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第一部士兵的女兒 美索不達米亞文明,萬歲

作者:SPT草包│2016-12-07 16:09:59│贊助:2│人氣:235
本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~
以下犯上的書癡~為了成為圖書管理員而不擇手段~
作者:香月美夜
第一部兵士の娘 メソポタミア文明、万歳
第一部士兵的女兒 美索不達米亞文明,萬歲
原文連結

 今日は初めて自分の足で森へ出かける日だ。
 今天是第一次用自己的腳外出到森林的日子。
 石板の入ったトートバッグではなく、みんなよりはちょっと小ぶりの籠をわたしも背負って、土を掘り返すための木べらにしか見えないスコップを持った。
 沒有放入石板的手提包,揹起比大家還稍微小型的籃子,帶著看來只是為了挖土回來的木鍋鏟的鏟子。
 ぶっちゃけ、この木べらで土を掘れって、こどものおもちゃであるプラスチック製のスコップより頼りないと思うのは、わたしだけだろうか。
 坦白說,用這個木鍋鏟挖土,會認為比做為小孩子玩具的塑膠製鏟子還不值得任賴的,只有我了吧。

 すぐに壊れそうに見える木べらスコップをブンブン振り回していると、父がガシッとわたしの肩を掴んだ。森に行くと決まってから、耳にたこができるほど聞いた台詞を繰り返す。
 呼呼來回揮舞著看起來馬上就要壞掉的木鍋鏟鏟子時,父親用力抓住我的肩膀。因為決定要去森林,所以重複著聽到耳朵要長繭似的台詞。

「マイン。今日は森へ行って、帰ってくるだけだ。帰りはみんな荷物が多いし、疲れている。マインは森で休憩して、みんなと帰ることを目的にするんだ。わかったか?」
「瑪茵。今天只是去森林、然後回來。回來大家的行李都很多,很疲累了。瑪茵就在森林休息,目的是跟著大家回來。知道了嗎?」
「わかってる」
「知道了」

 わたしの返事だけだと不安なのか、もう何回も聞いたよ、という心情が透けて見えているのか、父は苦い表情のまま、トゥーリを振りかえった。
 是只對我的回答不安嗎,已經聽過好幾次了唷,還是看透了那種心情呢,父親苦著張臉,回頭望向圖麗。

「トゥーリ、大変だと思うが、頼むぞ。閉門までにマインが帰ってこられるようにルッツともよく相談してくれ」
「圖麗,我想會很辛苦,拜託了。為了到關門為止讓瑪茵回來去跟路茲好好商量吧」
「うん。今日は早目に切り上げるよ」
「好。今天會提早結束唷」

 責任感溢れるトゥーリが、父に頼まれたことで使命感に燃えている。今日のトゥーリはちょっと厳しそうだ。
 充滿責任感的圖麗,因被父親拜託而燃起了使命感。今天的圖麗好像有點嚴苛。

 外に出ると、すでに何人か子供達が同じように籠を背負って集まっていた。わたしとあまり体格が変わらない子から、トゥーリやフェイのようにちょっと体格が良い大きめの子まで8人がいる。
 外出時,已經有幾個小孩子揹著好像同樣的籃子集合起來了。從像我不太改變體格的孩子,到像是圖麗與斐稍微體格好的大孩子有8個人。
 ピンク頭のフェイが先頭で、トゥーリが最後尾を歩く。わたしは歩き始めた時には先頭で、到着の頃にはだいたい最後尾になっている。
 粉紅頭的斐在前頭,圖麗走在最後面。我在開始走的時候在前頭,到達的時候大概變成在最後面了。

「じゃあ、マイン。行くぞ。ペースを崩さないようにな」
「那麼,瑪茵。走了喔。不要打亂了步調啊」

 門までは普通に歩けるようになったわたしだが、森まで歩くのは初めてだ。そして、わたしのペースメーカーはルッツだ。
 變得能夠普通地走到門為止的我,走到森林去是第一次呀。然後,我的陪跑員是路茲。
 約三月の間、家と門を歩くうちに、ルッツはいつの間にか、わたしに無理させないスピードを習得していたらしい。最近、無理せずに歩けているのはルッツのお陰だ。
 約莫三個月之間,在走家與門的時候,路茲是在什麼時候呢,似乎已學會了不勉強我的速度。最近,能不勉強地走著是托了路茲的福呢。

「ありがとう、ルッツ」
「謝謝你,路茲」
「いや、マインにはウチも世話になってるからな」
「不,因為瑪茵也關照過我家呢」

 この間、ルッツの家でパルゥの搾りかすの最終処分があった。雪の中でしか採れないパルゥは、暑くなると一気に悪くなってしまうらしい。
 最近,在路茲家有過葩乳的果渣的最終處分。只能在雪中採摘的葩乳,如果變熱似乎會一口氣變壞。
 そこで、普段のお礼&これからもよろしくの付け届け代わりに、オカラで量増しするオカラハンバーグならぬ、パルゥバーグを教えてあげたのだ。
 在那裡,代替普通的禮物與今後也請多指教的人情,教授了並非是因豆渣增量的豆渣漢堡排、而是葩乳漢堡排。

