創作內容

0 GP

Muv Luv Alternative - Next Answer 主線 (61-End)

作者:WitchFive│2017-10-28 13:03:39│巴幣:0│人氣:276
061 - 中東・イスマイリヤ前線基地

OP
=========
千堂柚香
「合同演習、お疲れ様でした。砂上戦は私もまだまだ不慣れでとても勉強になります」
「ツェルベルスの皆さんは一人一人が一騎当千。模擬戦で、こんなに敗北感を味わうのは初めてです」

イルフリーデ
「私も千堂少尉から学ぶ事は沢山ありました。なにせ今度の作戦はフェイズ5ハイヴの攻略…」
「お互い学べる事は学び尽くして赴かなくては。攻略はおろか、きっと生還も難しいでしょう」
「ですが、南アフリカでの戦いと、コンゴハイヴ攻略は置いてきぼりだったので腕が鳴りますけど!」

千堂柚香
「頼もしいです。でも南アフリカが安定して戻った矢先にハイヴ戦。ツェルベルスの皆さんは大変…」

イルフリーデ
「みんな本当に頑張ってるなぁ。でも私達も激戦を終えたばかり。頑張りじゃ負けてませんっ!」
「それに私とベスターナッハ中尉が原隊復帰したわけですし、ツェルベルス全員集合ですっ」
「ツェルベルス全隊と、千堂少尉達ウォードッグ中隊、そして大尉!全員の力があれば…………」

『誰』
「…?全員の力があればどうした、フォイルナー少尉…」

イルフリーデ
「あの不自然な砂煙……。やっぱりBETA!砂中からBETA多数出現!大尉!」

『誰』
「振動センサーが通用しない砂漠。急な接近を許すのが本当に厄介だ。全機応戦!演習の締めにする!」

ED
=========
イルフリーデ
「全BETAの撃破を確認。不意を突かれましたが、友軍に被害はありません」

『誰』
「合同演習の締めに丁度いい実戦訓練になったな。警戒解除!各隊、基地に帰投する!」
「そして、フォイルナー少尉にベスターナッハ中尉。前作戦では世話になったな。感謝する」

ブリギッテ
「いえ。こちらこそ大尉の指揮下で戦えて光栄でした!」

イルフリーデ
「私と中尉がローテ中隊に戻っても次は共同作戦です。また同じ戦場で戦えますね、大尉」

『誰』
「ああ。またよろしく頼む。…次はフェイズ5のハイヴ攻略か。楽ではないと思うが最善を尽そう」

ブリギッテ
「了解。それにしても腕が鳴るな。フェイズ5、アンバールハイヴか」

イルフリーデ
「1984年から存在しているハイヴ。当時の中東戦線に大きな打撃を与えたと聞いています」

『誰』
「アンバールハイヴ…甲9号目標。こいつを攻略できれば人類にとって大きな一歩には違いない」
「よし基地に帰投後、作戦開始まで各員は全力で休むように!疲れは残すな!」
「ツェルベルス大隊と欧州連合軍。そして欧州派遣軍に俺達…。これほどの大部隊は久しぶりだ」
「そう言えば神宮司少佐は戻っているのだろうか?帰投したら訊ねてみる事にしよう」



062 - 中東・イスマイリヤ東砂漠地帯1

OP
==========
千堂柚香
「イラクのアンバールハイヴに向けて前線基地を出て2日ですが、中々過酷な旅になりそうです」

龍浪響
「イスマイリヤ前線基地から、イラクのアンバールまで直線でおおよそ1000kmだ」
「BETAとの交戦を避けて、蛇行してれば更に距離は増える。飛行できれば楽なんだけどな」

千堂柚香
「フェイズ5のハイヴに向かうので光線級は当然、存在しているはず。飛ぶわけにはいきませんね…」

龍浪響
「それでもここは完全にBETAの勢力圏内のはずなのに、遭遇する数が少ないのが幸いだぜ…」

『誰』
「ハイヴと前線の丁度中間にある、例の研究施設にBETAが集結していたからだな」
「分散していたBETAを叩く事ができたおかげで、多少はハイヴ攻略も楽になるかもしれないな」

千堂柚香
「あの時の被害は甚大でしたが、ハイヴ攻略を2回に分けて行えたと考えれば報われる…のかしら」

龍浪響
「その通りだ。もっとも楽観できる状況じゃ全然ないけどな。油断は一切できない」

『誰』
「ああ、奴らの物量はそんな物じゃ…と、噂をすればBETAだ。各自!油断するな!突破する!」

ED
==========
千堂柚香
「BETAの全滅を確認。今回も友軍に被害はありません」

『誰』
「よし、後続と合流後、物資を補給………なんだ、あれは?地上を這う入道雲か?」

千堂柚香
「……あれは!砂嵐です!」

神宮司まりも
「『誰』大尉、龍浪!一端退け!砂嵐の中では圧倒的にBETAが有利だ!」
「もたもたしていると跳躍ユニットに砂が入り込んで動けなくなる!」

『誰』
「…確かにまずい。全機撤退!駄目か、振り切れん…!」

千堂柚香
「きゃっ…!すごいノイズ…!耳が痛かったです…」

神宮司まりも
「通信機器に悪影響は出るが会話が出来ない程でもない!それより視界だ、問題は!」
「補給前に厄介な事になったな…。各機、弾薬のチェックを怠るな!遭遇戦を警戒しろ!」

一同
「「了解!」」



063 - 中東・イスマイリヤ東砂漠地帯2

OP
==========
龍浪響
「想像してたより、砂嵐の中でも視界は悪くないな…。全く周りが見えなくなるのかと思ったぜ」

神宮司まりも
「外部カメラでの視界確保は肉眼よりも優れている。それでも、精々見えて数十メートル先だ」

龍浪響
「確かに霧の中にいるみたいだ…。突撃級にでも襲われたら厄介…」
「……ッ!?危ねぇ…!?何かが俺の機をかすめてったぞ…!?」

神宮司まりも
「…レーザーだ!よりによって、この視界が不明瞭な時に何発も…!各機、乱数回避!」

龍浪響
「いや、かえって好都合だぜ!奴らにとっても視界は遮られてるはず!!そして――」
「光線級は味方を撃たねえ!つまりこれだけ撃ってくるってことは射線上に他のBETAはいない!」
「大尉、突撃のチャンスだ!射線を追って、光線級を駆除しましょう!」

『誰』
「根拠の薄い推測だが、このまま防戦一方では消耗するばかりだな。危険極まりないが支持します」

神宮司まりも
「撤退にするにも、どちらに行けば砂嵐が晴れるのか分からん。光線級を駆除しつつ前進する!」

ED
========
龍浪響
「視界が不明瞭で確かではないが、周囲の残存BETAの全滅を確認し……」

『誰』
「油断するな!中尉、後ろだ!この化物が!沈め!」

龍浪響
「…要撃級!?まだ生き残りがいたのか。助かりました大尉…。感謝します」

神宮司まりも
「私指揮下の人類防衛機構軍と欧州派遣軍、それからツェルベルス大隊の一部が砂嵐の中だ」
「アイヒベルガー少佐とは通信途絶しているが前進を続けている筈だ」
「合流までは全機私の指示に従え。もうすぐ砂嵐を抜ける。視界が晴れても油断はするなよ!」

『誰』
「了解!そろそろ抜けられそうだな…」



064 - 中東・アンバールハイヴ1

OP
=========
『誰』
「あれがフェイズ5ハイヴか。フェイズ4のコンゴハイヴの二倍近い規模があるぞ…」

ルナテレジア
「地表の高度は約600m。地平の先に立つ、その姿。まるで悪魔の棲む巨城ですわね」

イルフリーデ
「うわぁ、凄いBETAの数。みてみて、ルナ。こんなの本当に攻略できるのかしら…」

ルナテレジア
「そうですわね、やってみなければ分かりませんとしか…。私達に出来る事を頑張りましょう」

イルフリーデ
「そうよね。やれるだけの事をやるだけよね…」

ルナテレジア
「数は多いけれど、BETA達はコンゴハイヴ同様、地ならしやハイヴ建造に精を出しています」
「つけいる隙はある。そうですわね『誰』大尉」

『誰』
「その通り。神宮司少佐!道を切り拓くため奮迅している先行部隊に続きハイヴへ向かいましょう!」

ED
=========
ブリギッテ
「ハイヴまで目前ですが、BETA、尚も多数!」
「突入予定ポイントまでの距離、残り僅かなのに、この数…」

『誰』
「…総力戦の様相を呈してきたな」

神宮司まりも
「ローテ中隊、ハイヴ突入に備え、各員機体の損傷及び残弾のチェックを怠るな!」

『誰』
「そう言えば、ローテ中隊の指揮はベスターナッハ中尉が取っているようだが……」
「ララーシュタイン大尉は本作戦に参加していないようだな。どうしたんだ?」

ブリギッテ
「アフリカでの戦闘で中破し、ララーシュタイン機は現在修理中、私が中隊長代行を務めています」

『誰』
「あの森林火災の時か。大尉の獅子奮迅の活躍には救われたぞ」

ブリギッテ
「はっ!ララーシュタイン大尉が欠けている戦力低下分は、私が補ってみせます!」

神宮司まりも
「心強いぞ、中尉!ローテ中隊に後れを取らないよう、我々も連戦に備えるぞ!」

『誰』
「了解!」



065 - 中東・アンバールハイヴ2

OP
=========
龍浪響
「門が見えてるのに、近づけねえ!なんてBETAの数だ…!」

ヴォルフガング
「どいてろ、小僧!ビビってるなら俺が前に出る!カバー頼むぜ!」

龍浪響
「だ、誰が小僧だ、お前…!くっ……援護してやるよ!」

ヴォルフガング
「お前ッて言うんじゃねえよ!俺はウォルフガング・ブラウアーだ!ローテ11!階級は少尉!」
「コンゴハイヴじゃ目立った戦績を残せなかったからな!ここで少しは活躍させてもらう!」

龍浪響
「おい、俺の方が上官じゃねえか!俺は中尉だぞ、口を弁えろ…!」

ヴォルフガング
「悪ぃ、あんた良い腕してるぜ、ちっこい中尉!小僧と呼んだのは謝罪させてもおうか!」

龍浪響
「おう、ありがとうな。…いや、ちっこい中尉言うな…!…それより突撃するなら今だぜ、大尉!」

『誰』
「よし、俺達もウォードッグとローテ11に続け!突入ポイントを確保する!」

ED
=========
千堂柚香
「ハイヴ内に到達。突入部隊に被害はありません。…内部は外に比べてBETA数が少なく見えますね」
「やはり研究施設の存在がBETAを分散していたと見て間違い無さそうですね」

『誰』
「加えて今はハイヴ建造に勤しんでいるんだろう。融合世界の影響でこのハイヴも恐らく常態にない」
「横坑の殆どは埋まり寸断されているはず。少佐!偵察部隊を出しましょう!」
「俺達と各突入部隊は、このまま前進し、橋頭堡の確保を――ッ!?戦車級!?千堂少尉、危ない!」

