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奈須X虛淵兩萬字訪談(上)

作者:七夜蒼月│月姬/Fate 系列│2008-06-16 20:58:10│巴幣:0│人氣:5521
本文出自於雜誌コンプティーク三月號所附的別冊
"TYPE-MOON PHANTASM 2008"

因為長度關係,分為上下兩篇

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執筆中の虚淵を支えた強大なバックボーン

---2007年末「コミックマーケット」で発売された第4巻「煉獄の炎」をもって
「Fate/Zero」が完結しました。今回は「Fate/Zero」に関してお2人にいろいろとお話
しいただきたいと思います。まず虚淵さんに、執筆にあたり苦労された部分からうかが
いたいのですが......。

虚淵:「Fate/Zero」の執筆に関しては、「Fate/stay night」という強大なバックボー
ンが原則として存在していたので、特別苦しい思いはしませんでした。むしろ、作品世
界のバックボーンにすごかったので、これまで書いてきた自分の諸作品に比べて、創作
という点では楽でしたね。自分の物書きとしての弱さは、自分に作り上げた世界観にと
っぷり浸かれないところなんです。その点、奈須さんは真逆の強さがあって、この人が
作る世界観は他人であろうと愛さずにいられないんですよよ。それがあって、自分ひと
りで書いたもの以上に、Fate/Zero」は確信をもって書けたという部分はありますね。

奈須:などとまじめなことを言っている一方で、この男は「セイバーを思う存分いじめ
られるかと思うと、楽しくてしかたない」って喜んでましだよ(笑)。なので、僕のほ
うから「あんまりいじめすきないでね」ってクギを刺したぐらいです。

虚淵:いや、これでも手心を加えているんですよ?でも、確かに奈須さんにブレーキを
かけてもらったおかげで、破綻せずに済んだ部分もあるんです。もし自分の思うように
セイバーをいじめ抜いていたら、セイバーは自分に絶望にする前に切嗣を恨むだけにな
っていたかもしれませんから。それじゃだめですよね。自分を責めて終わらないと「
Fate/stay night」本編につながらなくなってしまうので。あれ以上に切嗣とセイバー
の関係を險悪していたら、「切嗣はひとい男」という話でおわちゃうんで(笑)。

---「Fate/stay night」本編につながるという部分ですが「Fate/Zero」では「
Fate/stay night」の作中語られている伏線をほぼ描き切っていることに驚きました。

奈須:僕は虚淵さんに「Fate/Zero」を書いてもらうとき、「Fate/stay night」本編の
伏線は半分くらい消化してくれればそれていいと考えていたんですよ。全部を拾おうと
すると物語自体が破綻する恐れがあったんですよね。でも......。

虚淵:もうそれを聞いたときに、俄然燃え上がっちゃいましたね。「よし、伏線は全部
拾ったれ!!」と。一部苦しいところはあるんですけど、もはや執念に近い感じで拾い
まくりました。

奈須:そこはもう、本当に職人芸の域にまで達してると思う。

虚淵:でも、ちょっとハンドルミスてカードレール削っちゃってるところはありますよ
(笑)。

奈須:セイバーとイリヤの関係といった、細かいところで、ですね。「Fate/Zero」で
アイリスフィール(以下、アイリ)と行動をともにして、アインツベルンの存在をしっ
ているはずのセイバーが、「Fate/stay night」本編でイリヤを見て何の反応もしてい
ないんです。これが一番大きい。

虚淵:出会いから十年もたってるんで、まさかあのときに見た子供のはずはあるまい、
という言い訳はしましたけどね。

奈須:それに加えて、「Fate/Zero」ではセイバーの聖杯探索が終わってカムランの丘
に戻ったときに多少は取りこぼした記憶があるのではないかと。サーヴァント状態の記
憶を全部覚えているワケではない、と仮定すれば...。

---では、思い切ってそれをオフィシャル設定ということにしてしまえば......。

奈須:それを公言してしまうと「なるほど、セイバーは全部覚えているワケじゃないん
だ」と、それこそいろいろな人が各自の解釈で話をつくれちゃあそうですけどね(笑)


