきなり商人見習いの志望動機をひねり出せと言われても、そう簡単にできるものではない。
 在就業的面試上聽聞志願動機是理所當然的,路茲昨天思考的是旅行商人的志願裡由。就算說要突然想出實習商人的志願動機,也不是那麼簡單就能做到的東西。

「商人になって何がしたいか、やれるかを聞いてるんだよ」
「成為商人想要做什麼,能做到嗎我正聽著喔」
「それは……」
「那個……」

 ひぃぃ! 洗礼前の子供相手に圧迫面接ですよ!
 唏! 是對洗禮前的小孩子對象壓迫面試唷!

 そんな意地悪しないで、と言いたいが、商人にとっては見習いが一人増えるということは、出費が大きく増えるということだ。オットーの助手の友人という繋がりならば、損を覚悟で抱え込まなければならないような義理もない。
 不要那麼壞心眼,想那樣說,但作為商人來說實習是說增加了一個人,是所謂費用大大地增加的事情啊。如果聯繫起所謂歐拓的助手的友人的話,沒有必須要用覺悟去懷抱虧損般的人情。
 よほどの根性とか、やる気とか、売れそうな商品の情報とか、ベンノにとって利になるものがなければ、即刻切られても文句は言えない。むしろ、会ってもらえただけでも感謝しなければならない立場なのだ。
 是說相當有毅力,還是有幹勁呢,或者好像能賣的商品的情報,對班諾來說沒有能成為利益的東西的話,就算即刻被切斷也毫無怨言。不如說,即便只是來見個面就是必須要感謝的立場了。

「ないなら、話は終わりだ」
「如果沒有,談話就結束了」

 ベンノの言葉にルッツがわずかに俯いて唇を噛んだのがわかった。
 知道班諾的話讓路茲微微地低頭咬著嘴唇。
 今から言う言葉が助け船になるのか、しなくていい苦労への一歩になるのか、わたしにはわからない。選ぶのはルッツだ。
 現在起所說的話能成為救命稻草嗎,還是會成為邁向不做就好的辛勞的一步呢,我是不知道的。選擇的是路茲。
 わたしはルッツだけに聞こえるくらいの声で、こそっと小さく問いかけた。
 我用宛如只有路茲聽得到的聲音,偷偷地小小詢問著。

「……わたしの紙、ルッツが作る?」
「……我的紙,路茲來做嗎?」
「やる」
「要做」
「ぁん?」
「嗯?」

 ルッツがグッと顔を上げた。ぎゅっとわたしの手を握る手に力がこもる。その手が震えているけれど、ルッツは片眉を上げて獰猛な顔をしているベンノをキッと睨んだ。
 路茲使勁地抬起頭。緊緊地將我的手握住的手充滿了力量。雖然那隻手顫抖著,但路茲揚起一邊的眉毛猛然注視著有著兇猛表情的班諾。

「オレにだってやりたいことはちゃんとある! マインが考えたものは全部オレが作るんだ!」
「我也是好好地有著想要做的事情! 瑪茵所思考的東西全部由我來製做!」
「うん。ずっとそうしてきたもんね」
「嗯,一直是那樣做著的呢」
「マインはすぐに無茶するから、オレがやる」
「因為瑪茵馬上就會亂來,所以我來做」

 ルッツ、よく頑張ったね。ちゃんと言えたね。ベンノさんが目を丸くしてるよ。
 路茲,很努力了呢。好好地說了呢。班諾先生目瞪口呆了唷。

 わたしがルッツを巻き込んだのか、ルッツがわたしを巻き込んだのか、よくわからない結果になったけれど、ルッツがわたしにできないことを引きうけてくれるなら、ルッツにできないことはわたしが引き受ければいい。
 是我把路茲捲進來了呢,還是路茲把我捲進來了呢,雖然造成了不是很明白的結果,但如果路茲承擔起我做不到的事情,而路茲做不到的事情由我來承擔就好了。

 ルッツと違って、わたしは入試の面接も就職の面接も経験してるんだよ。
 跟路茲不同,我入學考試的面試跟就業的面試都經驗過了唷。

 わたしは、ベンノさんを見上げたまま、ニコリと笑顔を浮かべる。すぅっと息を吸って、ゆっくり吐いて、呼吸を整えてから、口を開いた。
 我,依然仰望著班諾先生,浮現微微地笑容。迅速地吸了一口氣,慢慢地吐出,調整呼吸之後,張開了口。