千堂柚香
「きゃっ…!?」

龍浪響
「千堂少尉…!こいつ、柚香に乗っかってるんじゃねえよ…!」

千堂柚香
「だ、大丈夫です。伸し掛かられて下敷きになってしまいましたけど。戦車級、沈黙。撃破しました」

龍浪響
「心配かけやがって。倒されながら仕留めるなんて、やるじゃないか。化物をどかして今、自由にし…」

『誰』
「…ッ!今すぐ少尉から離れろ、龍浪中尉!」

龍浪響
「…た、大尉、何言って……」

『誰』
「…見ろ!天井が崩落する!全機、退避だ!急げ…!」



066 - 中東・アンバールハイヴ内

OP
========
龍浪響
「…ちくしょう…!柚香が、土砂の下敷きに……!返事をしろよ、少尉…!」

神宮司まりも
「落ち着け、龍波中尉。バイタルに異常は出ているものの、千堂機は健在。無事だ」

『誰』
「救助は後続に任せて、俺達は前進するぞ!もたもたしていては背中を守っている連中の負担になる!」

龍浪響
「こんな、いつどこからBETAが出てくるか分からねえ所に少尉を置いていくって言うんですか?」
「何とか…救助を優先する事はできませんか!?」

神宮司まりも
「軍務に私情を挟むな。今は橋頭堡の確保が最優先だ。貴様も部隊を預かる者だろう?冷静になれ」

龍浪響
「し、しかし…!!」

神宮司まりも
「とは言っても、その橋頭堡、確保するにはここが最良だと見受けられるな。どうだ大尉?」

『誰』
「同感です。では部隊を分けて救助作業と同時並行しましょう」

龍浪響
「少佐、大尉…感謝します!」

神宮司まりも
「貴様等、敵が接近している!橋頭堡確保のため、殲滅しろ!ここで抜かるなよ、龍浪!」

龍浪響
「了解!任せてください!!」

ED
========
イルフリーデ
「周囲のBETA、全て沈黙です!ふぅ、しばらくは落ち着けるかな」

ブリギッテ
「それにしても、ハイヴの構造は頑強そのものと聞いていたのだが。まさか天井が崩落するとは…」

イルフリーデ
「融合世界の影響で脆くなっていたのかもしれませんね。様々な地形が混ざりこんでいるようですし」

ブリギッテ
「戦車級を倒れながら撃っていた千堂機の流れ弾が当たった程度で崩れたようだからな。一理ある」

『誰』
「こちら『誰』、そちらの様子はどうか?崩落はかなり大規模だった様子だが…」

ブリギッテ
「殿を務めていたので巻き込まれはしましたが無事です。ですが、分断されてしまいましたね」

『誰』
「復旧に全力を向けている。ところでそちら側の横坑の状況はどうだ?」

ブリギッテ
「音波による簡易調査ではかなり脆いですね。それが暫く続いていると思われます」

イルフリーデ
「大尉のいる地点は元来の頑強な構造を保っているようです。その点からも橋頭堡として適切です」

『誰』
「了解。通路が繋がり次第後を追う。そちらは注意しつつ先に進んでくれ」

一同
「「了解!」」



067 - 中東・アンバールハイヴ3

OP
=========
ブリギッテ
「残り数分で主縦坑の底だな。最深部まで2000kmの縦穴か。戻れるのか不安になるが」

ブリギッテ
「大尉、一ついいですか。本当にウォードッグ中隊を後方支援に回して良かったのですか?」

『誰』
「龍浪中尉は仲間がどんな状態にあっても戦意を失わない強さがあると信じて疑わないが――」
「危険な場所で救出が難航している部下を置いていけるほど冷酷にはなれないさ」
「誰かが助けなきゃいけないなら、中尉にやらせた方がいい。神宮司少佐もそう考えたんだ」

ブリギッテ
「なるほど。しかし僭越ながらこの局面でその判断はいささか少佐も甘いと思えてしまいます」

ジークリンデ
「あら?少佐は甘くないわよ、ベスターナッハ中尉。代わりに私達を引っ張り出してきたもの」
「冷静に考えれば、この方がむしろ戦力的には充実しています。適切な差配だったと思いますよ」
「であればこそ、アイヒベルガー少佐も賛同したのでしょう。…さて、それよりも」

ブリギッテ
「着地予想地点に多数の敵影!盛大なお出迎えが待っているようですね」

ジークリンデ
「まるで巣を突かれて凶暴化した毒蜂の群れね。害虫は駆除してあげましょうか、大尉」

『誰』
「了解!各機、着地予想点のBETAを殲滅する!!」

ED
=========
ジークリンデ
「主縦坑、最下層を確保」

アイヒベルガー
「後続、続け」

『誰』
「あれだけいたBETAを、こんな短時間で平らげてしまうなんて。さすがのおふたりだ…」

ジークリンデ
「ご謙遜でしょう。大尉こそ鬼神の如き奮戦だったではありませんか」

アイヒベルガー
「大尉のくぐり抜けてきた死線は常に極限だった。己の力量には胸を張っていい」
「大広間まではあと僅かだ。ついてこい、『誰』大尉。新たな死線を共に越えるぞ」

『誰』
「了解!」



068 - 中東・アンバールハイヴ大広間

OP
=========
ヘルガローゼ
「こちらローテ6!ツェルベルス第一中隊、第二中隊共に、大広間へ突入!」

イルフリーデ
「大広間内部にはBETA多数!ヘルガ、凄いわね、ハイヴって!BETAの腸詰めみたい!」

ヘルガローゼ
「ここまで密集されているとそんな発想にも頷けるが、BETAは食えん!」

イルフリーデ
「生きて帰って、本物の腸詰めで素敵な晩餐を楽しみましょう!」

ヘルガローゼ
「大広間戦の撃破スコアで負けた方が勝者へ素敵な晩餐を御馳走する。乗るか?イルフィ」

イルフリーデ
「面白いじゃない、ヘルガ。私、奢りなら全力で食べるわよ!」

『誰』
「その賭け、俺も参加させて頂こうか!補給完了!これより、俺達も大広間へ突入する!」

ED
=========
ヘルガローゼ
「大広間のBETA殲滅を確認!スコアは私が3人の中でトップだ!どうだイルフィ!」

『誰』
「悔しいが、負けは負けだな。帰投したら好きな物を好きなだけ奢らせて頂こう」

ジークリンデ
「あら、喜んでいる所を申し訳ないけれど、大広間戦のトップスコアは私よ、少尉」

ヘルガローゼ
「え!?中尉、いつの間に賭けに参加されていたのですか…!?」

ジークリンデ
「私も食べる時は食べるわよー?覚悟してね、ふふ」

ヘルガローゼ
「全力で奢らせて頂きます…!」

ジークリンデ
「大尉、S-11によるハイヴの完全破壊は第三中隊『ブラウ』と私達、第1中隊で行います」
「大尉はローテ中隊と共に撤退経路の確保をお願いしてもよろしいでしょうか?」

『誰』
「了解した。財布の紐を緩めておくので、油断無きよう、中尉」

ジークリンデ
「ええ、『誰』大尉。貴方も御武運を」



069 - 中東・アンバールハイヴ4

OP
=========
イルフリーデ
「アンバールハイヴ、撤退経路の確保に成功、進路上のBETAはほぼ殲滅しました!」

ブリギッテ
「作戦もいよいよ大詰めと言った所か。ローテ中隊、空を拝めたからと油断はするなよ!」

イルフリーデ
「了解、周囲は以前BETAが多数存在しています!各部隊の皆さん、警戒を厳にして下さい!」

ブリギッテ
「後方支援の欧州派遣軍も合流し、撤退経路の確保も万全だな。ジーク様もお喜びになるだろう」

イルフリーデ
「ジークリンデ様には、私とヘルガそして大尉は、今夜、夕食を御馳走する事になっていますね」

ブリギッテ
「…いきなり何の話だ。それより…私は招かれていないのだが……」

イルフリーデ
「えっ!?スコアで負けたら夕食を奢るという賭けをしていたので。中尉もいらっしゃいます…?」

ブリギッテ
「まあ…部下だけに出費を強いるのはいささか問題があるからな――……なんだあのデカ物は」

イルフリーデ
「友軍3機のシグナルロスト!全長60mオーバー、要塞級です!弾薬推進剤共に僅かというのに…」

『誰』
「ここまで来て戦意を失うな!」

イルフリーデ
「…大尉!了解ですっ!ハイヴ内に残っている友軍機とあんな化物を遭遇させるわけにはいかない!」

ブリギッテ
「その意気だ!ジーク様がお戻りになられる前に、奴を始末する!」

『誰』
「まずは要塞級に接近するため進路上のBETAを駆逐する!ここまで来て死ぬなよ!」

一同
「「了解!」」

ED
=========
『誰』
「く……ローテと俺達を除き、ほぼ全滅か…!要塞級め!機体、衛士共に疲弊している時に…」
「ハイヴ戦を終えて生還の喜びに浸たる虚を突く禍々しい巨体。戦意を失っているのか皆、動きが…」
「…クソッ、ここまでか…!」

龍浪響
「諦めるんじゃねえ!!!」

『誰』
「援軍…!?ハイヴ内から!?ウォードッグ中隊か!」

龍浪響
「散々、世話だけしておいて、借りを返す前にくたばっちまうとか悪い冗談ですよ、大尉!」

千堂柚香
「中尉の言うとおりです。命の恩人達に恩を返す前に死なれては困ります」

『誰』
「無事だったか、千堂少尉…」

千堂柚香
「お陰様で無事発掘されました!」

『誰』
「発掘って……。くく…ははは。そうだな。諦めたらそこで何もかも終わりだ」

龍浪響
「それじゃ、『誰』大尉。あのデカ物、黙らせてやりましょう!!」

『誰』
「了解ッ!!」



070 - 中東・アンバールハイヴ5

OP
=========
ブリギッテ
「敵、要塞級!胎内より光線級を展開!信じられん…ハイヴの中で撃つつもりなのかっ!?」

龍浪響
「そんな馬鹿な!ハイヴを破壊する事を自らやるなんて――」

『誰』
「元々奴らはこの穴を掘るためにいるって話もあるし、味方撃ちさえなきゃ何でもやるかもな…」
「それに、この不完全なハイヴを奴らが守るべき巣だと思っているかどうか怪しい」

龍浪響
「と、とにかく!周囲の雑魚共は俺達に任せてください!大尉達は要塞級をッ!!」

『誰』
「よし!このデカいのを倒して甲9号作戦の成功を共に祝おう!行くぞ、吶喊ッ!」

ED
=========
ブリギッテ
「私の眼から逃れられると思うな!そこだぁッ!光線級全て駆逐!大尉今だ!要塞級にとどめを!」

『誰』
「了解!…くっ、弾切れか!!だったら!くらええええええっっっ!!」

ブリギッテ
「ちょ、長刀を投げただと…!?……要塞級、沈黙!やったぞ…!『誰』大尉…!」

『誰』
「まだだ、周囲の残存BETAは!皆は無事か!?」

ジークリンデ
「心配要りません。周囲500m内全てのBETAはあなた方が倒しました」

ブリギッテ
「中尉、ご無事でしたか!」

ジークリンデ
「大尉やあなたが撤退経路を確保していたお陰で弾薬が尽きていた私達も無事撤退できました」
「もう少し早く出てこられたら、要塞級撃破の手助けができたのに。ごめんなさいね」

『誰』
「ファーレンホルスト中尉もハイヴ最深部へ向かい、S-11を設置する危険な任務だったろう」
「無事で何よりだ。それでS-11は?」

ジークリンデ
「設置は完了。起爆予定まで残り数分です」

『誰』
「とうとうか。とうとう、あのアンバールハイヴを。甲9号目標を俺達の手で……」

ジークリンデ
「ええ。お疲れ様です、英雄さん」

『誰』
「え、英雄は止めてください。七英雄にそんなことを言われると恐縮してしまう…」

ジークリンデ
「さあでは撤退しましょう。ハイヴを出るまでは油断は禁物です」

『誰』
「了解!」



071 - エジプト・カイロ基地周辺1

OP
========
――エジプト・カイロ基地
ツェルベルス大隊、欧州派遣部隊、そして『誰』は、一端カイロ基地へと後退していた。その後…
ツェルベルス大隊と欧州派遣部隊は休息もそこそこに、別任のため基地を離れたのであった。

