安潔莉卡・巴伊魯
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「ずっと、ずっとお待ちしていました…」
「一直一直等待著…」 |
――それは、遥か昔の淡くおぼろげな記憶。
那是，遙遠過去已經淡薄的記憶
さる王家の一人娘として育てられた、幼き日のアンジェリカ。
心優しき両親の愛、あらゆる面倒を見てくれる侍女、華やかな宮廷、誇り高き王国騎士団。
恵まれた環境の中で、彼女は健やかな日々を送っていた。
做為王家獨生女成長的，幼年的安潔莉卡
有著善良雙親的愛，被所有侍女照料著，華麗的宮廷，誇耀高貴的王國騎士團。
在如此優惠的環境下，她健康的成長著。
春。
その日七歳を迎えたアンジェリカは、遊宴に訪れた「鋼」の少年と出会う。
春天。
那一天迎接七歲到來的安潔莉卡遇到了遊宴訪問的「鋼」之少年。
席を抜け出し彼と共に訪れたのは、王国全土を見渡せる高い丘。
強引で、身勝手で、粗暴な振る舞いを見せる少年は、彼女に「鋼」の魔法への憧憬を嬉々として語る。
偷偷溜出宴會與他一起去可以看到王國全境的高山
顯露強行、任意、粗暴的舉止的少年，向她高興的說出對「鋼」之魔法的憧憬。
夢中で聞き入るアンジェリカ。
冬の名残と春の香りが混じる大気の中で、彼女は高鳴る鼓動を感じていた。
聽到入迷的安潔莉卡
在冬天的依依不捨與春天的香氣混合的大氣中，她感到了高鳴的鼓動。
七歳の、誕生日。
同時にそれは、彼女が全てを失った悲劇の日。
七歲的生日。
同時那也是，她失去全部的悲劇之日。
二人で過ごした丘の上。
眼下に見える王宮から火の手が上がり、不吉な鐘の音がせわしなく鳴り響く。
在兩人度過的山丘上
眼下可見的王宮正燃起大火，不吉利的鐘聲響動不止
臣下の叛逆。
大切なものが全て奪われ、幸せな日々は一夜にして灰へと変わる。
臣下的背叛。
重要的事物被全部奪走，幸福的日子一夜成灰
王家の血脈を残すため一人生かされ、成人の儀と同時に望まぬ契りを強いられたアンジェリカ。
悲しみの淵の中、彼女が唯一抱く光は、「鋼」の少年と交わした約束。
王家的血脈僅一人殘留，成人的儀式同樣也是絕望的契約強迫著安潔莉卡。
在悲傷的深淵中，她唯一懷抱的光是與「鋼」之少年的約定
彼女にできることはただ一つ、信じて、待ち続けることだけ。
她能做的事情只有一個，相信並持續等待著
夢見る少女に、至福の奇跡を――
做夢的少女，致福的奇蹟
――――――――――――――――――――――――――
遠くから、祝福の号砲が鳴り響く。
どこの誰とも知れぬ二人が、誓いの式を挙げている。
從遠方傳來祝福的禮砲聲
在那裡誰也不知道的兩個人，立下了誓言
細やかな粉雪の舞う、ある冬の日。
出会いの丘で、彼女は来るはずのない人を待っていた。
細雪紛飛的冬之日
相見的山丘上，她等待著無法到來的人。
＊ ＊ ＊
……あの日から。
……那個日子之後
愛する人を正しき運命へと送り還してから、どれほどの時が過ぎただろう。
深い悲しみは癒えることなく、涙はいつまでも胸を濡らし、祈りは虚しく空へと消えた。
將所愛的人送到了正確的命運上，已經過了好長時間了吧
深刻的悲傷無法痊癒，眼淚一直沾滿了胸膛，對著消失虛無的天空祈求著
――時は巡る。
－－時間巡迴
「鋼心王」を継いだ愛娘は平穏な日々を人々にもたらし、惜しまれつつ世を去った。
鋼の心は世代を超えて受け継がれ……それも終焉の時を迎え、国は滅び、また別の王が玉座に就いた。