「動物の皮じゃない紙を作って売りたいと考えています。製作費が羊皮紙より安く抑えられるので、利益のでる売り物になると思います」
「我考慮著想要販售並不是動物的皮所製作的紙張。因為製作費用比羊皮紙還要便宜能掌控,我認為能成為有利益的商品」

 わたしの言葉にベンノが苦虫を噛み潰したような顔になる。ルッツに向けていたよりもずっと獰猛な光を宿す目で、唸るような低い声を出した。
 班諾對我的話語化成了吃了黃蓮的表情。用寄宿著比面對路茲時還兇猛得多的光芒的眼神,發出像是呻吟般低沉的聲音。

「……嬢ちゃんも商人志望か?」
「……小姑娘也是商人志願嗎?」
「はい。第二希望ですけど」
「是的。不過是第二希望」

 わたしが笑顔のまま頷くと、ベンノの隣にいたオットーが緩く首を傾げた。
 我依然笑臉點頭後,在班諾旁邊的歐拓緩緩歪頭不解。

「第一希望は門で書類仕事?」
「第一希望是在門的文書工作?」
「いえ、『司書』です」
「不是,是『圖書管理員』」

 わたしの言葉に三人が揃って怪訝そうな表情になる。やはり、言葉が通じなかったようだ。
 三個人一致因我的話化作了詫異般的表情。果然,話語好像沒能理解。

「……聞いたことないな」
「……沒聽過的事情呢」
「本がたくさんあるところで本を管理する仕事をしたいんです」
「是想在書本很多的地方從事管理書本的工作」

 司書の仕事を噛み砕いて説明すると、ベンノが吹き出して笑い始めた。
 將圖書管理員的工作詳細說明後,班諾禁不住開始笑了。

「ぶっ……ははは、それはお貴族様じゃないとできない仕事だ」
「噗……哈哈哈,那個是貴族大人才能做的工作啊」
「……やっぱりそうなんですか」
「……果然是那樣嗎」

 お貴族様め。
 又是貴族大人。

 本を持っているのが基本的に貴族なら、それを管理する司書も貴族だろうとは思っていた。何となく予想していたことだが、やっぱり身分差が腹立たしい。
 如果擁有書本的基本上是貴族,那麼我想管理著那些的圖書管理員也是貴族吧。總覺得是預料中的事情,但果然身分差距還是令人生氣。

「それにしても、羊皮紙じゃない紙、ねぇ……。現物はあるのか?」
「不過,不是羊皮紙的紙,我說……。有實物嗎?」

 ちらりとわたしを見る目に警戒が浮かんでいる。多分、ベンノの頭の中では、羊皮紙以外の紙が出てきた時の影響や利益がぐるぐるしているに違いない。
 對瞬間一撇看著我的眼神浮現了警戒。大概,在班諾的腦中,拿出羊皮紙以外的紙張時的影響或利益肯定正在打轉著。

「今はないです」
「現在沒有」
「話にならんな」
「那就無法對話了」

 話にならないと言っているが、興味を持っているのは間違いない。もう一言で落とし所に持っていけるだろう。
 說是無法對話,但毫無疑問擁有興趣。再一句話就擁有妥協點了吧。
 わたしは笑顔を深めた。
 我加深了笑容。

「現物があればいいなら、作ります。わたしたちの洗礼式は来年の夏だから、春までに紙の試作を作るので、それが使えるかどうかで、判断してください」
「如果有實物就可以的話,會做的。因為我們的洗禮式是明年的夏天,所以到春天為止是製做紙張的試做,那個能否使用,就請判斷了」
「……いいだろう」
「……也可以」

 不合格にするつもりだったベンノから猶予をもぎ取れたのだ。
 從打算要不合格的班諾那裡強取下了延期。
 これは立派な勝利だろう。
 這事非常華麗的勝利吧。

「ありがとうございます、ベンノさん」
「非常感謝,班諾先生」
「まだ決まったわけじゃない」
「還並不算決定了」
「それでも、挑戦できる機会をくれたわけですから」
「因為儘管如此,還是給了能挑戰的機會」