篁唯依
「『誰』大尉!ご無事で何よりでした!」

『誰』
「篁中尉久しぶりだな。また共に戦えると聞いて心強いよ。病み上がりで悪いが頑張ってくれ」

崔亦菲
「ちょっと大尉、私もいるんですけど~~」

『誰』
「分かってるよ、崔中尉。中尉もまたよろしく」

篁唯依
「それより大尉、外をご覧になりましたか?シャトル発射場にHSSTが搬入されています」

崔亦菲
「しかもあれだけの数…。きっと軌道降下するつもりなんですよ。でも一体誰が、どこに…」

『誰』
「薄々感づいてはいただろ?勿論俺と君達だ。あれは俺が香月司令に進言したものなんだ」

篁唯依
「私達が…?どういう事かお聞きしてもよろしいですか?」

『誰』
「後ほどブリーフィングでな。今は連携の再確認を兼ねて、BETAの迎撃を行う」

崔亦菲
「そうね、アンバールハイヴが堕ちたせいか、最近野良BETAが多くて。一石二鳥ね」

篁唯依
「うん。では『誰』大尉、参りましょう。久しぶりの連携、腕が鳴ります」

ED
========
『誰』
「…以上の事から、香月司令はオリジナルハイヴへの再突入を決断し、その任務を我々が拝命した」

篁唯依
「大尉の脳裏に突然浮かんだ、世界融合の原因と思しきビジョン…ですか」

『誰』
「そうだ。俺は単なる思いつきとは思えない。記憶は曖昧だけど、多分真実なんだと思ったんだ」
「俺達はこれまでに、何度も世界を移動するという不思議な経験を重ねてきただろう?」
「そしてその時の記憶は今でも鮮明に残っている。だが、そんな経験は俺達だけのものだろうか?」

崔亦菲
「別世界に住む私達も同じような経験をしている可能性は十分にあるわよね」

篁唯依
「つまり大尉は、別世界の自分の記憶が他の世界の自分と共有されていると言いたいのですね?」

『誰』
「ああ。香月司令も夢の一部は共有された記憶である可能性を指摘している。そして今回は――」
「オリジナルハイヴが再活性化しているという観測結果もあり、俺の言葉が決断を後押しした…」

篁唯依
「それにしても冒険よね。その仮説だけで今の疲弊した人類を喀什に再突入させようってんだから」

『誰』
「あの人は元来物理学者だ。司令の提唱する因果律量子論は、世界の現状と完全に合致するらしいぞ」

崔亦菲
「ふうん…私には正直難しい話ね。でも単なる思いつきでないのならいいわ。無駄死には嫌だもの」

篁唯依
「念のための確認ですが…。桜花作戦は間違いなく成功した…んですよね?」

『誰』
「ああ、それは間違いない。常識的に考えれば、再活性化はあり得ない」

篁唯依
「委細承知しました。その大役、必ずまっとうして見せます」

崔亦菲
「そうね、腕が鳴るわ」

『誰』
「決行日等の詳細は決まり次第伝達する。それまで俺達は野良BETAの掃討だ」
「HSSTに万が一の事が起きないよう、心して任務にあたってくれ」

一同
「「了解!!」」



072 - エジプト・カイロ基地周辺2

OP
========
崔亦菲
「…あれから数日かあ。連日連夜スタッフは頑張ってるけど、いつになったら上に行けるのかしら」

篁唯依
「発射場の修復、シャトルの搬入…部隊規模もそれなりだし、そう簡単にはいかないだろうな」

崔亦菲
「けど、こうしている間にもオリジナルハイヴには何かが起きている訳よね?じれったいわ…」

篁唯依
「気持ちはわかるが、気を引き締めてくれ崔中尉。BETA掃討任務で油断し怪我でもされては困る」

崔亦菲
「分かってるわよ!そういうあんたこそ、気負い過ぎて変なミスしないでよね」

『誰』
「ふたりともここにいたのか。そろそろ恒例のBETA掃討の時間だぞ」

崔亦菲
「え…もうそんな時間ですか!?でも、呼び出しの放送流れなかったような…」

『誰』
「最近、電気系統のトラブルが多いようだな。発射場に電力を回す為の工事が原因らしいが…」

篁唯依
「しかし、自分が弛緩していたのも確かです。中尉を律する前に、まず自分の事でした…」

崔亦菲
「堅苦しい事はいいから、早く行きましょう」

ED
========
崔亦菲
「ところで大尉。こうやって私達の連携が深まるのはそれでいいんですけど…」
「そもそも、オリジナルハイヴに軌道降下するのは私達だけですか?増援はないんですか?」

篁唯依
「実は私も気になっていました。工事の規模からすると、かなり大規模な気がするのですが」

『誰』
「俺達だけでないことは確かだ。だがそれがどこの部隊なのか、詳細は俺にもわからない」
「もしかしたら、まだ調整に難航しているのかもしれないな」

篁唯依
「確かにどこも、自国の立て直しで手一杯でしょう。日本も主導権を握れたのはたまたまです」

『誰』
「香月司令がいたから…この異常が桜花作戦直後に起きたから、だ。でなきゃ既に滅びていたかもな」

篁唯依
「他国がどうなっているのか、状況は未だ正確に伝わってきません。世界はどうなっているのか…」

崔亦菲
「特に米国が出しゃばって来ないのが不気味よね。一体あの国は今どういう状況にあるのかしら」

『誰』
「さすがにこれだけ時間が経てば、南極基地ならある程度の情報を掴んでいるだろう」
「そのあたりは、香月司令にお任せする他ないな。まあとにかく――」
「どの国のどの部隊が同行するとしても、俺達が主力なんだ。気を引き締めてかかろう」

一同
「「了解!」」

『誰』
「それじゃ、帰投するとしよう」



073 - エジプト・カイロ基地周辺3

OP
========
――ヴィーッ!ヴィーッ!!

篁唯依
「ファング中隊集合しました!」

崔亦菲
「暴風中隊全員集合!大尉、この非常警報は一体――」

『誰』
「旅団規模のBETA群が当基地に向けて接近中だ。このままでは30分後に基地は飲み込まれる」

篁唯依
「な…!?ど、どうしてそれほどまでに接近を許したのですか!?」

『誰』
「電気系統の不調で、基地の機能が一部死んでいた。もちろん予備電源も働いていなかったそうだ」

崔亦菲
「まったく…けど、それにしても尋常じゃない数だわ。今までのは何だったのよ!」

『誰』
「アンバールハイヴの残党のごく一部だったんだろう。本流はマシュハドハイヴに逃げ込んだんだ」
「マシュハドには恐らくオリジナルハイヴの残党も退避していた筈だ。そのせいで飽和状態になった…」
「こいつらを叩かなければ、安定を取り戻したアフリカに再びハイヴが建設されてしまうだろう」
「既に基地主力部隊が出撃した。だがそれだけでは戦力不足だ。俺達も出ることにする」
「この戦いで我々に万が一の事があれば、降下作戦に大きな影響が出る事は承知している。だが…」
「このままでは降下作戦は致命的ダメージを受けるだろう。選ぶ道はひとつしかない」

篁唯依
「…苦渋の決断だったと言う事ですね。仰りたい事はわかります。必ず生還します!」

崔亦菲
「機体も、できるだけ傷つけないようにしなくちゃね!」

『誰』
「そういう事だ。よし、出撃だ!」

一同
「「――了解!!」」

ED
========
篁唯依
「『誰』大尉!左翼に展開していた基地主力部隊が全滅との報が入っています!」

崔亦菲
「光線級の存在は確認できない!どうして爆撃機を出さないのよ!」

『誰』
「それが今の人類の現状だ!恨み言は程々にしとけ!篁中尉、移動するぞ!フォローに回る!」
「ファング中隊はBETAをケツから叩けッ!俺は頭を押さえる。暴風中隊はここに留まれ!」

崔亦菲
「了解ッ!大尉お気を付けて!」

『誰』
「向こうはかなり基地に接近されていた。急がなければそのまま抜かれてしまう――」

篁唯依
「急ぎましょう、大尉!!それだけは絶対に防がねば!」

『誰』
「分かってる!ロケット点火だ!!限界までぶっ飛ばせ!!」

篁唯依
「――了解!!」



074 - エジプト・カイロ基地周辺4

OP
========
『誰』
「…BETAの進軍速度が明らかに低下している。死骸が邪魔をして上手く動けないでいるのか…」
「良くやってくれた…。これなら何とか食い止められるぞ!」

篁唯依
「ですが大尉…後続が迫っています。到達まであと15分!」

『誰』
「くっ…。とにかく前線を押し上げる!後続が到達する前に、目の前の奴らを殲滅するほかない!」

篁唯依
「――大尉!戦車級が一部抜けました!シャトル発射場に向かっていますっ!」

『誰』
「――戦車部隊に任せろ!俺達はこれ以上抜けさせない事だけ考えるんだ!うぉぉぉぉぉぉッ!!」

篁唯依
「はあああああっっっ!!!」

ED
========
『誰』
「はあ…はあ…はあ…。何とかあらかた片付けたな。これで後続を迎え撃てる」

篁唯依
「大尉、部隊の残弾が殆ど尽きています。補給が必要です」

『誰』
「それは俺も同じだが、こちらに補給を寄越す余裕はないようだ。一端下がらなければ…」

篁唯依
「大尉が補給を済ます間、我が隊がBETAの進軍を押さえます」

『誰』
「わかった。だが補給をするのはファング中隊からだ。残弾の多い方が先に行うのがセオリーだ」

篁唯依
「いえ、我が隊には近接戦に長けた者が多いので、それを加味すれば持ち堪えられます」

『誰』
「だがその長刀が使い倒された時、この地で整備するのは困難だ。極力使わないのが望ましい」
「ここはセオリー通り中尉から補給してくれ。可能なら補給コンテナを担いで来てくれると有難い」

篁唯依
「…了解。では早急に補給を済ませ、コンテナを担いで来ます。それまで宜しくお願いします!」

『誰』
「ああ、心得た!」
「…畜生、ここに来てワラワラと。だが、どんな状況でも絶対にお前等の好きにはさせないッ!!」



075 - エジプト・カイロ基地周辺5

OP
========
『誰』
「…さて、とは言ったものの、後続のBETAをどう迎え撃つべきか…」
「やはりここは、前衛の動きを封じ壁を作り続け、上手く迂回誘導する事を繰り返すべきだが…」
「果たしてそう上手くいくのか…?いや、上手くやるんだ」
「失敗すればシャトルが襲われる。そうなれば降下作戦は絶望的だ。何としても成功させなければ…」
「――全機、今から作戦を指示する!よく聞いてくれ!」
「………」

ED
========
『誰』
「…よし、いいぞ!徐々にBETAがシャトル発射場から遠ざかっている。全員その調子だ!」

篁唯依
「――『誰』大尉!大尉、ご無事ですかッ!!」

『誰』
「篁中尉!待っていたぞ!」

篁唯依
「大尉の差配、お見事です!この調子でいけば、BETA共を発射場から遠ざけられますね!」
「補給コンテナを後方に設置してあります。後は我々に任せ、早く補給を!」

『誰』
「了解、助かった!」
「よし、順番に補給を済ませろ。俺は一番最後でいい」

ゴゴゴゴゴゴゴ………!!