繼承「鋼心王」的愛女帶給人們平穩的日子後，便令人惋惜的去世了(應該是指鋼心王)
鋼之心超越了世代繼承著……與此同時在另個王的王座上迎來了終末之時國家滅亡
過ぎゆく日々、移ろう季節。
やがて、「ヒト」なる存在すら地上から姿を消した。
經過的日子，變移的季節
不久「人類」的存在便在地上消失無影
冷たき闇の時代を経て、再び光射した世界に命が芽吹くと、また新たな「ヒト」が現れた。
神秘の誕生、暖かな命の営み、弱き者が死に強き者が生き残る自然の理、繰り返される歴史。
寒冷黑暗的時代經過，再次在光耀的世界上發芽了生命，又有新的「人類」出現了
神命的誕生，溫暖生命的活動，弱肉強食的自然之理，重複的歷史
幾億の時の果て、天は彼女に赦しを与える。
焼かれた翼は輝きを取り戻し、神々は天への帰還を命じたが――彼女は地に生きることを望んだ。
幾億的時間的盡頭，天對她給予了赦免
燒毀的翅膀取回了光輝，神命她回歸天上――但她希望在地面上生活著
数多の生命が大地に芽吹き、己が運命を全うするのを、彼女はただただ、見届け続けた。
無數的生命在大地生長著，自己的命運已經達成，她只能一直看著
＊ ＊ ＊
眼下の街道を、幸せそうな二人と式の参列者たちが賑やかに歩いている。
岩肌の大地に、葉の落ちた木々に、うっすらと雪が積もる。
少しずつ、少しずつ、景色が白く変わっていく。
眼下的街道，幸福的兩個人與參加者熱鬧的走著
岩石的大地，落葉的數目，細雪薄積
一點點一點點的將景色改變成了白色
参列者たちが遠くへと消えると、あたりは静寂に包まれる。
參加者們消失在遠方，周圍被寂靜包圍著
天を見上げ、目を閉じる。
仰望天空，閉上眼睛
「鋼」の少年との約束を信じ、数億の時を生きてきた。
ありえないとわかっていても、共鳴する魂が惹かれあう奇蹟を、ただ、願った。
「鋼」之少年相信的約定，是數億年之前就有著
雖說有沒有也不知道共鳴的靈魂吸引的奇蹟，只是希望著。
――いつか、どこかで聞いた詩。
リュートを鳴らし、詩人が謳う。
――不知何時，從哪聽的的詩歌
夢見る少女に、至福の奇跡を。
決意の剣刃に、寛大な裁きを。
做夢的少女，至福的奇蹟
決意的劍刃，寬大的裁決
……もう一節が、記憶からすっぽりと抜け落ちている。
……還有一段，從記憶之中脫落了
＊ ＊ ＊
どれほど、そうしていただろう。
胸打つ気配を背後に感じ、ふと、アンジェリカは目を開ける。
有多久之前就這樣了吧
心中傳來背後的氣息，突然，安潔莉卡張開了眼睛
振り返る間も与えずに、背後の気配が彼女の冷たい体を胸に抱く。
一面は雪に包まれ、全ては純白に飾られている。
連回頭的時間都不給，背後的氣息抱住她冰冷的身體
一面被雪包覆著，全是純白裝飾著
ああ、そうだわ、とアンジェリカは思い出す。
詩人の謳う最後の一節――一途な想いに、真実の抱擁を。
阿阿，是這樣阿，安潔莉卡想起來了
詩人的歌最後的一段――專一的感情，真實的擁抱。
男は彼女を腕に抱き、古の時代と何ら変わらぬぶっきらぼうな口調で、ただ、一言。
それは時を超え、アンジェリカ・ヴァイルをあらゆる悲しみから解き放つ福音の声。
男人將她用手腕抱著，經過古老的時代也絲毫不變的口調，只是一句話
那是穿越了時間，將安潔莉卡・巴伊魯脫離全部的悲傷的解放的福音之聲
――またせたな。
――讓你久等了。
搬移中
創作內容
安潔莉卡 約束之地
黑貓角色故事 (0)