 あとはルッツが頑張るだけだ。自分の就職がかかっているのだから、必死でやってくれるだろう。
 之後路茲只能加油了。因為是為自己的就業而費心,所以會死命地去做吧。
 唐突に降って湧いた、紙が手に入りそうな状況に思わずにんまりしてしまう。
 對唐突地突然湧現、就要能得到紙張的狀況不由得滿足地笑了。

「ルッツ、頑張ろうね」
「路茲,加油吧」
「あぁ」
「啊」

 わたし達のやり取りをニヤニヤと笑いながら見ていたオットーにも感謝を伝える。
 對一邊獨自傻笑著一邊看著我們的交流的歐拓傳達感謝。
 オットーのお陰で、ルッツは旅商人を諦めて、商人見習いへの第一歩を踏み出した。これはわたしが考えていた中で最善の結果だった。
 托歐拓的福,路茲放棄了旅行商人,往實習商人踏出了第一步。這是在我的考慮中最好的結果。

「オットーさん、ベンノさんを紹介してくださってありがとうございました」
「歐拓先生,非常感謝您將班諾先生介紹給了我們」
「なかなか楽しい休日になったよ。次に門に来る日を楽しみにしてる」
「是個相當愉快的休息日喔。我期待著下次到門來的日子」
「はい」
「好的」

 どうやらオットーにも合格点をもらえたようだ。
 看來歐拓好像也給了合格點的樣子。
 ホッと胸を撫で下ろし、オットーのセリフから解散を促されていることに気付いたわたしはルッツと一緒に歩き出そうと足を一歩踏み出す。
 放心地鬆了一口氣,注意到被催促著從歐拓的說詞中解散的我跟路茲一起要開始走並邁出了一步。

 ……あ、忘れてた。
 ……啊,忘記了。

 わたしは足を止めて振り返り、同じように歩きだそうとしていたオットーとベンノを呼びとめる。
 我停下腳並回頭,叫住像似同樣正打算要開始走的歐拓跟班諾。

「あの! オットーさんとベンノさんにお伺いしたいことがあったんです」
「那個! 有想跟歐拓先生與班諾先生請教的事情」
「うん、何かな?」
「嗯,是什麼呢?」
「自分の中にある熱が急に広がったり、小さくなったりする病気に心当たりありませんか?」
「對存在自己體內的熱急遽地擴張、又變小的疾病有沒有線索呢?」

 あちらこちらに行っていたオットーか、色々なところに繋がりがありそうなベンノなら、わたしの中の熱のことを知っているかもしれない。
 如果是走過各處的歐拓,或好像跟各種地方有所聯繫的班諾,搞不好會知道我體內的熱的事情。

「熱に食べられそうになるような感じがしたり、必死で退けようと思ったら小さくなったりするんです。主観的で申し訳ないんですけど……」
「有著好像要被熱給吞食般的感覺,想著要死命地斥退的話就會變小了。雖然如此主觀非常的抱歉……」
「さぁ? 聞いたことないな」
「啊知? 沒聽過呢」

 オットーがゆるく首を振った。
 歐拓緩緩地搖著頭。
 ベンノに視線を移すと、一度目を伏せた後、ゆっくりと首を振る。
 將視線轉移到班諾後,一度低下頭後,慢慢地搖著頭。

「……知らんな」
「……不知道」

 この二人が知らないということは、わたしの生活圏内で知っている人はいないと思っていい。
 這兩個人不知道代表,可以想做是在我的生活圈內沒有知道的人。
 わたしの病気はどうやら相当珍しいものらしい。
 我的疾病似乎看來相當稀奇。

 ……もしかして、結構ヤバい病気なのかな?
 ……難道,會是相當糟糕的疾病嗎?

 一抹の不安を抱いて、会合はお開きとなった。
 懷抱一抹不安,會晤散會了。

======================================================================
条件付きですが、何とか合格を勝ち取りました。
是附帶條件的,但要設法贏得合格。
これから、商人見習いになるために、紙の制作に入ります。
今後,為了要成為實習商人,進入紙張的製作。

次回はオットーさん視点の閑話です。
下回是歐拓先生視點的閒話。
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