『誰』
「な…なんだ!?この振動は…まさか!?」

篁唯依
「ち、地下ですッ!!大尉、そこを離れて――」

『誰』
「うわああああっっっ!!」

篁唯依
「た、大尉ぃぃぃぃッッッ!!!」



076 - エジプト・カイロ基地周辺6

OP
========
『誰』
「…………………………」
「…………?」
「お、俺は…どうなったんだ?生きているのか…?」

ウォーケン少佐
「人類防衛機構軍の部隊に告ぐ!早くその場を離れ、後退しろ!BETAは我々が食い止める!」

『誰』
「な…い、一体何だ?」

ウォーケン少佐
「こちらは米国陸軍第66戦術機甲大隊指揮官、アルフレッド・ウォーケン少佐だ!」

『誰』
「米国軍だと…?」

ウォーケン少佐
「詳しい事は後だ!早く下がって補給を済ませろ!このBETAを退けねば、人類の未来は無い!」

神宮司少佐
「『誰』大尉!間一髪間に合ったようだな」

『誰』
「じ、神宮司少佐!?」

神宮司少佐
「後方にも先発のBETAが残っているぞ。戦車部隊を援護しつつ補給に向かってくれ!」

『誰』
「り、了解!ウォーケン少佐、神宮司少佐、篁中尉、ここは一端お任せします!」

ED
========
『誰』
「こちら『誰』、補給完了!これより戻ります!」

ウォーケン少佐
「いや、大尉はそのままシャトル発射場へ向かえ。一部の大型種が抜けた!」
「現在、米国海兵隊が戦闘中だ。合流して殲滅せよ!」

『誰』
「海兵隊まで来たというのか!?――了解、海兵隊と合流します。全機続けッ!!」



077 - エジプト・カイロ基地周辺7

OP
========
「――――――」

『誰』
「…あれか!F-18E!こちらは人類防衛機構軍所属、『誰』大尉だ!貴隊と合流する!」

リリア
「こちらは米国海兵隊第318戦術機隊『ブラック・ナイヴス』隊長、リリア・シェルベリ中尉です!」
「話は聞いています!右翼の大型種をお願いできますか!?」

『誰』
「了解だ!全機、吶喊するぞ!」
「この場所は何としても守るんだ!1匹たりとも逃すなよッ!!」

ED
========
『誰』
「よし、こちらは片付いた!そちらはどうか、シェルベリ中尉」

リリア
「こちらもほぼ片付きました!」

『誰』
「よし、次は戦車部隊の援護だ。小型種をやる!確実に仕留めてくれ!!」

リリア
「――了解!」



078 - エジプト・戦闘シミュレーション

OP
========
ウォーケン少佐
「では、改めて自己紹介といこう」
「私は米国陸軍第66戦術機甲大隊所属、アルフレッド・ウォーケン少佐だ」
「こちらは米国海兵隊のリリア・シェルベリ中尉。我々は軌道降下作戦に同行すべく赴いた」

『誰』
「これほどの規模となれば作戦の成功確率も大幅に上がる!有難い事です、少佐」

ウォーケン少佐
「…残念だがその期待に応える事はやや難しい」
「我が米国は、世界融合事変により、国内各地に複数のハイヴを抱える最前線国家となった」
「通信も交通も分断し、軍の機能…いや、国家としての機能すらも維持するのが困難な状況だ」
「無論、物流も滞り、市民生活は元より兵器の運用も脅かされている。これではBETAと戦えない」
「そこで政府は、現在衛星軌道上に建造中の第五計画用施設から、資材の調達を行う事を決定した」
「我々は貴官らと宇宙に発つが、その後は別行動となる。これは香月司令も了承済みだ」
「その代わり、軌道降下に必要なシャトル等の配備には最大限の協力をするという条件だ」

『誰』
「そう…ですか。米国が今そんな事になっていたとは…」

ウォーケン少佐
「しかし、その謎を解き明かす為に貴官らがオリジナルハイヴに再び臨むという事も理解はしている」
「米国としても根本問題の解決こそ最優先と位置付けているのだ。そこで――」

リリア
「我々海兵隊が、軌道降下作戦に参加します。小規模ではありますがお力にはなれるでしょう」

『誰』
「そうか、なるほど…。いや十分に心強い。宜しく頼む」

リリア
「早速ですが大尉、時間がありません。連携確認のため、シミュレーター訓練をお願いします」

『誰』
「そうだな、休んでいる暇はない。15分後にシミュレータールームに集合だ」

ED
========
『誰』
「米国海兵隊…噂に違わぬ実力だ。シェルベリ中尉、素晴らしい腕前を見せて貰ったよ」

リリア
「ありがとうございます。ですが、納得出来ない部分があったので、もう1回お願いできませんか」

『誰』
「それは構わないが…失礼ながら、どこか思い詰めていないか?もしよければ教えて欲しい」

リリア
「…そう見えますか。まだまだ未熟ですね。私は立派な仲間達のおかげで生き残らせてもらったんです」
「本土にハイヴが出現した事で、攻略に核を使用できない米国は、ハイヴ突入作戦を決行しました」
「しかし我々にそのノウハウは不足しています。被害は拡大し続け、私の部隊も私以外全滅しました」
「私を逃がしてくれたダリル隊長、そして守ってくれたコリンズ少尉、その他多くの仲間の想い――」
「私はそれを胸に生き続け、必ず仇を取りたいんです」

『誰』
「そうか…話してくれてありがとう。辛い事を思い出させてしまったようだ」

リリア
「いえ、私も想いを新たにできました。それでは、もう1度、よろしくお願いします!」



079 - エジプト・カイロ基地シャトル発射台1

OP
=========
――ヴィーッ!ヴィーッ!!

『誰』
「BETAめ、狙いすましたかのように、俺達の邪魔をしてくれる。――全員出撃だ」

神宮司少佐
「待て、『誰』大尉!貴様達は待機していろ。ここは我々が出る」
「シャトル打ち上げは今日明日にも行われる。貴様達や貴様達の機体に何かあれば致命的だ」

『誰』
「神宮司少佐、それは少佐も同じでしょう。基地主力部隊が壊滅的な今、休んでいる事はできません」

神宮司少佐
「我々と貴様達は違う。大尉の部隊は作戦の主力だ。万全の状態で作戦に臨んで貰わねば――」

『誰』
「…少佐、データリンクの確認を。残念ながらそのお気遣いを受ける余裕はなさそうです」

神宮司少佐
「く…何と言う数だ。済まない大尉、貴様に大きな負担をかけてしまうことになる…」

『誰』
「お気になさらず。ここは全軍で迎え撃ち、部隊あたりの負担を少しでも減らす方が賢明でしょう」
「今もっとも拙いのは死ぬ事、次に行動不能に陥る事です。動ければ次に繋げようはあります!」

神宮司少佐
「うむ。よし、全軍で出るぞ。…………大尉、くれぐれも死ぬな。危険を感じたら必ず下がれよ?」

『誰』
「――了解!!」

ED
=========
『誰』
「何とか退けられたが…この様子では、いつまた大規模侵攻が起きても不思議はないな…」

神宮司少佐
「この事態を受け、南極基地から計画を早めるよう指示が出ているが、これでは難しそうだな…」

『誰』
「何だかんだで基地施設もかなり被害を受けましたからね…。HSSTが守られただけでも…」

神宮司少佐
「とにかく、カーゴへの搬入ギリギリまで油断はできない。次もあるものとして考えよう」

『誰』
「了解!」



080 - エジプト・カイロ基地シャトル発射台2

OP
=========
『誰』
「カーゴへの搬入準備を進めろ!今度BETAに襲われたら、本当にどうする事もできなくなるぞ!」

篁唯依
「いよいよですね、大尉」

『誰』
「ああ…打ち上げ予定時刻まであと2時間。頼む…無事に過ぎてくれ…………」

――ヴィーッ!ヴィーッ!!

篁唯依
「…叶わぬ願いだったか」

神宮司少佐
「『誰』大尉、貴様等はそのままカーゴに入れ。ここは我々が引き受ける」

『誰』
「…………了解っ。よろしくお願いします……」

CP
「――大尉!発射場にBETAが!ち、地下から次々と出現して――ああッ!シャトルがッッ!!」

『誰』
「ッッッ!!くそぉぉぉおお!!!ファング、暴風両中隊は動くな!俺が出るッ!!」

神宮司少佐
「『誰』大尉、やめろっ!」

『誰』
「シャトルが1機やられたんです!俺が出なきゃ更にやられる!」
「中隊全機!これ以上シャトルに手を出させるな!何としてでも守り抜けッッ!!」

ED
=========
神宮司少佐
「南極基地から指令!打ち上げ準備完了次第、順次打ち上げる!『誰』大尉戻れッ!!」

『誰』
「し、しかし!今ここを離れたら…」

神宮司少佐
「貴様はよくやった!後は我々だけで何とか抑えられる。今のうちに行くんだ!」

『誰』
(嘘だ…少佐達だけでは防げない。だが打ち上げが終わらねば、いつまでも少佐達は下がれない…)
「…了解。神宮司少佐、後はよろしく頼みます!」

崔亦菲
「大尉!今この場を離れたら、少佐達は持ち堪えられませんよッ!!私も残ります!」

『誰』
「駄目だ!少佐が同行できない事で作戦の成功確率は低下している。これ以上は絶対に駄目だ!」
「……今は俺達が為すべき事に集中しろ」

崔亦菲
「く…………」

CP
「――――――」
「打ち上げ10秒前――9、8…」

『誰』
「少佐…間もなく通信が途絶します。必ず生きて…生きて再会しましょう!」

CP
「5、4、3――」

神宮司少佐
「そうだな。まあ、それは割合と簡単に叶いそうだ。何しろ貴様はこの後に及んで――」
「私の心配をしているようだしな。オリジナルハイヴを舐めたその態度…大物だよ」

『誰』
「少佐…………」

神宮司少佐
「『誰』大尉、頼んだぞ。この世界の混乱を正してくれ!」
「桜花作戦で散っていった多くの命が無駄にならぬよう…やっと掴んだ人類の未来を――」
「絶対に取り戻すんだ!」

『誰』
「はっ――!この命に替えても、必ず!!」

CP
「2、1――」
「――ゼロ!」

『誰』
「うおおおおおお――!!!」



081 - 中国・オリジナルハイヴ上空

OP
=========
――高度500km     地球周回低軌道

『誰』
(ウォーケン少佐は、無事目的地に到達できただろうか…?それを願うばかりだ)
(それにしても俺達は、何回地球を回ればいいのか…。状況がさっぱりわからないな…)
(主機も落ち、最低限の機能しか生きてないからな。正直宇宙に来たという実感すら薄い)

香月夕呼
「――全員お待たせ。いよいよ再突入よ。詳細を伝えるからよく聞きなさい」

『誰』
(――来た!)

香月夕呼
「オリジナルハイヴ近辺に光線級は確認されていないわ。奇跡的な幸運なのか別の理由によるものか…」

『誰』
(桜花作戦であらかた倒したしな。BETAの生成にはG元素が必要だと司令は言っていたが――)
(それも殆ど失われた筈。つまり再活性化する際、BETAは質より量を優先した…という事か?)
(…その物量こそBETAが脅威たるゆえんだが、今は逆にそれが幸いしたのは皮肉と言うべきか)

香月夕呼
「――とは言え油断はできない。座標を分散して降下後、地表で合流して頂戴」
「合流し次第、所定の座標に向かいなさい。光線級はいないからと言って楽観はしない事ね」

『誰』
(分かってるさ。その分他のBETAで溢れかえっている筈だ。やられてたまるか!!)