 パッと見た感じは黄色のパプリカだが、中身はトマトっぽい味のポメを煮詰めてソースにし、チーズも乗せて完成させた。パルゥの優しい甘みが味に思わぬ深みを出していて、作ったわたしがビックリの出来だった。
 煮乾猛一看感覺是黃色的彩椒、內裡是滿滿蕃茄味的柏梅做為醬汁,起司也放上就完成了。葩乳的柔和香甜在味道上產生出意想不到的深度,製作的我也嚇了一跳。
 ちなみに、ルッツを始め、お兄さん達はマジ泣きしていた。おいしいことはもちろん、食べられる量が普段の倍だったことに感動したらしい。
 順帶一提,以路茲為首,哥哥們真的哭了起來。好吃自不用說,似乎是因能吃到的量是普通的兩倍而感動。
 カルラおばさんにも「マインの料理は家計に優しい」と感激された。確かに、あれだけ食べる男の子が4人もいたら、エンゲル係数がすごいよね?
 卡露菈阿姨也說著「瑪茵的料理對家計很友善」而被感激著。確實,吃得下那些的男孩子有4個人的話,恩格爾定律很驚人的吧?

「なんで、あのパルゥバーグ、冬の間は教えてくれなかったんだよ?」
「為什麼,那個葩乳漢堡排,在冬季期間不告訴我們呢?」
「新鮮なお肉がなきゃ、ミンチにできないでしょ? それに、ミンチにするの、大変だから。協力してくれるかどうかわからなかったし……」
「沒有新鮮的肉、做不成肉泥對吧? 而且,因為要做肉泥,很辛苦的。沒給予協助該怎辦我不知道……」
「あ~、あれは大変だけど、マインの料理のためなら頑張れるな」
「啊~,雖然那很糟糕,但若是為了瑪茵的料理我會加油的」

 わたしは、肉をミンチになるまで包丁で叩き続けられる体力がないし、大変なことがわかっていて母に作ってほしいなんて言えなかったので、今までハンバーグっぽいものは食べられなかった。ルッツの家でみんなに作ってもらえて、一緒に食べられてラッキーだったと思っている。
 我,沒有用菜刀將肉變成肉泥持續剁的體力,由於希望明白辛苦的母親來做什麼的說不出口,而至今沒吃過漢堡排類的東西。想著在路茲家請大家製做,而能一起吃很幸運。

 そんなお喋りをしながら、森まで歩く。お喋りをしながら歩いた方が楽しく長く歩けるのだが、到着した後の疲労感は半端ない。
 一邊那樣聊著天,一邊走到森林為止。是一邊聊天一邊走而很快樂能走很長嗎,到達之後的疲勞感不到一半。
 みんなが採集している間、わたしはちょっと大きめの石に座って、疲労回復だ。
 在大家採集著的期間,我稍微坐在大石頭上,恢復疲勞。
 石に座って、荒い息を繰り返すわたしを心配して、背中をさすりながら、ルッツが言った。
 擔心著坐在石頭上、重複著紊亂氣息的我,一邊撫揉著背後,路茲一邊說了。

「もうじきフェイとトゥーリも洗礼式だから、マインも早く森に慣れないと困るぞ」
「因為快到了斐與圖麗的洗禮式了,瑪茵不早點習慣森林的話會很困擾的」
「……なんで?」
「……為什麼呢?」

 トゥーリの洗礼式があるのは、服を作ったり、髪飾りを作ったりしていたから知っていたが、洗礼式の後、具体的に何が変わるかは、理解できていなかった。
 因為有著圖麗的洗禮式,又做衣服、又做髮飾的而知道著,洗禮式之後,具體上有何改變呢,我無法理解。

「トゥーリも洗礼式が終わったら、見習い仕事を始めるだろ? そうしたら、週の半分は森にマイン一人で行かなきゃならないんだから」
「圖麗的洗禮式也結束的話,就要開始實習工作了吧? 因為那樣的話,每周的一半瑪茵就必須要一個人到森林了。」

 ルッツに指摘されて、わたしは大きく目を見開いた。
 被路茲給指出,我大大地張大了眼睛。
 トゥーリが見習いとして仕事を始めるということは、わたしがトゥーリの代わりに手伝わなければならないことが増えるということだ。
 所謂圖麗作為實習而開始工作,就是說我必須要代替圖麗幫忙的事情增加了吧。