アイリがつなぎとめた切嗣陣營のチームワーク

---それでは、今回登場する陣營についてお願いします。ますは切嗣陣營ですが、こ
ちらはマスターとサーヴァントの心がバラバラですね。

虚淵:まさしく。設定段階で「セイバーは切嗣から3度しか話かけられていない」とい
う大きなハードルがありまして。執筆の時も「うわああ......どうすればいいんだあ~
」という状態になりました(笑)。

奈須:切嗣には愛人がいたという設定が本編でも語られているんですが、それだけでは
あまりに話を作るのが難しい。それで虚淵さんが「じゃあ、セイバーの仮のマスターと
してアイリを出そう。それでセイバーとアイリのコンビを表に立たせれば話は作れるは
ずだ」というアイデアを生み出しまして。

---アイリの存在が「Fate/Zero」の物語をつなぎ止めていたということですね。そ
の一方で、彼女は女性キャラ中で最萌えキャラの地位を確立していましたね。

虚淵:いや-、アイリは途中で人気が出れば出るほど、不安で不安でしょうがなかった
んですよ。最後にいちばんひどいことになるのは決まっていたので。

---しかし、そのあたりは読者も最初から覚悟ができていたと思うんですが......

虚淵:いやいや!「Fate/stay night」の桜ルートでユーザーさんはドン引きしたじゃ
ないですか(笑)!!なんでみんな桜のよさがわかんないなあ。僕は黒桜最高じゃん、
って思ってたんですけど。

奈須:今でこそヤンデレは隆盛を誇ってますが、みんな反応が遅いよね(笑)!

虚淵:やっぱり女性の情念って裏返れば怖いものなんですよ。

---アイリと舞弥は切嗣への思いを通して奇妙な友情で結ばれていましたよね。彼女
たちの関係も、ある意味不思議だと思うんですが。

虚淵:そうですね。そのぐらい切嗣がダメな男だったということなんでしょうね(笑)


奈須:あの2人が「切嗣と添い遂げたい」という気持ち以上に「何とかしてあの男を支
えないとダメだ」っていうほうが強かったんでしょう(笑)。

---切嗣のどこに女性たちはそれほどまでに引かれるんでしょう?

奈須:......やっぱり力ちゃん(*1)(笑)?それはおいといて、とにかく切嗣はやせ
我慢の人生なんですよ。究極といっていいくらいの。とても繊細な人間なのに、理想の
ためにいっさい自分を省みたい姿勢に、女性は母性本能がくすぐられるのではないかと
。また、それ以上にあの2人にとって切嗣は、自分が存在する理由そのものなんです。

虚淵:なんだかんだいって、過去のエピソードといい、女がらみが多いですねこの人は


*1:「力ちゃん」:切嗣役の声優・小山力也の愛称。某ネットラジオのパーソナリティ
を務めた時、ゲスト出演の女性声優陣にモテまくっていた。

---一方、セイバーはあらゆるサーヴァンドから狙われて大変なことになりますね。

虚淵:それでも生き残っているところが、セイバーのすごさですよね。鬼の防御力です
よ。だぶん打擊を食らう回数は隨一でしょうね。

---全編を通してひどい目に遭いつづけていたセイバーですが、4巻ではもうダメ押
しとばかりに...

奈須:表紙がすべてを物語っていますよね。でも血まみれのセイバーの、この表情を見
たら、「もっとやってもいいかな」なんて思えたり。いじめたくなる顔してますよね~


虚淵:だってセイバーは学級委員ですもん。これはいじめなきゃ!むしろね、僕は「
Fate/stay night」のライダーよりセイバーこそメガネがふさわしいと思う(笑)。