香月夕呼
「――『誰』」

『誰』
「――ッ!?は、はい!」

香月夕呼
「あんた達には期待しているわよ?必ず結果を持って来なさい。――人類のためにね」

『誰』
「はっ!任せてください。必ず期待に応えて見せます!」
「――全機、再突入開始ッ!!」
「うおおおおお――」
「おおおおお――――ッ!!」
「――見えた!オリジナルハイヴ!全機地表到達までの間、銃弾の雨を降らせてやれっっ!!」

ED
=========
『誰』
「こちら『誰』、降下座標に到達!合流地点に向かう!光線級は確認出来ない!」

篁唯依
「ファング中隊降下完了!こちらも光線級は確認できず。移動を開始する!」

崔亦菲
「暴風中隊同じく!それにしても、BETAの数が想定より少ないわね…」

篁唯依
「ハイヴの中で待ち構えているのかもしれませんね」

『誰』
「地上のBETAで全部かもしれないぞ?」

崔亦菲
「そういう楽観って、大抵の場合叶わないんですよね~~」

『誰』
「ま、気休めにもならなかったな。とにかく油断するな!合流地点で無事に落ち合おう!」

一同
「「――了解!!」」



082 - 中国・オリジナルハイヴ地表1

OP
========
リリア
「――こちらナイヴス1!『誰』大尉、聞こえますか!?」

『誰』
「どうしたナイヴス1!?」

リリア
「地下から突如出現したBETAに足止めを喰らっています!合流地点への到達は少し遅れそうです」

『誰』
「了解!暴風1、援護に回ってくれ。俺とファング中隊は合流次第先行して中の様子を探っておく」

崔亦菲
「了解。無理して奥まで突っ込んでいかないでくださいね!」

『誰』
「分かってる。俺はそこまで欲張りじゃないよ。それよりここで機体に余計な負荷はかけたくない」
「少しでも機体をまともなままでハイヴ突入を果たしたい。援護宜しく頼む!」

崔亦菲
「分かってます!それでは後ほどッ!!」

『誰』
「中隊全機、引き続き進め!」

ED
========
篁唯依
「門まで2000!BETA反応に特段の変化は見られません!」

『誰』
「ハイヴ内のBETAが特別多い訳ではないと思っていいのか…?最後まで油断せずに進もう」

篁唯依
「了解」

――ドクン!

『誰』
「――待て中尉!止まれ!嫌な予感がする…いや、予感と言うより、これは…記憶なのか?」

篁唯依
「記憶?それは他世界の自分の記憶が共有されているという、例の現象ですか?」

『誰』
「…ああ。だがこれを記憶と言っていいのかどうか…脳裏に浮かんだのは見た事もないBETAだ」

篁唯依
「どうしますか大尉?ここで止まっていてもタイミングを逸してしまいかねませんが…」

『誰』
「進むさ。何が起きようとも、それ以外に我々が採るべき選択はないんだから」
「但し、くれぐれも慎重に行こう。センサー類には最新の注意を払ってくれ」

篁唯依
「了解…」



083 - 中国・オリジナルハイヴ地表2

OP
========
――ヴィーッ!ヴィーッ!!

『誰』
「――ッ!?レーザー照射警報!?」

篁唯依
「まさか!?一体どこからッッ!?」

『誰』
「門の麓だッ!全機乱数回避ッ!」

篁唯依
「大尉ッ!レーダーを見て下さい!何でしょうか、この巨大な影は…。要塞級よりも遥かに大きい…」

『誰』
「巨大な影…?いや、そんな馬鹿な…」

篁唯依
「大尉、心当たりがあるのですか!?」

『誰』
「とにかく今は集中しろ!奴の足元に少数ながら光線級がいる!まずはそれを叩くぞ!!」

ED
========
篁唯依
「た、大尉…あれは何ですか!?見たこともないBETAです!」

『誰』
「や、やはりあれは…俺は奴に見覚えがある。俺は…別の世界であれと戦っている!」
「桜花作戦当時、陽動作戦が行われたエヴェンスクハイヴに出現した、新種の話は知っているか?」

篁唯依
「この世界の桜花作戦ですね?はい、話には…という事は、あれがその新種…!?」

『誰』
「そうだ!光線級と要塞級を足したような…絶望的に手強い奴だ…」

篁唯依
「まさか、想定よりBETAの数が少なかったのは…これを生み出す為だったというのですか――?」
「だが何故だ?私達が降下中にレーザーを撃たれたら、ひとたまりもなかったのに…」

『誰』
「BETAの行動は理解不能だが、それは確かに理に適っていない。何か理由がありそうだ」
「それを知る為にも奴を倒す必要がある。なあに俺は一度勝っている。…別世界での事だが」
「各機、奴は無数の衝角を射出して攻撃してくる。かわしながら近づき一気に叩く!」

篁唯依
「――了解!」

『誰』
「行くぞッ!!」



084 - 中国・オリジナルハイヴ地表3

OP
========
『誰』
「はあ…はあ…はあ…。何とか撃破できたな…」
「…各機、状況を報告。全員無事か…?」

篁唯依
「…全員生存しています。が、まともに動ける機体は数えるほどしかありません」
「弾薬も半分を消費しました…。しかし大尉の隊はさすがですね。全機健在とは」

『誰』
「…知っているぞ。ファング中隊が俺達の盾になっていた事を。そのおかげだ」

篁唯依
「大尉達は切り札です。何としても無傷で中に送り込まねば、人類に未来はありませんから」

『誰』
「感謝する。…中尉、動ける機体で隊を再編してくれ。ハイヴに突入するぞ」

篁唯依
「了解。引き返すこと叶わぬ身なれば、全力で進むのみです!」

『誰』
(無茶だとは言わないんだな。その潔さがありがたい…)

ED
========
篁唯依
「門の確保に成功しました!『誰』大尉、このまま突入を開始しましょう!」

崔亦菲
「待ちなさい、あなたは私の後よ」

『誰』
「――崔中尉!よくぞ追いついてくれた!」

崔亦菲
「追いついてなんかいませんよ。あんなデカブツとの戦いで何もフォローできませんでした…」

『誰』
「気にするな。それよりも部隊の状況はどうだ?」

崔亦菲
「全機健在です。軽微な損害はありますが、問題ありません!」

『誰』
「了解。それじゃ進むぞ。暴風中隊に先陣を切ってもらおう」


「殿はブラックナイヴスが務めます。さあ行きましょう!」

『誰』
「よし、全機、ハイヴに突入だ!」

一同
「「「――了解!!」」」



085 - 中国・オリジナルハイヴ内部1

OP
========
崔亦菲
「ここがオリジナルハイヴ…。心なしか異様な雰囲気よね…」

リリア
「今のところ、世界融合によるハイヴの寸断などは見当たらないようですね」

崔亦菲
「――ちょっと!見てよこのおびただしいBETAの死骸を!一体どうなってるの!?」

『誰』
「それは…桜花作戦時のものだろう。国連横浜基地のA-01部隊が突入した時のものだ」

崔亦菲
「…凄まじいわね。私達が地表で相手をしたのなんて、ものの数に入らないわ」

『誰』
「それにしても、BETAの姿が見当たらない――いや、これはBETA反応だ!」

リリア
「随分とこぢんまりとした感じね。でも容赦はしない!!」

ED
========
リリア
「主縦坑まで一気に到達できましたね。こうも楽だと、罠か何かだと疑ってしまうわ…」

崔亦菲
「確かに。BETAが罠を張るなんて事はあるはずがないのに。大尉、一気に降りますよね?」

『誰』
「もちろんだ。今そちらにA-01部隊が通ったルートマップを送った。そこを辿ろう」

リリア
「正直、ここまでは小手調べ。本番はこれからよね。この先で何が起きているのか…」

『誰』
「この世界の混乱を解く鍵はそこにあると俺は確信している。さあ…進もう」

一同
「「「――了解!」」」



086 - 中国・オリジナルハイヴ主縦杭1

OP
==========
篁唯依
「…………………………。大尉、質問の許可を」

『誰』
「言われなくても分かっている。この…更に下へと続く主縦坑の事だろう?」

篁唯依
「こんなものはA-01部隊の進行ルートにはありません。いえ、それだけでなく――」
「ハイヴのセオリーからしても、これほど深い主縦坑は考えられません…」

『誰』
「横穴はあるか?A-01部隊が底部に到達後進んだ横穴がある筈なんだが?」

崔亦菲
「いえ、見当たりません。ちなみにこの縦穴、深さは測定不能です」

『誰』
「いくらなんでも、こんな短期間でここまでハイヴが成長する筈がない…どういう事なんだ?」

篁唯依
「大尉、下からBETA反応です。いずれにしろ進む以外に道はありません。行きましょう」

『誰』
「そうだな。この先に何があるのかが分かれば、謎の答えも見つかるかもしれない」

崔亦菲
「でもこれ…帰る事なんてできるのかしらね――って!何でもないわ」

『誰』
「弱気になるのは早い。今はとにかく全力で進むだけだ。行くぞ!」

ED
==========
リリア
「主縦坑の底部に到達した模様です。大体想定していた倍の長さを下った事になりますね」
「しかし…BETAが散発的に出て来た事を除けば、特別変わったところはなさそうですが…」

『誰』
「いや、そんな事は無いぞ。十分奇妙な現象が起きている」

リリア
「え…?」

篁唯依
「シェルベリ中尉、A-01部隊が進んだマップと現在の地形を照合してみてください」

リリア
「それってどういう……………………あっ!」

『誰』
「そうだ。この場所こそ、A-01部隊が通った、主縦坑の底部だ。何故かこんな場所にある」

リリア
「どういう事?それじゃまるで、主縦坑の”途中”が延長されたみたいじゃない!」
「ここは穴なのよ?下に延伸するならともかく、”途中”を延ばす事なんて出来る筈ないのに…」

『誰』
「2つあるんだ…」

篁唯依
「あの、大尉、今何と?」

『誰』
「オリジナルハイヴは、2つある。それが縦方向に、ズレて重なっているんだ…」

リリア
「ハイヴが縦にズレて重なっている…。だから主縦坑は深さが2倍で――」
「あたかも”途中”が伸びていたように感じられたという事ですか?」

『誰』
「もう少し調べる必要はあるが、そう考えれば辻褄は合うだろう?」

篁唯依
「マップと同様の横穴もあります」

『誰』
「ここがどちらの世界のハイヴかはわからないが、とにかく進んでみよう…」



087 - 中国・オリジナルハイヴ主縦杭2

OP
==========
崔亦菲
「…何からなにまでマップと同じ。やっぱり大尉の仮説は正しかったって事になるのかしら?」

篁唯依
「だとすると…新種のBETAの存在を始め、色々と説明がつくのではないだろうか」
「まず”1つめ”のオリジナルハイヴ――即ちこの世界のオリジナルハイヴは…」
「桜花作戦の成果によってほぼ壊滅状態に陥った。そして”2つめ”の別世界のオリジナルハイヴ――」
「これもまた無傷ではない。戦闘の形跡が見受けられる。別世界で桜花作戦が行われた証であろう」

『誰』
「…だがその世界では、作戦は失敗した可能性が高い…」

崔亦菲
「え…どうしてですか!?」

『誰』
「反応炉を破壊できずに全滅したかもしくは撤退を余儀なくされた。だからBETAが復活したんだ」
「そして、言わば第二次桜花作戦が発動する前にBETAは対処した。それがあの新種だ」
「あいつはエヴェンスクハイヴで、衛星軌道上のA-02を撃ち落とす為に生まれたらしい」
「その情報がフィードバックされ、ここで生み出されるに至ったと考える事ができると思う」

崔亦菲
「そんな…。でもそれじゃあ、何故私達は撃ち落とされなかったのかしら?」

『誰』
「それは恐らく…………っと!新たなBETA反応だ。続きは奴らを殲滅してからにしよう!」

ED
==========
『誰』
「先程の話の続きだが…。新型BETAに俺達が撃ち落とされずに済んだ理由は――」
「単純に迎撃準備が間に合わなかったからじゃないかと思っているんだ」