「ど、どうしよう……。ちゃんと考えてなかった」
「怎、怎麼辦……。我還沒好好考慮過」

 マインが病弱で、何に関してもトゥーリが世話を焼いてくれるおねえちゃんだったから、今まで平穏に暮らしてこられた。トゥーリがいなくなったら、わたしは多分生活できない。
 因為因瑪茵體弱多病,就算關於什麼都是操勞到圖麗這個姊姊,至今帶來的平穩的日子。圖麗不在的話,我大概無法生活。
 血の気が引いたわたしに、ルッツが、へへっと笑って鼻を擦る。
 對臉色發白的我,路茲,嘿嘿地笑著擦擦鼻子。

「まぁ、トゥーリがいなくても、マインのことはオレが守ってやるよ。マインは弱っちいからな」
「反正,就算圖麗不在,瑪茵也會由我來守護喔。因為瑪茵很柔弱呢」
「ありがとう、ルッツ。じゃあ、お願いするね」
「謝謝你,路茲。那麼,拜託你了呢」
「あぁ。オレは薪拾いに行ってくるから、マインはちゃんと休憩してろよ。帰れなくなったら困るだろ?」
「啊。因為我要去撿木柴了,瑪茵好好地休息喔。變得回不去的話會很困擾的吧?」

 そう言って、ルッツが薪拾いに行った。
 那樣說著,路茲去撿木柴了。
 ルッツの足音が遠ざかり、周囲に誰もいなくなると、わたしは早速スコップもどきの木切れで穴を掘りはじめた。
 路茲的腳步聲遠離,變得周圍誰也不在時,我趕快用疑似鏟子的木片開始挖洞。
 今日のわたしの目的は「森に行って帰ってくる。できれば、熱を出さない」である。それはわかっている。
 今天的我的目的是作為「去森林然後回來。可以的話,不要發燒」。那個我是知道的。

 だがしかし!
 但又說回來!
 森に来て、何の挑戦もせずに帰ること出来ようか。いや、出来ない!
 來到森林,什麼挑戰都不做就回去可能嗎。不,不可能!
 掘るよ、掘るよ、ガンガン掘るよ!
 挖掘吧,挖掘吧,奮力挖掘吧!

 粘土質の土が欲しいけれど、さて、どれくらい掘れば取り出せるのだろうか。地質が地球と同じようなものだと仮定した上で、結構深く掘らなければ、粘土質の土に行きつかなかったような気がする。
 雖然說想要黏土質地的泥土,那麼,要挖多少的話才能取出來呢。在假設地質是與地球相同般的東西之上,感覺若不挖相當深的話,好像到不了黏土質地的泥土。

「ていっ!」
「嘿!」

 土を掘るために、スコップを突き刺す。ガッと力一杯やってみた。
 為了挖土,將鏟子刺進去。試著用盡全力。
 けれど、スコップという名の木切れの先は1センチも刺さらなかった。
 不過,名為鏟子的木片前頭連1公分也沒刺進去。

 固っ!
 好硬!
 え? これって掘れるの?
 咦? 是挖這個嗎?

 まるでよく踏み固められた運動場の土を掘り返す気分だ。森の土って水気も多くて、柔らかめってイメージがあったのに、完全に裏切られた。
 簡直是在翻挖被經常踩硬的運動場的土的心情。明明森林的泥土水氣很多,有著很柔軟的印象,完全被背叛了。

 土が悪いのか? それとも、スコップが悪いのか?
 泥土不好嗎? 還是說,鏟子不好呢?
 うん、スコップだよね。
 嗯,是鏟子呢。

 わたしが知っているスコップと雲泥の差がある。木製じゃなくて、せめて、金属製のスコップが欲しい。
 跟我所知道的鏟子有著天差地別。不要是木製的,至少,想要金屬製的鏟子。
 だが、スコップが木製だろうが、土が固かろうが、柔らかかろうが、わたしに諦めるという選択肢はない。なかなか進まなくても、とりあえず、もそもそ掘っていくしかないのだ。
 但是,鏟子是木製的嗎、泥土是堅硬的嗎、柔軟的嗎,對我來說沒有名為放棄的選項。就算不容易前進,總而言之,只能磨磨蹭蹭地挖了。

 ザリザリザリザリ……
 不斷刮來刮去挖著……

 木切れスコップでちょっとずつ土を削っていく。
 用木片鏟子一點一滴地刮削著泥土。
 粘土質の土を掘り出すというのは、かなり根気と力の要りそうな作業だ。今日一日ではとてもできそうにない。
 是說要挖掘出黏土質地的泥土,是要相當的耐性與力氣的作業。用今天一天好像不太可能辦得到。
 粘土板を作るのも結構大変そうだ。パピルスもどきより楽にできることを祈るしかない。
 製作黏土板也是看來相當辛苦的。只能祈禱比仿造紙莎草還容易地做到。