時臣とギル、そして言峰絡み合う3者の思惑

---次は時臣&言峰陣營ですが。

虚淵:時臣は自分的に「きのこワールド」における標準的な魔術師として考えたキャラ
なんです

奈須:第3卷で雁夜と対戦前に話すところが、時臣の真骨頂ですね。あれを見て、もは
や僕が手を入れるところは何もないと確信しました。

---あれが本来の魔術師があるべき姿であると。

奈須:そうですね。目的を最後まで遂行しようとする強い意志力を持っている。でもう
っかり屋(笑)。

虚淵:ギルガメッシュと組む以上は、うっかりしてくれなきゃダメなんですよ。この人
がうっかりしてくれなかったら、普通に勝ち残って何の面白みもない話で終わっちゃい
ますからね。そういう意味では、いろいろと話の都合上、割を食ってしまってましたね


---ギルガメッシュと時臣の関係も特殊で、サーヴァンドと主人の関係が逆転してし
まっているところがおもしろいですよね

虚淵:魔術師の観点から言うとそれは矛盾ではないという背景も盛り込みたかったんで
すよ。主從関係と、尊きものと卑しきものとの関係は決してイコールではない。まず召
喚者である時臣が主人であることは、第一前提としてあるんです。そして、いざとなれ
ば令呪を使ってキルを殺してもかまわないという自負も持ち合わせでいる。その一方で
、ギルガメッシュという偉大な存在をあがめ奉る美意識ももっている。その2つが何の
矛盾もなくつながるのが魔術師なんじゃないかと。

奈須:そうなんですよ。そういう意味では、魔術師とサーヴァンドの関係を体現する最
もわかりやすいサンプルケースですね。端的に言うと、時臣にとってギルガメッシュは
超偉大な道具なんですよ。

---言峰の話に移りますが、彼が少しずつ堕ちていく様がもうたまらないわけですが


虚淵:言峰はギル並んで僕の最愛キャラですから!
奈須:虚淵さんから「Fate/stay night」の感想をもらうときに、とにかく桜ルートラ
ストでの言峰と士郎の殴り合いがたまんなすぎる!という言葉をいただきまして。

虚淵:「なぜあそこに殴り合いの絵がないのか!」とさんさん文句言いました(笑)。

奈須:あの時はいろいろと限界で、あれが精一杯だった。だからPS2版「Fate/stay
night[Realta Nua]」ではここぞとばかりに新規CGをつぎ込みました(笑)。

虚淵:そうそう、あれ見てやっと溜飲が下がりましたよ。

奈須:「[Realta Nua]」制作時武内(崇)くんに「ここに絵を入れてくれ! と、あ
るお方が言っていたなあ......」などと扇動したりしました(笑)。

---第一卷最初のほうでは、言峰がすごく青臭いのが印象的ですよね。

虚淵:まあやっぱり、自分の中では「Fate/Zero」は言峰の話なんですよ。聖職者とし
て己の在り方に苦悩していた彼が、どんどん堕ちていく話ですね。

奈須:言峰はベクトルは違いですが、「Fate/stay night」の主人公である士郎を近し
いキャラなんです。例えるならダーク士郎。求道者というか、自分が周りの人間とは何
か違うという悩みを抱えながら、まとうな人間になろうとするのが士郎。一方、悩みを
克服できないけれど、この方向に進み続ければ答えがあるはずだ、と突き進んでいくの
が言峰なんです。それが第4卷のラストで美しく描かれているので、読了してそのまま
「Fate/stay night」の桜ルートをプレイした時、ようやく彼の物語は完結するという
わけっですね。それにしても、「Fate/Zero」の言峰強すぎるよ(笑)。第4卷の切嗣
VS言峰の戦いの描写が、本当にすさまじい。

虚淵:ていうかね。魔術ってホント便利(笑)。魔術という要素があるだけで、これだ
けスラスラ書けるとは。内勁(*2)よりすごいよね、これは。

奈須:コンテンダー(*3)のあの巨大な弾丸を素手で払いのけるって、もう意味わかん
ない。「物理法則の断末魔」!なにこのかっこいいフレーズ!?