リリア
「深さ2倍のハイヴは、BETAにとっても問題がある…奴らが望んでこうなった訳じゃないから…」

篁唯依
「地球にフェイズ6以上のハイヴがないのには理由がある筈なのに、その規模を無視したら――」

『誰』
「どこかに弊害が出るに決まっている。例えばそう…俺達に気付いて表に向かった時はもう遅かった」
「…というのは一見マヌケな話だがあり得ると思う。奴らは知的生命体ではないんだから」

リリア
「それでも奴を生み出した理由は…あの並外れた戦闘能力が必要だと判断したから…」
「そして結果として、その事が仇となり、我々の進軍を許しているという事ですね?」

篁唯依
「私も中尉の見解に賛同します。とにかく奴の戦闘能力は並外れていましたから…」

『誰』
「せめて光線級でとどめておけばよかったものを、欲張った結果、量を稼ぐ事ができなくなった…」
「篁中尉の言う通り、奴は大きな脅威だったから、BETAの選択は理解できる。だが間違った」
「世界の融合は俺達に牙を剥いてばかりじゃない…と信じたいな」

リリア
「そうですね。けどこの横坑、次第に戦闘の形跡が無くなってない?もしかしてこっちのハイヴは…」

『誰』
「別世界の方かもしれないな。もう少し先に進んでみれば、確証が得られるかもしれない」
「その仮説なら、この先のどこかで別世界のA-01は全滅したか撤退した事になり――」
「その証拠に辿り着く事ができるからだ。全機その辺りを意識して進んでくれ」



088 - 中国・オリジナルハイヴ内部2

OP
========
リリア
「『誰』大尉…確認ですが。大尉の仮説では、このハイヴの反応炉は生きてるんですよね?」

『誰』
「そうだ。2つのハイヴにある反応炉のうち、この世界のものは破壊されたが――」
「本来別世界にあったもう1つのハイヴの反応炉は生きている」
「さっきも言ったが、俺はBETA再活性化はそれが原因だと思っているからな」

リリア
「では、その反応炉を破壊すれば、世界の融合は解消されると思いますか?」

『誰』
「…正直それはわからない。そんな単純な話ではないとも思うが…ただ可能性は十分ある」
「もっともその可能性がゼロでも、オリジナルハイヴの反応炉は破壊しなければならないんだが」

リリア
「それはそうですね」

篁唯依
「――『誰』大尉!前方にBETA反応多数!」

『誰』
「確認した。とにかく俺達は着実に進んでいく他ないんだ。全隊、迎撃用意!」

ED
========
篁唯依
「『誰』大尉、これより先に戦闘の痕跡がありませんね。ここは別世界のハイヴだったか…」

『誰』
「この世界では、人類はここまでしか到達する事ができなかったと言う事か…」

篁唯依
「その世界の人達の無念が…ひしひしと伝わってきます。我が事のように悔しいです…」
「このハイヴが元々あった世界…そこに生きる人類は、一体どうなっているんでしょうか…」

『誰』
「悲観しても始まらない。俺達は人類の未来の為にここにいるんだ。立ち止まらずに進もう」

篁唯依
「了解!」

『誰』
(…とは言え、あまりにも深く来すぎたな。正直怖い。A-01部隊の隊員もそうだったのか…)
(俺達と違って、全てが初めてだったんだ、当然だろう)
(それでもやり遂げた。できずともここまで突き進んだ。絶対に弱音など見せる訳にはいかない)
(俺の言葉を信じてくれた司令、尽力してくれた人達、そして同行してくれた仲間達――)
(その想いに応えるためにも、絶対に最深部に進んで、やり遂げてやるっ!!)



089 - 中国・オリジナルハイヴ主広間

OP
=========
リリア
「『誰』大尉!ここは…。隔壁型BETAを確認。入り口は完全に閉まっています」

『誰』
「やはり”このハイヴ”ではここまで到達できなかったんだな。よし、開放準備にかかってくれ」

リリア
「…桜花作戦では有効だったという開閉物質…。対処されていなければいいけど…」

『誰』
「戦術機が通過できる程度まで開放され次第、俺とファング中隊が通過し、奥の第二隔壁へと進む」
「第二隔壁はファング中隊が開放、その先の大広間には俺が入る」

崔亦菲
「その先に何があるのか、きっちり確認して解決をお願いします!」

『誰』
「分かっている。桜花作戦の情報があるおかげで、重頭脳級の対処法は理解できている。任せてくれ」
「それより、隔壁をまたぐと通信に大幅な支障が出るのは知ってるな?十分留意してかかるんだ」
「あと――第一隔壁には大量のBETAが押し寄せて来る筈だ。大変だろうが…頼んだぞ」

リリア
「了解。米国海兵隊の底力を見せつけてやります」

崔亦菲
「――BETA接近!」

『誰』
「全機、暴風中隊を守れ!崔中尉、隔壁開放を頼んだぞ!」

ED
=========
「――――――」

崔亦菲
「隔壁開放!『誰』大尉、行って下さい!」

『誰』
「了解!篁中尉、俺が先に入る。くれぐれも開閉剤の入ったタンクに傷を付けさせるな!」

篁唯依
「――了解!崔中尉、シェルベリ中尉、ここは頼んだぞ!!」

崔亦菲
「任せなさい!」

『誰』
「行くぞ…前進だッ!!」



090 - 中国・オリジナルハイヴ隔壁

OP
=========
篁唯依
「第2隔壁まで残り300!BETAの数、およそ250!…少ないですね」

『誰』
「いや、偽装横坑に気をつけろ!いきなり出てくるぞ!」

篁唯依
「大尉、言っているそばから!」

『誰』
「極力相手をするな!まずは隔壁に到達する。そこから俺が戻って奴らを蹴散らす!」

篁唯依
「了解!」


「………」

篁唯依
「大尉、隔壁に到達!これより開放作業に入ります」

『誰』
「了解、俺は戻ってBETAを迎え撃つ!」
(できる限り殲滅しておかないと、俺が抜けた後、中尉の部隊では守り切れない可能性がある…)

篁唯依
「よろしくお願いします!」

ED
=========
『誰』
「くそ…小規模とは言え、絶え間なく湧いて出られると負担が大きい」
(俺とした事が焦ったか…。隔壁内はBETAの脅威が低いと高をくくっていた)
(この状態では、第二隔壁を手負いのファング中隊だけで守るのは不可能だ)

篁唯依
「――『誰』大尉、隔壁は間もなく戦術機が通れる程度に開放されます、お戻りを!」

『誰』
「――了解!」


「………」

『誰』
「篁中尉、俺が隔壁を抜けたら、一度第一隔壁に戻れ!崔中尉達と合流するんだ」

篁唯依
「え…そんな事をしたら第二隔壁は閉まってしまいます。大尉が中に閉じ込められますよ!」

『誰』
「その方が安全だ。帰る時にまた開けてくれればいい」

篁唯依
「中の様子も不明、退路も断たれるなど危険極まりありません!隔壁を開放するには時間がかかる――」

『誰』
「だが第二隔壁にもBETAは押し寄せてくる。中尉だけでは抑えきれない!」
「俺が任務を達成した時、中尉が全滅していたら、誰が第二隔壁を開けてくれるんだ?」
「――隔壁と中尉の機体が見えた!俺はこのまま突っ込む。議論の時間は終わりだ!」

篁唯依
「く…確かに仰る通りです。わかりました。大尉が隔壁を抜け次第、第一隔壁まで後退――」

『誰』
「――なにぃっっ!?隔壁が閉まり始めている!!篁中尉!!!」

篁唯依
「大尉!緊急回避を!そのままでは激突します!」

『誰』
「な、何が起きた!?」

篁唯依
「開閉剤注入中の機体が――背負っていたドロップタンクごと撃破されましたっ!」

『誰』
「な、何だって!?どこから――何だ、あの足元でうごめいているものはっ!?」

篁唯依
「超巨大なBETAです!な、中から…無数のBETAが!!」

『誰』
「か、隔壁は――」

篁唯依
「無理ですっ!もう…………通れません!!」

『誰』
「そんな…………何て…何て事だッッッ!!!」



091 - 中国・オリジナルハイヴ隔壁2

OP
========
篁唯依
「超巨大BETAから吐き出される無数のBETA群、留まるところを知りません!」

『誰』
「く…第一隔壁まで後退し、一端隔壁を閉じて――」

篁唯依
「し、しかしそれでは、時間稼ぎはできても先に進む希望はほぼ断たれてしまうのでは…」

『誰』
「だが、第二隔壁を破壊するだけの時間も手段もない。ここに留まっても死を待つだけだ」
「まだ作戦が失敗したと決まった訳じゃない。生きていれば道は開ける!」

篁唯依
「わかりました…。第一隔壁まで撤退します…」

『誰』
「いいか、それも決して楽な事じゃないぞ!無駄な戦闘は極力避けて進むんだ!」

篁唯依
「――了解!」

ED
========
崔亦菲
「――あんた!それに大尉も!?新種のBETAが出たっていうのは本当なんですか!?」

『誰』
「本当だ!今すぐ第一隔壁を閉鎖しろ!」

リリア
「でも、一度閉じたらもう開けられません!開閉剤にそんな余裕はないんです!」

『誰』
「それでもやってくれ!今を乗り切る事が優先だ!別の策は必ず見つかる!――急げ!」

崔亦菲
「りょ、了解!なんなのよ…ここまで来たっていうのにッッ!!」

リリア
「崔中尉、急いでッ!隔壁の向こう、すぐそこまで第一波が迫ってる!」

崔亦菲
「もうやってるってば!」



092 - 中国・オリジナルハイヴ主広間2

OP
==========
リリア
「第一隔壁を閉じたのはいいけど、もう開ける事は出来ないし、後ろからBETAも迫ってる…」

崔亦菲
「開閉剤残量5%を切りました!じきにコントロール不能になって開かれてしまいます」

『誰』
「…そうすれば閉じ込めた新種と大量のBETAが一気に現れ、挟み撃ちか…」

リリア
「そうでなくても、奴らはハイヴの地中を通ってこっちに抜けて来そうですけどね…」

崔亦菲
「私達にも地中を掘る能力があればこんなふうに足止めを喰らわずに済むんだけどね」

『誰』
「地中を掘る能力、か…。何か引っかかるな…」

崔亦菲
「あ、いえすみません!別に嫌味を言おうとした訳じゃ――」

『誰』
「いや、そういう事じゃなく――」

リリア
「『誰』大尉!後方からBETA群接近!」

『誰』
「了解、とにかく迎撃する。暴風中隊以外は俺に続け!」

ED
==========
崔亦菲
「開閉剤残量1%!『誰』大尉!このままじゃ本当にヤバイですよっ!!」

『誰』
「く…やむを得ない。暴風中隊はドロップタンクを放棄、一端後退する!別ルートを探るんだ」

崔亦菲
「別ルートったって…」

『誰』
「地中は掘れなくても、BETAの通った穴を通って直上か直下の座標には到達出来るかもしれん」
「そこでS-11を使えば、崩落が起きて――楽観的だが何もせず黙っているよりはマシ…ん!?」