 ザリザリザリザリ……
 不斷刮來刮去挖著……

 5センチほど掘れたところで、誰かの足音が近づいてくる音がした。
 在挖了5公分左右的時候,發出了某人的腳步聲接近的聲音。

「マイン、何やってんだ?」
「瑪茵,妳在幹什麼?」

 両手にいっぱい木切れを拾ってきたルッツが、地面に座り込んでスコップを動かすわたしを見つけて、目を見張った。
 撿來了兩手滿滿木片的路茲,看著坐在地面動著鏟子的我,張大了眼睛。

「今日は森の中で疲れるようなことはしない約束だろ!?」
「約定過今天在森林裡不會做會疲勞的事情的吧!?」

 確かに、家を出る時に約束をさせられたけれど、目の前にあるとわかっていて、我慢はできない。ルッツが戻る前に止めるつもりだったが、やり始めたら止められない。
 確實,雖然說在離家的時候被做了約定,但是我知道就在眼前,無法忍耐了。本來打算在路茲回來前停止的,但開始做的話就停不下來了。

 ……ど、どうしよう?
 ……怎、怎麼辦?

 父なら笑顔とハグで誤魔化せるが、ルッツはトゥーリがお目付役に任命するだけあって、そんなものでは誤魔化せない。
 若是父親還能用笑容與擁抱來蒙混,路茲只是圖麗所任命的監督者,那樣的東西是無法蒙騙的。
 誤魔化そうとしたら、逆に疑いの目を深められて、より一層厳しく問いただされるのは経験済みだ。
 要是被蒙騙的話,相反地疑惑的眼神會更深,更進一步地被嚴厲地訊問著的是過往的經驗。

「あ、あの……でもね、ルッツ」
「那、那個……但是呢,路茲」
「……でも、どうした?」
「……但是,怎麼了?」

 ルッツが眉間に深い皺を刻んで、両手を腰に当てて、見下ろしてきた。
 路茲在眉間刻下深深的皺紋,將兩手抵在腰上,俯視了起來。
 尋問開始の合図だ。
 是盤問開始的信號。
 さて、素直に吐いて、ルッツに協力を求めて「この考えなし!」と怒られるか、誤魔化そうとして失敗して「この俺にマインの嘘が通ると思うな!」と怒られるか、どちらがダメージは浅いだろうか。
 那麼,是坦率地吐露,尋求路茲的協助而被斥責「沒這麼想過!」嗎,還是決定蒙騙失敗被斥責「別想瑪茵的謊言會通過這個我!」呢,哪邊的損害比較輕呢。

「休憩していろと言ったはずなのに、一体何をしてるんだ?」
「明明應該說過要休息的吧,那麼妳到底在做什麼?」
「……あ、ああ、穴掘ってますっ!」
「……啊,啊啊,挖洞穴!」

 仁王立ちして怒りのオーラを振りまくルッツに、つい本当のことを零してしまった。
 對散發哼哈二將憤怒靈光的路茲,不小心洩露了真正的事情。

 だって、ルッツ、怒ったら怖いんだもん。
 因為,路茲,生氣的話好可怕咩。
 下手したら、わたし、閉門までに帰れなくなっちゃう。
 不慎重的話,我,直到關門前都無法回去。

「見ればわかる。なんで掘ってるんだよ?」
「看就知道了。為什麼要挖呢?」

 一応正直に答えたはずなのに、ルッツの怒りは倍増した。見下ろす視線がものすごく冷たくなった。
 姑且應該老實地回答了的說,但路茲的憤怒卻倍增了。俯視的視線變得非常的冰冷。

「えーとね、そのね、『粘土質』の土が欲しいの」
「所以說,那個呢,我想要『黏土質地』的泥土」
「え? 何が欲しいって?」
「哎? 想要什麼?」

 ルッツが理解できないというように、首を傾げた。怪訝そうな表情になった分、怒りがちょっと薄れたようだ。
 是說路茲好像無法理解般,歪頭不解。變成詫異般的表情的關係,怒氣好像有點變薄了。

「ぎゅっと詰まってて、べたっと重い感じの水はけの悪い土が欲しいの」
「想要緊緊札實、黏滑又有沉重感排水不良的泥土」
「……それなら、ここじゃなくて、あっちの木や草が少ないところの方が多いぞ?」
「……那樣的話,不是這裡,那邊樹或草很少的地方比較多吧?」

 粘土質は水はけ悪くて、植物が育ちにくい土だから、植物の少ない方を探した方が確かに効率的だ。
 因為黏土質地是排水不良、植物很難成長的泥土,尋找植物較少的地方確實是有效率的。