虚淵:だって魔術もーん。魔術さえ使えば弾丸だって素手でなんとかなるもん。それが
できちゃうのがたまらん!

奈須:あのシーンは虚淵さんの作品「鬼哭街」の主人公・孔濤羅が奥義・六塵散魂無縫
劍に開眼してチェーンガンの斉射を刀1本ではじき返したシーンに匹敵するくらい盛り
上がったんじゃないでしょうか。

虚淵:書いている自分としては、「鬼哭街」のときのテンションを超えてましたね。最
後の最後まであのラストバトルを納得いく形で描き切れるのか、すごく怖かった。それ
までのどのバトルよりすごいバトルにしなければという意気込みはあったけれど、明確
なビジョンはない。でも、ここでしくじったら、それまで築いてきたものすべて台無し
になるという......いやー、でもあそこをなんとか描き切れたところで、やっと肩の荷
が下りましたね。

奈須:もう第4巻が発売されたから言えるけど、武內くんのスケジュールが、あのとこ
ろはけっこうぎりぎりだったんですよ。なので、插絵もなるべくいれない方向でいこう
としたのに、あがってきた原稿を読んだらテンション上がりまくっちゃって、逆に插絵
を増やす方向に変わってた(笑)。

虚淵:いやー、今思い返すと、拳銃VS殴り合いの勝負って無茶だよ、やっぱり(笑)。

*2「内勁」(ないけい):人間の体内に潜在するエネルギー。これを活用することで身
体能力を高め、爆発の破壊力を生む。
*3コンテンダー:切嗣の愛銃・トンプソン コンテンダー。狩猟用の中折れ式拳銃で、
1発撃つたびに弾丸を再裝填しなければならない。

---両者の間合いが違いますからね。作中でも語られていましたが、まさに間合い取
り合う戦いでした。

虚淵:切嗣もバカだよね。何であの戦いで1発しかうてない銃なんで選んじゃったんだ
ろう(笑)。

奈須:それプラス、言峰の複数令呪と、切嗣がもつ「全て遠き理想鄉」の激突。その反
則じみた攻防がまたすごかった!

最強の萌えコンビと、最大の被害者トリオ!?

---次は本作唯一の癒しどころであるウェイバーとイスカンダルですが。

奈須:この2人がいなかったら、「Fate/Zero」はひたすら重苦しい話で終わっていた
でしょう。ホント、この2人の話は僕ですら予想していなかった。

虚淵:最初、ウェイバーはイスカンダルの引き立て役みたいな位置付けだったんですけ
ど、書いているうちに生き生きとしてきて。あれほど成長するとは、書き始め当初は思
わなかったですね。最終的には「時針塔」(*4)に入って出世しちゃうし。

奈須:自分自身は一流にはなれないけど、他人を超一流に育て才能があるっていうのは
、虚淵さんからいただいアイデアなんです。

虚淵:まさに超一流の解説役。理解はできるけど実踐はできない。つもり、それって講
師だよなって気づいたんです。自分の足が速いわけじゃないけど、どう走れば速く走れ
るかを知っている人はコーチになるしかないじゃないですか。こいつの持ち味はそっち
なのかなと。

奈須:でも彼自身は、自分が一流になりたいんですよ。でもそうなれないジレンマに、
永遠に苦しむことになるという(笑)。

*4「時針塔」:ロンドンに拠点を置く魔術協會の総本部。表向きは大英博物館として機
能している。

---あの破天荒なイスカンダルがいたからこそ、ウェイバーもあれだけ成長できたん
でしょうね。

奈須:そうですね。超・超一流であるイスカンダルを知っているからこそ、あまり他人
をねたまない方向に成長していけるのです。

虚淵:最初のうちはきれいな慎二を描こうと思って、ウェイナーを書いていたんですよ
(笑)。

---4組はランサー陣營なのですが、これもひどい話で。

虚淵:いわゆる切嗣外道伝説の被害者ですね(笑)。

奈須:僕が口を滑らせちゃった、切嗣の「敵の恋人を人質をとったり、ビルを爆破した
り」といった非道な行ないの数々を、全身を受け持ってくれた人たちですね。いちばん
の被害者です。