崔亦菲
「な、なに?このマップは?S-11?退避勧告!?」


「――全機聞こえるか!今からS-11を使う!そのエリアから即時退去せよ!猶予は20秒!」

『誰』
「こ、この声は…全機退避だ!急げッ!天井が大崩落するぞ!!隔壁の陰に隠れろ!!」

『誰』
「うおおおおおっっっ!!」

崔亦菲
「て、天井に…巨大な穴が…」

神宮司少佐
「『誰』大尉無事か!遅くなってすまない!」

『誰』
「神宮司少佐ッ!!ご無事だったんですねっ!!」

神宮司少佐
「そちらこそ。ここに至りこれ程の数が健在とは…大尉の統率力には感服した。さあ、共に戦おう!」



093 - 中国・H-01B主広間

OP
==========
『誰』
「え…『上』の第一隔壁…?」

神宮司少佐
「そうだ。ここはオリジナルハイヴがまるまる2つ、縦に重なっているのは理解しているか?」

『誰』
「はい、主縦坑が深すぎる事からそれに気付きました」

神宮司少佐
「ふむ。では上のハイヴをA、下をBとすると、2つは単純に連なっている訳でないというのは?」

『誰』
「いえ、そこまでは」

神宮司少佐
「ハイヴBはやや傾き、また回転している。その結果ハイヴAの最深部とこの場所がかなり接近した」

『誰』
「確かに…深度だけなら俺達はかなり上に戻っている…」

神宮司少佐
「この事は、ハイヴAのあ号標的ブロックから、ハイヴBの同地点に到達可能な事を示唆している」

『誰』
「――そうか!ハイヴAは桜花作戦で攻略済みだ。あ号標的ブロックに入ることができる!」

神宮司少佐
「ついて来い。天井の縦坑を通って上に抜けるぞ。ちなみにこれは新種の巨大BETAの通った跡だ」
「桜花作戦当時、第一隔壁前に『地下』から出現したという記録が残されている」

『誰』
「そいつなら隔壁の向こうにいますよ!成程、それはおあつらえ向きのショートカットですね!」

神宮司少佐
「だが油断するな。相当数のBETAが巣くっているからな」

『誰』
「了解!!」

ED
==========
『誰』
「よし、抜けたぞッ!!『上』の第一隔壁前だ!」

篁唯依
「ここが…桜花作戦で実際に戦闘が繰り広げられた第一隔壁前…。胸を打つものがあります…」

アイヒベルガー少佐
「ツェルベルス1より『誰』大尉。久しぶりだな。また生きて会えるとは光栄だ」

『誰』
「ア、アイヒベルガー少佐!という事は…ここには…」

アイヒベルガー少佐
「そうだ。ツェルベルス大隊も集結している」
「ご苦労だった。これより先は共に戦おう。人類の勝利を掴み取れ」

『誰』
「はっ!!追いかけてきてくれたのか。これは心強い!」

篁唯依
「人類の底力を、今一度BETA共に見せつけてやりたいものです!」

『誰』
「ああ!!存分になっ!!」



094 - 中国・H-01A主広間

OP
==========
ファーレンホルスト中尉
「第一隔壁は既に破壊済み、現在第二隔壁の破壊準備をしています」

『誰』
「その先にあるあ号標的ブロックから、『下』のあ号標的ブロックに向かおうって事ですね?」

ファーレンホルスト中尉
「そうです。しかし言う程簡単な事ではありません。隔壁の固さが想定以上なのです」
「世界融合の影響で、隔壁を保護するかのように内壁が覆っている等の障害にも見舞われています」
「その為、第一隔壁の破壊に、相当数のS-11を使用してしまいました」
「これは第二隔壁にも当てはまるでしょう。一方で、迂闊に爆破すれば横坑崩落の危険があります」
「慎重にならざるを得ない状況が続いており、なかなか目処が立ちません…」

『誰』
「崩落か…。融合したハイヴには、確かにその危険性があるからな。だが時間がかかるという事は…」

イルフリーデ
「――偽装横坑よりBETA出現!こ、この数…」

『誰』
「――むっ!?こっちにも…。第二隔壁方面からBETAが近づいて来ている!」

ファーレンホルスト中尉
「こちらは我々だけで対処可能です!貴隊には第一隔壁へと近づくBETAの対処をお願いします」

『誰』
「了解ッ!全機、BETAを迎え撃つ!突っ込むぞ、付いて来い!!」

ED
==========
ファーレンホルスト中尉
「全機、第一隔壁の外まで後退!これよりS-11を起爆します」

『誰』
「全機、物陰に隠れろ!BETAの死骸もシェルター代わりになる。崩落にはくれぐれも用心しろ!」


ズンッ!!!!!

『誰』
「…隔壁はどうなった!?崩落はしていないか!?」

ルナテレジア
「粉塵晴れます!…内壁が一部崩壊しましたが致命的ではありません。第二隔壁は――」
「第二隔壁は健在!駄目です、破壊失敗ですわっ!」

ファーレンホルスト中尉
「至急原因を調査してください。隔壁の構造再計算と横坑の強度計算も急ぐのです」

ルナテレジア
「中尉…横坑中央部に極端に強度の弱い箇所が…。次の爆発には耐えられませんわ」

『誰』
「…確かに。これが崩れたら、退路が断たれるとかいうレベルの話じゃ済まないな…完全に生き埋めだ」

ファーレンホルスト中尉
「…わかりました。ですが隔壁の構造再計算は続けます。何か手がある筈です」

『誰』
「………………」



095 - 中国・H-01A隔壁

OP
========
神宮司少佐
「残念だが、これ以上のS-11の使用は不可能だった。別の方法を模索する他ない」

『誰』
「くそ…ここまで来て。だが、必ず方法がある筈だ。A-01中隊はこの中に入ったんだろ!?」

神宮司少佐
「…入った後に閉じられた可能性もあるがな。凄乃皇がくぐれる程の大穴は付近に見当たらない」

篁唯依
「第一隔壁と違い、ここの脳は破壊されていません。その可能性も考えられますね…」

『誰』
「だとしても諦めるな。何か手はある筈だ…」

神宮司少佐
「『誰』大尉、後方から再びBETAが迫っている。対応にあたってくれ!」

『誰』
「了解!篁中尉、ここは俺が行く。中尉は引き続き方策を考えてくれ。頼んだぞ!」

篁唯依
「了解!」

ED
========
篁唯依
「――『誰』大尉!先に進む方法が見つかりました!」
「第二隔壁の周辺に、以前に崩落した壁が発見されました。恐らく桜花作戦の時のものかと」

『誰』
「そうか!それは朗報だが…何故今までわからなかったんだ?」

篁唯依
「世界融合の影響です。内壁が多層化していた為に最初の計算で判明しなかったんです」

『誰』
「成程。で、そこは通れるのか?もうS-11は使えないんだぞ?」

篁唯依
「現在、残骸の除去作業中です。S-11は使わずとも、何とかなりそうです」

『誰』
「そうか…。A-01部隊の足跡…有難く利用させてもらおう。もう少しだ…」



096 - 中国・H-01Aあ号標的ブロック

OP
========
『誰』
「ここが…あ号標的ブロック…。凄乃皇の自爆の影響か、もうボロボロといった感じだな」

神宮司少佐
「天井に大きな穴が…。そうか、あそこから脱出艇が…」

龍浪響
「少佐、A-01部隊の戦いを…桜花作戦の成功を無にする訳にはいきませんよ、絶対に!」

神宮司少佐
「当然だ。全機、床面の構造分析を急げ!BETA共はまたすぐに湧いて出てくるぞ!」

龍浪響
「少佐、残念ながら既に湧いてますよ。現在ツェルベルス大隊の一部が交戦中です!」

『誰』
「よし、俺達が援護に向かう」

龍浪響
「いえ、ここは自分達が!いつも『誰』大尉達に任せていては、大尉達が保ちませんよ!」

『誰』
「余計な気遣いは無用だ。それにそう思うなら一刻も早く下への道を見つけてくれ」

龍浪響
「り、了解!それじゃお任せします!よろしくお願いします!」

『誰』
「ああ、任された。全機行くぞッ!」

ED
========
千堂柚香
「『誰』大尉!そのまま一端部屋の外に出てください!床面をS-11で爆破します!」

『誰』
「脆い部分を見つけたんだな!?よし、全機退避だ!」


ズンッ!!!!!

『誰』
「……どうだ?」

千堂柚香
「計算上は、あと2発ほどS-11を使えば、『下』の天井に穴が開きます」

神宮司少佐
「『誰』大尉、『下』への道が開いたら、ツェルベルス大隊と共に降りてくれ」
「状況が判明し次第こちらも動く。作戦は、あ号標的をS-11で爆破するというものだが――」
「相当数の犠牲と想定以上のS-11を消費したツェルベルス大隊はその任務を果たせない」

『誰』
「そうか…犠牲が大きければ、それだけ手持ちのS-11は少なくなる。その上使い過ぎれば…」

神宮司少佐
「我々の部隊がそれを担当する。その為の下地作りを頼みたい。…できるな?」

『誰』
「勿論ですよ!必ずあ号標的を破壊してやりましょう!」

千堂柚香
「S-11設置完了!全機退避してください」


ズンッ!!!!!

『誰』
「あと1発…。アイヒベルガー少佐の号令があり次第、突入するぞ!」



097 - 中国・H-01Bあ号標的ブロック1

OP
=========
ズンッ!!!!!

アイヒベルガー少佐
「全機突入!」

『誰』
「行くぞッッ!!」


「………」


「――――――」

ララーシュタイン大尉
「ぬぅ!?下部あ号標的ブロック内に大量のBETAが確認できるのである!心せよッ!!」

アイヒベルガー少佐
「案ずるな。いつもの如くやれ。そしていつもの如く帰還せよ。世界と人類に尽くせ」

ララーシュタイン大尉
「元より!諸卿、屠殺の時間である!吾輩に続けッ!」
「『誰』大尉、あ号標的の触手は我等が引き受けた!卿らはBETAの殲滅を!」

『誰』
「――了解!徹底的に片付けろ!神宮司少佐達を一刻も早く呼び込むんだ!」

ED
=========
『誰』
「あれが…あ号標的…!!こ、こいつが…こいつが人類を!こいつが地球をっ!!」
「てめぇッッ!!!いい加減に俺達の前から消え失せろぉぉぉ!!!」

神宮司少佐
「S-11の設置を開始する!全機かかれ!」


「――了解!」

篁唯依
「ファング中隊残弾15%を切りました!少佐の援護に回りつつ予備弾薬を譲り受けます」

神宮司少佐
「――了解!急ぎ合流しろ!融通してやる!」

篁唯依
「ありがとうございます!!」

『誰』
「帝国機は87式突撃砲だからマガジンが流用できる…。助かった…」


「――うわあぁぁぁっっ!!」


「――くそぉぉぉぉぉっっ!!」


「――後は…頼んだぞッッ!!」


「――人類に勝利をぉぉぉッッ!」

『誰』
「くそぉっ!BETAめ!負けない…俺達は――絶対に負けないッッ!!」

神宮司少佐
「S-11設置完了までもう少しだ!各機、もう少し…もう少しだけ頑張ってくれ!」

『誰』
「命に替えても必ずッ!!」



098 - 中国・H-01Bあ号標的ブロック2

OP
=========
『誰』
「BETAの数が一向に減らない!あの大口を開けている第二隔壁をどうにかしなければ!!」

崔亦菲
「その向こうにいる新種のBETA――奴がガンなんです!あれさえどうにかできれば…」

『誰』
「だが、あそこまで突っ切るだけの余力はない!天井を通って後ろに回り込むにも厳し過ぎる!」

崔亦菲
「でもこのままじゃじり貧です!私が何とか前に出て――」

???
「全員隔壁の入り口から離れろ!爆発するぞッ!!」

崔亦菲
「――ッ!?な、何ッ!?前方から所属不明機接近!IFFは青、ですが…誰!?」

???
「これよりS-11を爆破する!新種のデカブツはそれで終わりだ!これ以上後続は来ない!」

???
「最後の波を凌ぐんだ!俺達も第二隔壁側からケツを叩く!わかったな!?」

『誰』
「り、了解だが貴官の名前を――」

崔亦菲
「所属不明機引き返します!」


ズンッ!!!!!