「ルッツ、ありがと!」
「路茲,謝謝!」
「こら! マイン、ちょっと待て!」
「喂! 瑪茵,稍等一下!」

 そそくさと移動しようとしたら、ルッツに首根っこを引っ掴まれた。体格も力もわたしとルッツでは比べ物にならないので、逃げ出すことなんてできやしない。
 匆匆忙忙地正打算要移動的話,被路茲用力抓住了後頸根。由於無論體格獲力量我跟路茲都是不能相比的東西,逃出去什麼的根本辦不到。

「ルッツ、離して」
「路茲,放手」
「今日のマインの仕事は休憩だ。この耳には聞こえないのか? 今すぐに集めなければならないほど必要な物なのか?」
「今天瑪茵的工作是休息吧。這隻耳朵沒聽到嗎? 是必須要立刻收集般必要的東西嗎?」

 ギュギュッと耳を引っ張られて、わたしはわたわたと腕を振り回しながら叫んだ。
 使勁用力地被拉著耳朵,我慌慌張張地一邊來回揮舞著手臂一邊叫著。

「痛い! 痛い!……だって、生活には関係ない、わたしだけが欲しい物だもん。トゥーリにも誰にも頼めないでしょ!」
「好痛! 好痛!……因為,跟生活沒關係,只是我想要的東西咩。無法拜託圖麗或其他人不是嗎!」

 うぅ~、と耳を押さえながら、涙目でルッツを睨むと、ルッツがわずかにたじろいだ。
 嗚~,地一邊壓著耳朵,一邊用淚眼盯著路茲時,路茲微微地褪縮了。
 わたしに反論されるとは思っていなかったのか、基本的に物に執着しないわたしの本への愛を恐れたのか、よくわからない。
 是沒想過會被我反駁嗎,還是害怕基本上不執著物質的我對書本的愛呢,不是很明白。
 ただ、本能がこの隙を逃すな、とわたしに言っている。今が攻め時だ。
 只是,本能對我說著,不要放過這個機會。現在就是進攻的時機了。

「わたしがおとなしくしていたら、ルッツが掘ってくれるって言うの!?」
「是說我老實待著的話,路茲會去挖嗎!?」
「……今日の分の薪を拾い終わったら、オレが掘る。だから、マインはおとなしくしてろ」
「……撿完今天份的木柴的話,我就挖。所以,瑪茵老實待著」

 予想外の返事にわたしは思わず固まってしまった。ポカーンとしたまま、ルッツを見つめるしかできない。売り言葉に買い言葉とはいえ、ルッツはもしかして、馬鹿じゃないだろうか。
 對出乎意料外的回答我不由自主地僵住了。就那樣呆住,只能凝視著路茲。挑釁來就挑釁回去地說話,路茲難道說,並不是笨蛋嗎。
 全く関係のないわたしの粘土板作りを手伝うより、少しでも多く採集した方がいいはずだ。
 比起幫完全沒關係的我製作黏土板,應該盡可能地採集比較好吧。

「ルッツ、あの、気持ちは嬉しいけど、ルッツは自分のこと、した方がいいよ?」
「路茲,雖然,你有那個心情我很高興,但路茲去做,自己的事情比較好唷?」
「マインは弱っちくて、土を掘るなんて出来るわけないんだから、オレがやる。その代り、土を何に使うのか、マインが何をしたいのか、ちゃんと言え」
「因為瑪茵很柔弱,挖土什麼的不可能做到,所以我來做。作為交換,泥土要用在什麼上呢,瑪茵想做什麼呢,好好地說」
「……なんで?」
「……為什麼呢?」
「マインが何をしたいのかわかってたら、無駄が省けるから。今だって、欲しい土がはっきりしているのに、見当違いなところを掘ってただろ?」
「因為知道瑪茵想要做什麼的話,可以省去浪費。就連現在,明明很清楚想要的泥土,卻在挖判斷錯誤的地方不是嗎?」

 うっ、痛いところを突かれた。
 嗚,被戳到痛處了。

 確かに、わたしの場合、目的は明確でも、ここでの名前がわからなかったり、日本で見た物と見た目が違っていて気付けなかったり、道具が手元になくて、迷走することが多々ある。
 確實,我的情況,即使目的很明確,又是不知道在這裡的名字,又是沒發覺外觀與在日本見過的東西不一樣,工具不在手邊,迷航的況狀很多。
 きっちりと指摘してくれたお陰で、ルッツの手伝ってくれるって言葉が勢いで出ただけってわけではないことがわかったけれど、手伝ってくれる理由がわからなくてもやもやする。
 雖然說托被切實地指出的福,但路茲給予幫忙的話語我明白並非只是順勢說出的,不明白給予幫助的理由而有所疙瘩。