虚淵:実質、ランサー組っていうのは、最初のプロットではまったくいらないポジショ
ンだったので、だからいろんなところの調整役を引き受けてもらうことになったんです

奈須:ここで虚淵さんのすごいところは、「Fate/stay night」本編でセイバーと最初
に戦うのがランサーだったので、「Fate/Zero」でもセイバーの最初の対戦相手をラン
サーにして、かつ最後はランサーを令呪で自害させるというところも本編と同じにした
ところですよ。あのシーンを読んで、「よし『Fate』に豋場するランサーはみんな不運
にしよう」と決めました(笑)。

虚淵:たまたま槍の英霊としておもしろそうなのを探しているうちにディルムッド・オ
ディナを見つけたんですけど、その死に方がたまたま主人によってねたみ殺されるとい
うものだったんですよ。それを見たとき、「あれ?これって『Fate/stay night』のラ
ンサーでクー・フーリンと似てない?」と気づいて、じゃあそのままリングさせてしま
おうと。

奈須:いや、でもディルムッドに比ればクー・フーリンは超幸せ者だよ?クー・フーリ
ンは好きな戦いの中で死んでいけたけど、ディルムッドは結局本懷を遂げられなかった
から。

虚淵:もし奈須さんが書いてたら、こうはならなかったんじゃない?

奈須:そうですね。僕が書いてたら、散り際のモノローグはなんかロマンチックに、東
京☆イリュージョンみたいな感じで散っていったかも(笑)。

虚淵:奈須さんってやっぱりキャラに対する愛を捨てきれないよね。奈須さんだったら
ここまでひどい扱いはできんよなって、武内さんともはなしてたんですけど。僕はその
滅び方そのものを愛してしまうんですけどね。

奈須:ここまで外道にできるのは虚淵玄だけ!

虚淵:僕のベクトルでは、やっぱり英雄は悲劇的に終わってなんぼだろうど。

奈須:好きなキャラほど血の涙を流させたからんですよ。こんなひどい死に方する英霊
が、セイバーといちばん仲が良かったという。どこまでセイバーをいじめれば気が済む
んだ、この男は!

虚淵:これだけセイバーと仲が良かったんだから、ちょっとくらいひどい散り方をして
くれないとね!

---ケイネスもかなりかわいそうでしたよね。

虚淵:そうですね。プロット的にかわいそうな位置づけにいるキャラこそ愛差ざるをえ
ないんですよね、自分的に。

奈須:だってケイネスなんて、第2巻の立ちイラストからして死亡フラグ立ってじゃな
いですか(笑)。

虚淵:武内さんに「ろくな死に方をしなさそう」なデザインにしてもらいましたから!

奈須:ソラウは最初にオチをきいていたので、第2巻までは普通に見守っていたんです
が、第3巻でディルムッドに対する恋心を見たときに「うわ、うわ、こいつムチャクチ
ャかわいい!頑張って!!」って言うほど好きになっちゃって。それでページをめくっ
たらあんなことに……。や、このときばかりは文句言いました(笑)。

虚淵:こっちこそびっくりでしたよ。まさかソラウのことをかわいいなんて思うヤツが
いるとは。この男のフェミニズムは筋金入りだな(笑)!でも、あのあたりはもっと盛
り上げてもうひとこじれ合ってもよかったとも思うんですよ。

奈須:いやいや、あのあっさりぶりが、逆に無常觀を生んでいるんです。

虚淵玄の真骨頂!雁夜と龍之介組

---それでは雁夜とバーサーカーについてはいかがでしょう?