『誰』
「よし!BETAを殲滅しながら前進!第二隔壁まで進む!」
「誰かは知らないが、『下』のルートを突き進んで来た強者達だ。顔を拝んでやろうじゃないか!」

崔亦菲
「――了解!!」

ED
=========

「ユウヤ、たのしいね。ユウヤがいてクリスカがいて、わたしもいっぱいいる」


「クリスカ、たのしいね。だいすきなみんなでたたかうのはすき」

クリスカ
「そうだね、私も楽しいよ。だからあと少し頑張ろうね、イーニァ」

ユウヤ
「…しかし、気がついてみれば突然こんな世界に放り出されて、未だによく訳がわからねえ…」
「だがどんな世界だろうがオレは…クリスカが好きだった世界を、絶対に護ると決めたんだ!」

クリスカ
「…私だと?出会った時から意味不明な事を言っていたが…。この期に及んでも相変わらずだな――」
「――ユウヤ・ブリッジス。ふん…………不思議な男だ」

ユウヤ
「何も知らなくていい。そしてこの戦いが再びオレとおまえを分かつものだったとしても――」
「混じり合った世界が元に戻ってしまうものだとしても…それが世界の未来の為ならオレはやるぜ!」


「中隊全機!残りのBETAを片付ける!奴らはあ号標的を護る事に夢中だ」


「一目散に走り寄る奴らのケツに、ありったけの弾を撃ち込んでやれ!1匹たりとも逃がすな!」


「ユウヤ、さっきのひとがちかづいてくるよ。すごいね、ユウヤとおなじぐらいつよいのかな?」

ユウヤ
「そうかもな。よし、こっちからも挨拶に出向いてやろうぜ。BETAを蹴散らすぞ!」

クリスカ
「イーニァ、向こうから来る味方と一緒にBETAを挟撃するよ。みんなの逃げ道を作りましょう」


「間もなく、あ号標的へのS-11設置が終わる。急げ!脱出ルートを確保するんだ!――行けッ!」

一同
「「「――了解!」」」



099 - 中国・H-01Bあ号標的ブロック3

OP
=========
神宮司少佐
「S-11設置完了!全機速やかに第二隔壁まで退避せよ!」
「所属不明の味方部隊に告ぐ!最後列のBETAの動きを止め、転進を防いでくれ!」
「我々は最前列のBETAを行動不能にし、あ号標的への接近を食い止める!」
「そうやってBETAを八方塞がりにしてこのブロックに止め、S-11でもろとも爆破する!」

『誰』
「了解!少佐は先に!ここは我々にお任せください!」

神宮司少佐
「了解した!」

篁唯依
「殿は我々ファング中隊にお任せ下さい!限界までS-11を守り、タイマーを起動して撤退します」

神宮司少佐
「180秒後にタイマーを起動!起動後300秒で爆発するぞ!2人ともわかったな!?」

一同
「「――了解!」」

『誰』
「いいか、全機、突撃級の足元を狙え!そうすれば後続が勝手に追突してくれる!」

ED
=========
篁唯依
「タイマー起動まであと30秒!」

『誰』
「了解、ファング中隊がここまで到達したら、共に退避する。もう少しだ、油断はするな!」

篁唯依
「タイマー起動!ファング中隊全機、第二隔壁まで全速後退!!」

『誰』
「よし!暴風中隊も後退開始!以後順次後退だ!」

崔亦菲
「了解!もう少しで…もう少しでこの戦いも終わるのね…」

『誰』
「そういう事だ!やっと終わりが見えてきたな!だが、ハイヴを抜けるまで油断はできないぞ」

崔亦菲
「わかってますよ!そんな新兵みたいな楽観はしませんけど!少しぐらい喜んだって…」

『誰』
「水を差して悪かったな。――ファング中隊上空通過!俺達も続くぞ!」



100 - 中国・H-01Bあ号標的ブロック4

OP
=========
神宮司少佐
「――待て!妙だぞ…」

『誰』
「少佐、どうしたんですか!?」

神宮司少佐
「妙だ…有線で遠隔制御された起動タイマーの動きが止まった…。まさかBETAが破壊した…?」

『誰』
「え…起爆タイマーだけを狙って破壊するなんて…BETAがそんな高度な真似を…?」

神宮司少佐
「いやあり得る。そう考えれば、横浜基地防衛戦で、速瀬がS-11を抱えて自爆した理由も分かる」

『誰』
「そうか…リモートで爆破すればよかったのにしなかったのは…できなかったからなのか!?」

神宮司少佐
「何という事だ…。ここには、私を含め当時の詳細を知る者がいない。それが仇になったか!」
「せめてその可能性を僅かでも疑っていれば、香月司令に問い質す事もできたのにっっ!!」

『誰』
「世界の融合によって人類は、一度死んだ衛士を始め、多くの精鋭を得ることが出来たが――」
「最後の最後でこんな盲点があったとは――!!」

篁唯依
「わ、私が戻ります!周囲のBETAを完全に殲滅しなかった私の責任です!」

『誰』
「そんな訳があるか!戻るなんて死にに行くのと同じだ」

篁唯依
「装置を手動で作動させ、すぐに天井の穴に退避すれば…」

『誰』
「冷静になれ!無理に決まっているだろう!こんな時に夢みたいな事を言うなッ!!」

篁唯依
「お言葉ですが!我々は夢の実現の為に死力を尽くして来たのです!結果を追い続けて来たのです!」
「人類の未来を掴むという途方もない夢…それがもうすぐ叶う…。その為ならばこの身など――」
「………………」
「あっ!『誰』大尉!!」

神宮司少佐
「何をする気だ!戻れ『誰』大尉!!部隊員達も何故後に続くッ!?」

『誰』
「篁中尉の言葉はその通りだ!だがそうだとしたら、これはオレの仕事です!」
「部下にまで強制する気はなかったが…ついて来た以上はひと頑張りキッチリ働いてもらうぞ!!」

ED
=========
『誰』
「…やはり起爆タイマーだけが綺麗に破壊されている。BETAがやったんだな」
「部隊員に告ぐ。これよりオレが手動で起爆装置を起動させる。全機、天井に退避しながら聞け」
「猶予は30秒!それ以上は待たない。急げッ!!」
「オレは起爆装置起動後、全速力で穴に突っ込む。衝突しないように空けておけよ!」

一同
「「――了解!」」

『誰』
(24、25、26――一瞬の勝負だ…………)
「――なにィッ!?」
「ぐあああああっっっ!!」

篁唯依
「『誰』大尉!?一体何が――」

『誰』
「………………跳躍ユニットを破壊された…」

篁唯依
「「「な――」」」
「今そちらに――」

『誰』
「来るな!少し遅れたが、起爆装置はこのまま起動する。巻き込まれるぞ!」

篁唯依
「そんな…………」

『誰』
「篁中尉…。オレは、後悔などしていない。人類をこの状況から救い出す事がオレの使命だ」
「これまで幾度となく死の危険にさらされながらも生き延びてきた。そしてここまで辿り着いた」
「これほど重要な仕事を全うさせてもらえた事に、むしろ感謝しているぐらいだ」
「この先は…中尉、君が引き継いでくれ。夢が現実になったかどうか、君の目で確かめて欲しい」

篁唯依
「『誰』大尉……」

『誰』
「…全員に最期の挨拶をしたいところだが、時間が許さない。残念――いや」
「君に言葉を伝える時間を貰えただけで幸せなんだな。それじゃ、今まで世話になった」

篁唯依
「『誰』大尉ッッ!!」

『誰』
「人類を…世界を――よろしく頼むッ!!」

篁唯依
「『誰』大尉ぃぃぃぃ!!」


ズンッ!!!!!



101エンディング パートA
========
篁唯依
「…あ号標的ブロック内の崩落と粉塵が収まります…」
「あ号標的の破壊を確認。オリジナルハイヴは……陥落しました」
「生命反応…ゼロ。残念ながら『誰』大尉は…」
――ドクン!

崔亦菲
「い、今、何か変な感じが…。あんたも感じた?篁中尉」

篁唯依
「うん…感じた。世界が…分離したのだろう」

崔亦菲
「だ…だよね!?世界をジャンプする時の感覚だったもんね!!じゃあ…作戦は…大尉は…」

篁唯依
「ああ…『誰』大尉は、任務を成し遂げた。その命を賭して――夢を叶えたんだ」



101エンディング パートB
========
香月夕呼
「…そう、わかったわ。報告ありがとう」

神宮司まりも
「さ、作戦はどうなったの!?」

香月夕呼
「………………」

神宮司まりも
「そ、その顔…まさか――」

香月夕呼
「……成功よ」

神宮司まりも
「ホントッ!?やったわ!!もう、そうやって驚かすのは趣味が悪いわよ!!」

香月夕呼
「…………ごめんね~。私性格悪いから~。ほら、すぐに全世界に向けて通達して!」

神宮司まりも
「了解!!これで…これで人類は救われるのね~!」

香月夕呼
「…そんな単純な話じゃないんだけど」

神宮司まりも
「え?何か言った?」

香月夕呼
「いえ、何でもないわ」
「…それでも、少なくとも。人類絶滅確定のシナリオは回避できたわ」
「ありがとう…『誰』。こき使って悪かったわね。ゆっくり休んで頂戴」



101エンディング パートC
========
『誰』
「――ハッ!!」
「………………」


「次は京都、京都――」

『誰』
「オレは一体…。今までのは…夢だったのか?」
「くそ、スマホで遊んでいるうちにいつの間にか眠っちゃったんだな。…よく落とさなかったもんだ」
「それにしても、途方もない夢だったな…オレが――オレが――あれ?」
「オレが…何だったっけ?くそ、すっかり忘れちまったよ」
「まあいいや、夢なんてそんなもんさ」
………
「さて…ちょっと早く来すぎたかな?」


――ドン!

『誰』
「あ、すみません」

女性
「いえ、こちらこそ」

『誰』
(…うわ、かなりの美人だな。でもどこかで会った事があるような…)

女性
「あの、何か?」

『誰』
「あ、いえ。何でもないです」
(気のせいだな…)

女性
「そうですか。では…失礼します」



The END
引用網址:https://home.gamer.com.tw/TrackBack.php?sn=3769906
All rights reserved. 版權所有,保留一切權利

相關創作

留言共 0 篇留言

我要留言提醒:您尚未登入,請先登入再留言

喜歡★s793016 可決定是否刪除您的留言,請勿發表違反站規文字。

前一篇:Muv Luv Alte... 後一篇:SKULL CANDY ...

追蹤私訊切換新版閱覽

作品資料夾

pjfl20180818自己
一律找保全工作,對吧?看更多我要大聲說16小時前


face基於日前微軟官方表示 Internet Explorer 不再支援新的網路標準,可能無法使用新的應用程式來呈現網站內容,在瀏覽器支援度及網站安全性的雙重考量下,為了讓巴友們有更好的使用體驗,巴哈姆特即將於 2019年9月2日 停止支援 Internet Explorer 瀏覽器的頁面呈現和功能。
屆時建議您使用下述瀏覽器來瀏覽巴哈姆特:
。Google Chrome(推薦)
。Mozilla Firefox
。Microsoft Edge(Windows10以上的作業系統版本才可使用)

face我們了解您不想看到廣告的心情⋯ 若您願意支持巴哈姆特永續經營,請將 gamer.com.tw 加入廣告阻擋工具的白名單中,謝謝 !【教學】