「なんで、ルッツはわたしを手伝ってくれるの?」
「為什麼,路茲要幫我的忙呢?」
「ん? オレがすっげぇ腹減ってた時に、パルゥケーキ作ってくれただろ? あの時にオレ、マインのこと、手伝うって決めたから」
「嗯? 在我非常飢餓的時候,做了葩乳蛋糕對吧? 因為在那個時候,我就決定了,要幫瑪茵的忙」

 え? それだけ?
 咦? 只是那樣?
 それだけで、粘土掘れちゃうの?
 就只因那樣,而挖掘黏土嗎?
 おいしい物の効果ってすごいね。
 好吃的東西的效果好厲害呢。

 ぶっちゃけ、ホットケーキ一つでこんな重労働をしてくれるルッツの心境は全く理解できないが、わたしにとっては助かる言葉だ。
 坦白說,因一個熱蛋糕就去做這種體力勞動的路茲的心境完全無法理解,但對我來說卻是得救的話語。
 本人がやると言っているのだから、遠慮なくルッツに手伝ってもらおう。特に体力的なことは全面的に頼らせてもらうのが一番だ。
 因為本人都說了要做,就毫不客氣地請路茲幫忙了。特別是體力的事情給予全面的依賴就是最好的了。

「……じゃあ、ルッツに任せる。わたしは待ってるね」
「……那麼,拜託路茲了。我等著呢」
「ん。すぐにやること終わらせる」
「嗯。馬上結束要做事」

 本当にルッツはあっという間に薪を拾い集めてきた。
 真的路茲在轉眼間就撿拾收集好了木柴。
 そして、わたしを水はけの悪い土のところに案内してくれる。森の中でも少し斜めになっている低いところだ。
 然後,引導我到排水不良的泥土所在地。是在森林裡也變得稍微傾斜低窪的地方。

「この辺りだな」
「就在這附近呢」

 そう言いながら、ルッツはわたしが持ってきたスコップを手に取った。木べらのようなスコップでルッツが土を掘っていく。
 儘管那樣說,路茲用手拿走我帶來的鏟子。路茲用木鍋鏟似的鏟子挖起泥土來。

「マイン。お前さ、こんな物を準備して持ってきてるってことは、出来心じゃなくて、最初から約束守る気なかったな?」
「瑪茵。妳呀,準備了這樣的東西還帶來了,並不是一時衝動,而是從最初就沒想要遵守約定吧?」
「ぅえっ!? そ、それは、その……えーと、やっと森に来られたから、我慢できなくて……つい。計画的に」
「咦!? 那、那是,那個……呃,因為終於能來森林了,無法忍耐了…不小心。有計畫的。」

 ひくっと顔を引きつらせたルッツが、感情を爆発させるように力一杯スコップを地面に突き刺した。
 抽搐地讓表情痙攣的路茲,像是將感情爆發般全力將鏟子刺進地面。

「くっそぉ、これだからマインはおとなしそうな顔してるのに、油断できないんだよ!」
「可惡,明明就因為這個瑪茵有張好像老實般的表情,無法疏忽大意呀!」
「ルッツも油断してていいのに……父さんより鋭いんだから」
「因為明明路茲大意也可以的……卻比爸爸還敏銳」
「おじさんはお前に甘すぎだ!」
「叔叔對妳太天真了!」

 怒りに任せて掘るルッツはわたしと違って、ただの木べらで土が掘れてしまう。ザリザリと削っていたわたしと違って、ガッガッガッと土が抉れていくのが不思議で仕方ない。
 寄託於憤怒挖掘的路茲跟我不一樣,用只是個木鍋鏟在挖土。與刮來刮去削著的我不同,喀喀喀地剜出了泥土因不可思議而無奈。

 これは力の差? 力の入れ方? 何かコツがあるの?
 這是力量的差別? 力量運用方法? 有什麼訣竅嗎?

「あれ? 土の色が変わった?」
「奇怪? 泥土的顏色改變了?」

 ルッツが15センチほど掘ったところで、土の色が変わった。
 在路茲挖到15公分左右的地方,泥土的顏色改變了。

「欲しいのって、これか?」
「說想要的,是這個嗎?」

 少し掘り出してくれた土を握ってこねてみる。ひやっとしていて、べたっと重くて、手の中で形を変える土。わたしが探していた粘土で間違いない。
 將些許挖掘出來的泥土握著捏捏看。感到一陣冰涼,黏滑又沉重,在手中改變著形狀的泥土。毫無疑問是我所尋找的黏土。

「これ! わたしだけだったら、きっと何日もかかったよ! すごいね、ルッツ。力持ちだね」
「這個! 只有我的話,一定要花上好多天唷! 好厲害呢,路茲。好有力量呢」
「マインより力のない男なんていない」
「沒有比瑪茵還沒力量的男生」