虚淵:あれは「Fate/Zero」における「虚淵玄の出島」ってかんじですね。

奈須:そうそう、ここだけ虚淵ワールド。

虚淵:もうここだけ濤羅出しちゃってもいいかなってくらいです(笑)。

奈須:でも最初に意図していたよりは活躍しなかったですね。もうちょっとかき回して
くれる予定だったんですけど。

虚淵:だってあまりにも雁夜が死にそうで。引っかき回すだけの活力がない狀態スター
トするからね。

奈須:第1~2巻書いてたときに虚淵さんがいってたんですよ。「こいつもうダメだ。
あと1回か2回戦ったら死んじゃう」って(笑)。

虚淵:だからこそ、重要な局面に出しかなかったと。

奈須:そうそう、重要な見せ場には必ず出てきますよね。特に第3巻のバーサーカーと
ギルの空中戦、もうムチャクチャ燃えましたね!自衛隊がF-15イーグル戦闘機(*5)で
出てくるってことは聞いてたんですが、まさかバーサーカーがそれ憑依してダブルマシ
ンガン連射するとは聞いてなくて。なんだこの熱い展開!

虚淵:バーサーカーとギルの空中戦は第1巻ところか、最初の段階でやる気満々だった
ですよ。「王の財宝」で板野サーカス(*6)やりたくて!

*5「F-15イーグル戦闘機」米国空軍の主力戦闘機。「最強の戦闘機」のひとつ。
*6「板野サーカス」:アニメ演出家・板野一郎が生み出す、アクロバティックな演出。

---F15のパイロットが急激なGで絶命するほどのすさまじい空中戦ですからね

虚淵:バーサーカーの「あらゆる武器を侵食して自分のものにする」という能力も、す
べては「王の財宝」に対抗しうる空中戦のスペックを発揮するために、でっち上げたよ
うなもんですよ。

奈須:「Fate/Zero」と「Fate/stay night」の最大の違いは近代兵器の扱いだと思うん
ですよね。F-15しかり、第4巻のV-MAX(*7)しかり。僕はそっち方面に造詣は深くない
ので、ここは虚淵さんに任せてよかったと思っています。「Fate/stay night」と同じ
ことやってもしょうがないし。ここでしかできないことをやってもらいたかったので。

*7「V-MAX」:1985年にヤマハから海外へ輸出が開始された大型バイク。その加速はボ
ルシェをしのぐと言われている

---第4巻の、V-MAXの追擊シーンは「ヴェドゴニア」のデスモドゥス(*8)を彷彿と
させていましたね。

奈須:「あばよ、デスモドゥス。お前は最高の相棒だったぜ」みたいな。さすがにセイ
バーは言いませんでしたが(笑)。

虚淵:でも、セイバーがバイクに乗る設定って、「Fate/stay night」でもあったんで
しょ?

奈須:ええ。逃げるイスカンダルをセイバーがバイクで追うって話をやりたかったんで
すけど、ビジュアルノベルでやるとすさまじく映像コストかかるのであきらめたんです
。それで、あどに高層ビルの戦いにしたという話をぽろっと漏らしたら、「じゃあ俺が
やる!小説なら映像コストはない!!」と。

虚淵:V-MAXというチョイスは、ニトロプラスの代表であるでじたろうの趣味です(笑
)。「Fate/Zero」の想定年代を仮で指定して、「このへんでいちばんすごいバイクは
?」って聞いたら、返ってきた答えがV-MAXだった。その時は「V-MAXか。ハカイダー(
*9)か……。」と思ったものですが(笑)。

*8「デスモドゥス」:「ヴェドゴニア」に登場するモンスターバイク。人間には乗りこ
なすことが不可能なほどの性能を持つ
*9ハカイダー:東映の特撮ヒーロー番組「人造人間キカイダー」に登場する敵役。ダー
クな魅力で人気を博した。

---セイバーの鎧を転用してバイクの裝甲にするという発想もすごかったんですね。

虚淵:あれは武内さんの案なんです。みんなで映画「ゴーストライダー」(*10)を観
た後、ファミレスでバカ話してるときに出てきたんですよ、その話が。武内さんが「バ
イク変形するのいいよね!」って言い出して。俺と武内さんで盛りあがってたら、奈須
さんはすごい渋い顔してて(笑)。

*10「ゴーストライダー」:2007年に公開された、マーベル・コミックが原作のハリウ
ッド映画

---じゃあ、もし「ゴーストライダー」をみていなかったら……。

虚淵:もう少し違う展開になっていましたね。

奈須:そっか、あのころか~。みんな爆笑してましたねえ。

虚淵:もう強引な解釈の極みですよね。それはセイバーのスキルじゃないだろうと。

奈須:僕も最初は渋ったんですが、読んでみたらまったく自然な流れじゃないですか。
本来はMAXスピード出すとバイクがもたないけど、魔力で編んだ鎧で補強することで最
高のスペックを引き出す。なんと無理がない!

虚淵:一応「Fate/stay night」のときよりも、切嗣のマスター補正で騎乗スキルが少
し上がってるんですよね。もう何でも乗れちゃう騎乗スキル!

---では最後にいちばんの仲良しコンビである龍之介とキャスターですが。

奈須:実はですね。「Fate/stay night」のときに未遠川でセイバーのエクスカリバー
を食らうのは、ライダーだったんですよ。ライダーはドラゴンライダーで、マイナーな
竜に乗るような英雄を探そうと思ってたんです。イスカンダルは第七のエクストラクラ
ス(*11)にしようと。でも虚淵イスカンダルはもうライダー以外考えられなかった。
そんなとき、虚淵さんが「じゃあキャスターでなんとかしますよ」と言って。何をする
のかなと思っていたらクトゥルー神話(*12)をもってきた(笑)。

虚淵:あれは出すかどうか最後まで躊躇はしたんですけどね。クトゥルー神話に通じる
穴を開けちゃうと、とたんにきのこワールドが崩れてしまいかねないから、結構迷った
ところではあったんですよ。でもまあ、タコっぽい怪物ってだけで、別にクトゥルー神
話とは言ってないしね!(笑)

奈須:勘のいい人は第2巻で気づいたかもしれませんね。宝具が魔道書で名前も名前だ
し。クトゥルー神話を知っている人だけがわかればいいだけで。

*11「エクストラクラス」:聖杯戦争には七つのクラスがあるが、時としてそのクラス
に当てはまらない英霊も召喚されるらしい。
*12「クトゥルー神話」:H・P・ラヴクラフトの小説世界をもとり作り上げられた架
空の神話大系。

---「Fate/Zero」前半における要注目キャラだったと思いますが。

奈須:セイバーと会った瞬間に「叶った!」(笑)。セイバーはギルといいキャスター
といい、まったく話を聞かないやつらに好かれてしまうんですよ。

虚淵:「Fate/stay night」にはいっさい影響を与えないキャラだったので、彼らを書
いているときは何の気負いもなく書けましたね。こいつらなら何やっても大丈夫だと。

奈須:「Fate/stay night」を発表した当時、ユーザーさんを「セイバーってジャンヌ
。ダルクじゃない?」というミスリードへ誘導したことがあったんですよ。虚淵さんは
「ならそれを拾ってやろう」と。そういう意味で、キャスターは「Fate/stay night」
でミスリードしたユーザーさんの象徵と言えるかもしれませんね(笑)。

虚淵:ずいぶんな言われようだな!

奈須:でもやっぱり、バーサーカー組は虚淵ワールドじゃない?

虚淵:確かに。それは認める(笑)。実は第2巻の表紙でも、いろいろ武内さんに要望
を出したんですよ。「せっかく触手が豋場するんだからさ、触手でベトベトに絡まれち
ゃってるセイバーにして、帯のコメントに『タコは嫌いだ!』っていれたいな!!」っ
て熱弁して。まあ武内には華麗にスルーされましたが(笑)。

奈須:龍之介が語った新しい宗教觀に、キャスターは救いを見るというところもいいシ
ーンでした。なんという仲良しコンビ!でも、お互いに理解し合っているようで、だぶ
ん根本的にはお互いに何もわかってないんじゃないかな(笑)。

2人とも絞りきれない最大のハイライトシーン

---お2人のお気に入りキャラクターは、やっぱりギルと言峰でしょうか?