 そう言いながら、ルッツは粘土質の土をどんどん掘りだしていく。
 儘管那樣說,路茲不斷地將黏土質地的泥土挖掘出來。
 わたしは積み上がる粘土に目を輝かせながら、大きな石の上に少しずつ運んでいった。これでどれくらい粘土板ができるだろうか。
 我一邊對堆積起來的黏土閃耀著眼神,一邊一點一滴地搬到大石頭上。這樣無論多少的黏土板都能做出來了吧。
 そう考えただけで、この土くれが愛おしくさえ思えてしまう。
 只是那樣思考著,就認為連這些土壤都令人憐愛。

「で、これをどうするんだ?」
「那,要將這些怎麼辦?」
「んふふ~、『粘土板』作るの」
「呵呵!,要製做『黏土板』」
「ネンドバン?」
「年土坂?」
「そう」
「沒錯」

 ルッツの汗の結晶である粘土質の土を、ぐにぐにこねこねして、わたしは薄い粘土板を作っていく。
 作為路茲汗水結晶的黏土質地的泥土,柔軟地搓揉了起來,我做了起薄薄的黏土板。
 できあがった粘土板に、近くに落ちていた細い木の棒で、母親が寝物語に教えてくれた民話を日本語で刻みつけていく。
 在做好的黏土板上,用掉落在附近的細木棒,用日文逐漸刻起了母親作為睡前故事的民間故事。

 できることなら、ここの文字で書きたいが、オットーが教えてくれる単語は仕事に関係する物ばかりだ。貴族の役職や紹介状の定型文が書けるようになったのに、未だに日常で使う言葉が書けない。
 如果辦得到,想用這裡的文字書寫,歐拓所教的單字盡是有關工作的東西。變成了像是貴族的職務或介紹信的定型文句的書寫的說,還無法書寫在日常使用的話語。

「マインが書いているのって、文字か?」
「瑪茵所寫的,是文字嗎?」
「うん、そう。こうやって記録しておくと、忘れてもまた読んで思い出せるんだよ。記録ってすごいよね。そんな記録が延々とつづられた本って、もっとすごいよね」
「嗯,對了。像這樣事先記錄起來,就算忘了再讀也就能想起來了唷。紀錄很厲害的呢。那樣的記錄源源不絕地被裝訂成的書本,更加地厲害呢」
「へぇ……」
「哦……」
「ルッツ、粘土掘ってくれてありがとう。何か集めるなら、行ってきていいよ? わたし、ここで書いてるから」
「路茲,謝謝你幫我挖黏土。如果要收集什麼,可以去了唷? 因為我,要在這裡書寫」
「わかった」
「知道了」

 今、書いているお話は、雰囲気的には『小人の靴屋 異世界編』って感じの話だ。粘土板一枚にびっしりと文字を刻んでも、全部で粘土板10枚に及ぶ大作になった。
 現在,所寫的故事,在氣氛上感覺像『小精靈與老鞋匠 異世界篇』的故事。即便在一張黏土板上密密麻麻地刻上文字,也變成了全部遍及黏土板10張的大型作品。

「やったぁ。できたー!」
「太好了。完成了!」

 最後まで書き切って、「完」の字を書きつけたわたしはやりきった感動に打ち震える。
 直到最後都寫完了,寫上「完」字的我因做完的感動微微顫抖著。

 すごいよ、粘土板!
 很裡害唷,黏土板!
 できたよ、粘土板!
 做到了唷,黏土板!
 偉大なるメソポタミア文明、万歳!
 偉大的美索不達米亞文明,萬歲!

 この粘土板を竈で焼いて、崩れないようにすれば本当の意味で完成だ。グッと棒を握ったまま、今まで書いてきた粘土板をくるりと振り返った。
 將這個黏土板用爐灶燒烤,不會崩解的話就是真正意義上完成了。就那樣使勁地握著棒子,回過頭去看至今寫好的黏土板。

「ぎゃあああああああっ!」
「呀啊啊啊啊啊啊啊!」

 次の瞬間、わたしはムンクの叫びのように頬に手を当てて絶叫した。目の前の信じがたい光景に頭の中が真っ白になる。
 下個瞬間,我就像孟克的吶喊將手抵在臉頰上拚命叫喊。對眼前難以置信的光景腦袋變得一片空白。
 採集物を抱えて、籠のところに戻ってきていたルッツが、大慌てでわたしのところへと駆け寄ってきた。
 抱著採集物,回到了籃子所在地的路茲,往驚慌失措的我的所在跑了過來。

「どうした、マイン!?」
「怎麼了,瑪茵!?」
「フェイが踏んだっ! ぐちゃぐちゃになってっ!……うわーんっ!」
「斐踩到了! 變得糊糊爛爛的!……嗚哇!」

 わたしが一生懸命に書いたお話の前半が、半分以上、フェイとその子分達に踏まれてぐちゃぐちゃになっている。足跡だらけで、形も完全に崩れていて、当然文字なんて読めるはずがない。
 我拚命寫的故事前半,一半以上,被斐與那些黨羽們踩到變得糊糊爛爛的了。盡是腳印,形狀也完全崩塌了,當然文字什麼的應該也無法讀了。