虚淵:そうですね。特に第4巻になるといかにギルと言峰をたたえ上げるかでしたから
ね。

奈須:ぼくはもうギルがかっこよすぎて、これ以降なにかの機会「Fate/stay night」
でギルを書くことになったとき、プレッシャーを感じると思います。あの「虚淵ギル」
に合わせられるのかと……。デザイン的にいちばん好きなのはバーサーカーなんですけ
どね。完全に変身ヒーローですからね。

虚淵:変身ヒーロー路線でお願いしたんですが、あれはぶっちゃけ「キャバン」(*13
)なんですよ。「サイバリアーン」(*14)って、あれに乗ってるポースでF-15にとり
すくのをやりたかった(笑)。

奈須:ええっ、そっち!?コンプの読者だれもついてこれないよ(笑)。

*13「キャバン」:1982年に放映された東映の特撮ヒーロー番組「宇宙刑事ギャバン」
のこと。
*14「サイバリアーン」:「宇宙刑事ギャバン」で主人公ギャバンが搭乗する、サイド
カータイプのマシン。

---では「Fate/Zero」全体を通して、お2人のハイライトシーンを挙げるとすると
どこになるのでしょう?

奈須:「Fate/stay night」の原作者として言わせてもらうなら。ナンバー3は第一巻
のサーヴァント召喚シーンですね。「Fate/stay night」に合わせて、かつ全員のセリ
フを合わせるところにときめいた。あの構成だけでも、虚淵玄という作家の手腕を見せ
つけられます。ナンバー2はソラウがランサーへの恋に目覚めるシーン。そしてナンバ
ー1はやっぱり切嗣VS言峰かな。でも、ギルVSバーサーカーの空中戦もいいし、イスカ
ンダルとセイバーの、エクスカリバーと神威の車輪の激突シーンもいい。いや!ギルVS
イスカンダルも捨てがたいなあ。第4巻はもうハイライトシーンしかない。決めがたい
ので、トップは第4巻全部ということで(笑)。

虚淵:やっぱりバトルロイヤルならではの乱戦というのが、非常に自分的には構想がお
もしろかったし、書いていても楽しかったんですね。「仮面ライダー龍騎」(*15)で
も一斉にいらんなやつが割り込んできてぐちゃぐちゃになるエピソードがおもしろいじ
ゃないですか。そういうところで、ナンバー3は第1巻ラストの乱戦シーンですね。あ
れはつぎからつぎの割り込んできて、誰と誰か戦うのかわからない状態になりますから
ね。同じ理由で、ナンバー2未遠川でのキャスター掃討戦です。あの戦いも乱戦乱戦の
「龍騎節」といいますか。あと、やっとあそこでエクスカリバーを撃てましたしね。あ
のシーンに至るまでエクスカリバーのすごさを語る機会ってのがなかったので。

奈須:「Fate/Zero」の最初のポイントっていうのが、いかにセイバーのエクスカリバ
ーを封じるかだったですよ。「Fate/stay night」と違って切嗣からの魔力が十分に供
給されているから、好き放題撃って簡単に敵を撃破できちゃうんですとね。

虚淵:いちばん思い入れがあるトップは、3人の王の酒盛りシーンですね。あれは構想
段階でもあったし、あれをうまく書き上げられた段階で、「よし、「Fate/Zero」はう
まくいけるな」と言う手ごたえを感じられたので。セイバーからみのエピソ-ドでもい
ちばんの宿題でしたしね。あのシーンで、虚淵ワールドの注人だったイスカンダルが、
やっと「Fate/stay night」ワールドに根っこを下ろすことができたのではないかと思
います。

*15「仮面ライダー龍騎」:2002年に放映された東映の特撮ヒーロー番組。幾人ものラ
イダーが生き残りを賭けて戦い合う
引用網址:https://home.gamer.com.tw/TrackBack.php?sn=136555
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