「せ、せっかくできたのに……ひどいっ……ぅえーんっ! 森に来るまでどれだけかかったと思ってるの!? この病弱な身体に体力をつけるのにどれだけ苦労してると、思って……。ルッツもトゥーリも巻き込んで、やっと完成したのにぃっ! フェイの頭のピンクは脳内お花畑で考えなしのピンクなの!? バカバカバカ! ぅあああぁぁぁん!」
「好、好不容易做出來的說……好過分……嗚嗯! 你有想過我來到森林為止花了多久嗎!? 你有想過我為這個體弱多病的身體增加體力,是下了多少辛勞嗎……。明明連路茲與圖麗也被捲了進來,才終於完成的! 斐頭上的粉紅色是因腦袋開花而毫無思考能力的粉紅色嗎!? 笨蛋笨蛋笨蛋! 嗚啊啊啊嗯!」

 精神的にいい年した大人がみっともないかもしれないが、大泣きした。涙も嗚咽も止められない。精神はともかく、わたしの見た目は幼女なので問題ないということにしておこう。
 精神上成年的大人很難看也說不定,大哭了起來。淚水與哽咽停不下來。精神姑且不論,暫且由於我的外表是小女孩而沒有問題。

 わたしの絶叫にトゥーリが血相を変えて走り寄ってきた。周りから前後の状況を聞いて、わたしを宥める。
 對我的拚命叫喊圖麗臉色大變地跑了過來。從周圍聽了前後狀況,安撫著我。

「マイン、そんなに泣いちゃダメよ。みんな悪気があったわけじゃないんだから、ね?」
「瑪茵,那樣哭泣是不行的唷。因為大家並沒有惡意,好嗎?」

 悪気があろうとなかろうと、ぐちゃぐちゃになった粘土板が戻るわけではない。せっかくの完成品を踏みにじられたわたしの恨みと怒りは、トゥーリの言葉では全然おさまらない。
 不論有沒有惡意,變得糊糊爛爛的黏土板已無法回去了。難得的完成品被蹂躪的我的怨恨與憤怒,完全無法因圖麗的話語而平息。

「やだ! 絶対に許さないっ!」
「不要! 絕對不可原諒!」

 ふーっ、ふーっ、涙と鼻水と流しながら、わたしの剣幕にビクビクしているフェイ達を睨みつけていると、ルッツがトントンと背中を叩いた。
 呼、呼,淚水與鼻水一邊狂流著,一邊瞪視著對我的氣焰戰戰兢兢起來的斐他們時,路茲咚咚地拍著我的背後。

「作り直せばいいだろう? その、オレも手伝うし、あいつらだって悪いことをしたと思っているんだから手伝ってくれるって、な?」
「重新再做就好了吧? 那個,我也會幫忙的,因為就連那些傢伙們也認為做了壞事所以會幫忙的,對吧?」
「あぁ、手伝う! 悪かったって」
「啊,會幫的! 不好意思」

 ルッツの取りなしにすがるように、フェイとその子分達がカクカクと首を振って、協力を約束した。
 像是附和路茲的調解,斐與那些黨羽們機械似地點著頭,承諾會協助。

「……わかった。もう一回作る」
「……知道了。再做一次」

 ひとまず粘土板は完成したんだから、方向性は間違ってなかった。
 因為黏土板姑且算是完成了,沒有搞錯方向性。
 パピルスよりは簡単に完成したことで満足しておこう。
 暫且先因比紙莎草還簡單就完成而滿足。

 けれど、フェイとその子分達に釘をさすのは忘れない。
 但是,不會忘記對斐與那些黨羽們警告。

「二度目があると思わないでね」
「別想會再有第二次了啊」

 子供達の間で噂される「絶対に怒らせてはいけない相手ランキング」で、わたしはしばらくぶっちぎりトップに輝いていたらしい。
 在被小孩子們之間流傳著的「絕對不可以招惹的對象排名」,我似乎暫時於遙遙領先的頂端閃耀著。

======================================================================
 粘土板、作成中。
 黏土板,製做中。
 フェイ達もしっかりこき使われてます。(笑)
 斐他們也確實地被指使著。(笑)

 次回は父視点の閑話です。
 下回是爸爸視點的閒話。
 森へ行く時に約束したことをすっきり無視したマインに対して、父はどうするのか。
 面對爽快無視去森林時所做的約定的瑪茵,爸爸要怎麼辦呢。
 あ、両親の名前が初めて出ます。
 啊,雙親的名字第一次出現。
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